男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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※フレイムアーチャにしょっちゅう帝国組が出入りしています。
 今回はサイヒ・アンドュアイス・オグリが来ています。
 フレイムアーチャのあまりにも弱い結界を守護する召喚獣を、サイヒがルーシュに強請られてあまり得意でない召喚魔術を使います。


 フレイムアーチャの森の中。
 暗く重苦しい部屋の中、黒いローブを身に纏ったサイヒは床に描かれた魔方陣へと右手を掲げ、凶器にすらなりそうな分厚い本を片手に呪文を唱える。

「クソッ、今回のは発音が難しいな」

 愚痴を垂れ流しながら蝋燭のせいで熱くなってる気のため、流れだす汗をグイとローブの袖で拭う。
 再び呪文が再開されて、魔方陣が光を放つ。

(やべ、今のトコ発音間違えた)

 とはいってもココまできて1からやり直すには術は完成されすぎていた。

「仕方ない…出でよ緑の蔦と全てを見透す目を持ちし番人」!!

 魔方陣が先ほどとは比べようのないほどの光を発し、その中央へ人外の姿を現す。

「ふぅ、何とか成功……って間違った!つーか逃げたぁぁぁぁぁっ!!」

 どうやら発音を間違えたのが良くなかったらしい。
 本来なら弱い結界の守護を行う召喚獣を呼び出すはずが、明らかに違う形のものが現れ、そしてとてつもない速さでサイヒの前から姿を消した。

 ***

「サイヒ、言ってた子は召還できた~?」

 サイヒの肩に顎を置いて後ろから抱き着いているアンドュアイスが訊ねる。

「いやそれがな、どうも失敗したみたいで別のモン呼んを呼んでしまったのだ」

「サイヒでも失敗するんだねぜ。えーじゃぁルーシュに何て言えばいいかなぁ。最近フレイムアーチャの王都に不法進入する魔獣が増えたから、監視者をしてくれる召喚獣が来るって楽しみにしてたのに」

「あー悪いな、取り合えず逃げたヤツ捕まえて穏便に元の世界に帰って貰った後にもう一回やり直すから、アンドュとオグリもアレを探してくれないか?」

「解った手分けして探すね。で、どういう外見なの?」

「あぁそれは…」

 サイヒの説明を聞いたアンドュアイスや他の仲間たちは結界の外へ出て探索に出かけた。

「私も探しにいかないとな」

 気が競っている為かサイヒは召喚陣を消すと間違って召喚したアレを探しに森ほうへと向かった。

 ***

「はーい、子猫ちゃん♪お兄さんが遊びにきてやったぞー」 

 勝手知ったる何とやら。
 子爵家出身の騎士は、何時も逢引きに使っている森の開けた広場へと来た。

「子猫ちゃん~、君の騎士様だよ~出ておいで~」

 昨日ナンパに成功した少女が近くに居たら聞こえるように、大き目の声で呼ぶが何の気配もしなかった。

「んーかくれんぼかい?」

 手に持っていた土産の花束を手ごろな木の下に置くと、騎士は少女を探すべく森の奥へと向かった。
 それが後に人生最大の不幸が始まるとは微塵たりとも知らずに。

 ***

「子猫ちゃん、何処に隠れてるんだー?」

 その日の森は何かが違った。
 何時もなら小鳥たちが飛んでいて、木漏れ日が照らす大地が輝いてるように見えるのに、今日は虫の一人も見ていない。
 
「ん~そろそろ出て来てくれないかい?さてどうするかね。何か随分深く迄入って来たが、やはり待ち合わせ場所に戻るとするか。聖女様の結界内とはいえ、あまり森の奥に行くのも危険だしな」

 さわっ

「ッ!?」

 さわさわさわ

(えーと何だ何だ。誰か俺のお尻触ってるよねぇ。遂に俺の魅力ってば女の子の本能むき出しにさせるようになっちゃった?どんなお嬢さんがこんな大胆なことしてるのか見てやらないとねv)

「ハニーそんな情熱的なことされると俺も紳士でいられなくなっちゃうぞ☆キラッ」

 愛に身分も何も関係ないぜ、俺の胸に飛び込んできなアモーレ。
 そう続けようとして振り返った騎士の体がギシッと石のように固まった。

「あ、あの…俺は美しければ人外なのは構わないんだけど、出来れば人型ば良いなーなんて思うんだけど……」

 さわさわさわ
 
 騎士の臀部を緑の蔦が這う。
 大きな目は血走っており騎士の体をその視線で嘗め回す。
 蔦は臀部から腰のほうへと上がって行き、シャツの中で縦横無尽に動き回る。

「あっ ちょっ  やめてぇぇぇぇ」
 
 大きな一つ目を中心に蔦を四方八方にウジュルウジュルと動かすその様は余り正視しがたい。
 ちなみに蔦は粘液上の液体でヌメヌメだ。

「何々?俺のフェロモンこーゆーのにも効いちゃうの?てゆうかコレ、前に友人から借りた本に載ってた触手ってやつ!?」
 
 無数の触手は逃げ出そうとする騎士の四肢に撒きつき、軽々と宙に上げその逃亡を防いだ。
 シャツの裾から、ズボンの裾から、あらゆる所から衣服の中に進入した触手はヌメヌメと騎士の体に粘液と後に引く感触を残して蹂躙し始めた。

「あっ やめっ らめぇぇぇぇぇえぇぇーーー!!!アッーーーーー!!!」

 騎士の悲鳴と同時に、何故か近くにあった花が一輪ボトリと地に落ちた。

 ***

「あー私はこいつとは言語合わねぇみたいだから、オグリ、通訳頼んで良いか?」

 サイヒは目の前の物体を前に溜め息を零し、オグリに通訳を頼んだ。
 一瞬で魔方陣から消えたため姿を良く見ていなかったが想像以上にソレの姿はシュールだった。

『+}*P'&$%#_><`{*&%&#"!"』

『折角呼び出してくれたし自分がココの番人する、て言ってるなの』

「おっマジか。ソレは助かるな。正直もう一回やってちゃんと本命呼び出せる自信もないし」

『!#$’(&%$#(>?>}}?>{{&(%%#』

『何でも森の奥で天使のように美しい人と巡り合ったそうなの』

『’&%$$(=)=#$#$”R'+_}*`?*+*+_*?}*』

 ウジュルウジュルと触手をリズミカルに動かしながら、彼のエンジェルについて嬉しそうに語っている。

『絹糸のような美しいの金髪に海の様な青い瞳、整った顔立ちにしなやかな肢体の理想を体現したかのような人で一目惚れしたそうなの』

「種族を超えた愛か。良しこの森に居たら又巡り合えるかもしれないしな。私も応援するとしよう。しっかしお前面食いなんだな」

「そっかー。素敵だね一目惚れなんて。良いなー僕も恋してみたーい(*´▽`*)」

「アンドュ様は恋したこと無いのですか?」

 アンドュアイスの言葉にルーシュが疑問の声をあげた。

『にーちゃ、ジュンボクだから恋人まだなのー』

 森は番人を歓迎するかのように賑わった。
 妖精の羽は輝き花が揺れコロポックルたちが歌っている。
 新たな番人も触手を動かしながら踊っているようだ。

「やはり平和と言うのは良いモノだな」

 目を細め、サイヒは小さく微笑んだ。


 ***

 ルーシュが神殿に帰ると礼拝堂にキザ騎士が居た。
 勝手に出入りするのは神殿付の騎士なので誰も文句を言いはしないだろう。

 この騎士が礼拝堂に居るのは珍しい。
 普段は女の尻ばかり追いかけているからだ。

「そういえばアンタさ、手首に縛られた痕ついてるけどSM好きの彼女でも出来たのか?」

 ニヨニヨ笑うルーシュの言葉に騎士の瞳が揺れる。

「お、俺はもう汚されてしまったんだ、こんな俺を見ないでくれ――――っ!!」

 騎士が泣きながら礼拝堂から飛び出して行った。

「泣くほど辛い恋愛してんのかアイツ?」

 それを呆然と見ていたルーシュは、皆恋愛シーズンだなぁ、恋したいと言うアンドュアイスも良い恋愛が出来ると良いな、なんて柄にもなく思いながら礼拝堂を後にした。


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 山無しオチ無し意味無しです。
 この話に意味を求めてはいけません。
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