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7.弟のクロードさん
王城にある執務室、という場所に連れられてやって来たのはいいけれど、クロードさんのお兄さんらしい国王様がさっきからこっちを凝視してて、はっきり言って怖い。
「ひぇっ……」
瞳孔が開いてるけど、何か怒らせるようなことをしてしまったんじゃないかって体が震えて止まらない。
それに、なんだか鼻息が荒くないですか……?テーブルに乗り上げる勢いでこっちに顔寄せないで!むりむりぃ、すごく怖いっ!うぅっ、なんだか泣けてきた。
「クロードさぁん……僕、おうちに帰りたいよ……」
恥ずかしいからって抵抗したけど奮闘虚しく乗せられた膝の上で良かったと心から思う。安心できる人のそばでしがみつけるのは今の僕にとって救いだ。ぎゅっとクロードさんの逞しい胸板に顔を埋めてしがみつくと、腰に回された腕に力が入って守られてるんだと感じる。
成人男性なのに……とか思わなくもないけど、昔から女子力高くて女子よりも女子っぽい、なんて言われてたからなぁ。もう今更な気がする。うん、気にしない。気にしない。
「よしよし、怖かったな。意外としっかり者のナツキが怯えて俺に自ら抱きつくとか……ハッ!?ここは天国か!」
……国王様の前で何言ってるの、クロードさん。それ、独り言のボリュームじゃないから。がっつり聞こえてるからね。
顔を上げて目を覆っているクロードさんをじっとりと見上げていると、ウォッホン!と態とらしい咳をした国王様が表情をキリリと引き締めた。でも、すぐに眉がへにょりと下がって心配そうに顔を歪めた。ふさふさの耳もぺたりと折れている。
クロードさんのお兄さんなのは顔立ちが似ていて分かるんだけど、オーラというか、その人の纏う空気が違い過ぎて、クロードさんの方が僕の知っている王様に近い。
「えっと、話は聞いているけど……クロードに幼児趣味があったとは驚きだよ。ああ、君のお母さんになんて説明したら……」
「兄貴……変な誤解はやめてくれ。ナツキは確かに小さくて可愛いが、子供という年齢ではない。それよりも、先に渡す物があるだろう」
僕の元いた世界とあまり変わらない兄弟間の近しい距離に、緊張で入っていた方の力が抜けた。それよりも、僕ら3人以外に誰もいないからいいけど、片手を差し出してほれほれとジェスチャーするのはどうなの……?と思わなくもない。
僕がヘマするよりも、クロードさんの態度が咎められる日の方が近そうで、別の意味で怖い。不遜過ぎるよ、クロードさん。
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