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1.異世界は突然に
ドンドンドン
家のドアを強く叩く音がする。
う~ん、うるさいなぁ。こんな朝早くから起こさないでよぉ。
「ふわぁあ。はぁ~い、どちら様ぁ?」
「なんだこの奇妙な箱は」
「人が出て来たし、家なんじゃねぇの」
「うわっ、ちっせぇ。しかも耳とか生えてないぞ」
「ばか、あれはニンゲンっつー、異世界人だ。学校で習ったろ」
「いや、だってよ?何百年に1人なんだろ?んなもん、忘れちまうよ」
「なぁなぁ、よく見ると可愛くないか?」
「あぁ、しかもいい匂いするぜ」
うわっ、なんだか人がいっぱいいる。
「おい、お前ら。いい加減口を慎め」
一際豪華な服を着た大きい人が、後ろにいた人を睨みつけて一喝する。
「「「「はい!申し訳ありません!」」」」
あ、この人がボスだ。
ボスの人が僕を見下ろして言う。
「ライル侯爵領当主のクロードだ。今朝見回りをしていたら我が屋敷の敷地内に家を見つけてな。こうして訪ねた次第だ。異世界人が渡って来る際、何か物を持ってくることが多いと聞いたが…こんなに大きいとは。この大きな箱は君の家で間違いはないか?」
その丁寧な物言いにびっくりした。
だって、こんな後ろに大勢の人——なのかな、明らかに動物の耳と尻尾が生えてるけど——を従えてたら犯罪者の家宅捜索よろしく僕を捕まえて、「中を見せてもらおうか」なんて言って土足でズンズン入ってくるんじゃないかって思ったんだもの。
もちろん、悪いことなんてするわけがないけど。清く正しく、心のままに生きなさいっておばあちゃんがよく言ってた。
「ら、らいる侯爵領?くろーど、さん?え、えと、僕の家で間違いないですけど…。よく分かりませんが立ち話もなんですし、とりあえず中でお話ししませんか?」
多勢に無勢では逃げられない、どうせ捕まるのなら大人しくしておこう。
それに、本当のことなら人様の土地に居座っちゃってるんだよね……?僕。
いやいや、頭ではわかってるよ。家も家が立ってる土地もおばあちゃんから譲り受けて、今は僕の所有物だってことは。
でも、目の前の人たちの服装や耳と尻尾は、僕の知る世界にはない物ばかり。
嘘ついてるのか見極めるにはこの人を知らなすぎる。だから、判断がつかない今は——。
「上がってもいいのか?異世界人は優しいんだな。お前らはそこで待機しておけ。それでは失礼する」
「「「「えーーー、隊長だけずるいー」」」」
後ろの隊員さん?からヤジが飛ぶ。
それを無視して隊長さんはずんずん進む。
「どうぞ。お上がりください。狭いですけど…。あ、靴はそこで脱いでくださいね」
「ほぉう、靴は脱ぐのか。異世界人にとって家とは腰を落ち着かせる場所なんだな。中は自然の匂いがしていて落ち着くな」
「木造家屋ですから。おばあちゃんから引き継いで、今は僕一人で住んでます」
「少年一人で?危なくないのか?」
「いえ、この家は防犯対策は意外としっかりしてますし、今まで何も起きなかったので大丈夫です。あ、こちらが居間です。座布団持って来ますのでちょっと待っててくださいね」
「あ、あぁ、悪いな」
そう言って別の部屋の押し入れからお客様用の座布団を引き出す。
ちょっと埃っぽいかもだけど、綺麗だから大丈夫だよね。
あ、お茶お出ししなくちゃ。
台所に行き、お茶っぱとお湯を用意して急須に注ぐ。
ものすごく今更だけど、僕、パジャマのままだ。後で着替えよう。どうせもう見られちゃってるし。隊長さんを待たせるのは良くないよね。
それにしても、隊長さんお顔がすごく整ってて、男らしくて、それに獣の耳が生えてた。あと尻尾も。漫画とかでよく出てくる獣人ってやつなのかな。
これって、もしかしなくても異世界ってところじゃないのかなぁ。僕、異世界転生しちゃった?僕のこと、異世界人って言ってたし。
う~ん、これからどうなるんだろう。
まぁ、なるようにしかならないよね。隊長さん、悪い人じゃなさそうだし。言葉通じるし。
おばあちゃんも言ってた。生きていればなんとかなるって。
うん、そうだよね。なんとかなるよ。きっと。
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