男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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「ふ~聖女の御守は今日は半日!久しぶりに公園でお弁当!木漏れ日ポカポカ。買って来たサンドイッチも肉っけマシマシのカツサンド!神殿じゃ肉食べれないからね。美味しく頂くよ♪」

 片手に本、片手にサンドイッチの入った紙袋を持ったルーシュは普段立ち入らない公園の中へと歩みを進めた。
 緑が多いここの公園は家族連れやカップルに人気のスポットである。
 何時もは1人だと入りづらいのだが今日は陽気も良く外で本を読みたい気分だった。

「あちらのベンチ辺りに座って本を、ってあれアンドュアイス様じゃないか?」

 視線の先にはベンチに座り数匹の猫にカリカリをやっているアンドュアイスの姿だった。
 数匹の猫に囲まれてアンドュアイスは無邪気な笑顔を浮かべていた。

「にゃんこさん、いそがなくてもゴハンまだまだあるよ(*´▽`*)」

(聞き間違いであってくれ!?何か真昼間の公園で”にゃんこさん”なんて可愛い単語が成人男性が発しているなんて……)

「わっ!クロちゃんほっぺたなめたらいたいよぅ。にゃんこさんのしたはザリザリなんだからね!」

 自分の膝の上に乗っていた黒猫がアンドュアイスの頬を舐めたことを咎めているようだが、その声は非常に甘く舌足らずだ。
 言葉も幼稚園児くらいの子供が使いそうな口調である。
 公務の仕事の時とはまるで別人だ。
 アンドュアイスの外見が逸脱して美麗なものだから、さっきからルーシュ以外もアンドュアイスの事をチラチラ盗み見している。

(これはっ、可愛過ぎるんじゃないか!?王家成分何処に落としてきたんですかアンドュアイス様ッ!!)

 正直母性本能がないのを自覚しているルーシュでも、このアンドュアイスは無視できない。
 笑顔がキュート過ぎる。
 声が甘すぎる。
 発言が可愛すぎる。

(ど、どうする?正直このアンドュアイス様を放っておくのは危険な気が!)

 と、その内の1人がアンドュアイスに近づいてきた。
 太った体にロングコート。
 脂ぎった太い体はお世辞にも褒められたものでもない。
 髪は薄く粗悪な造形の顔立ちは無精髭もあり清潔感は皆無だった。
 そんな如何にも怪しげな男がアンドュアイスに近づいていく。
 はぁはぁ、と男の息遣いの荒さまでわかる程眼鏡の下の目はぎらついていた。

「ねぇ君、お兄さん体が痛いんだけど、手当するの手伝ってくれないかなぁ」

 自称お兄さん(どう見ても40代後半はいっている)はアンドュアイスにテンプレ的な言葉を投げかけた。
 流石に怪し過ぎる。
 誰もがアンドュアイスが逃げるだろうと想像したがソレは反される。

「おにいさん、どこかいたいの?僕、手当ておてつだいするよ?」

(何でそうなるんですかーーーーーっ!!!)
 
 ルーシュの目の前で男はアンドュアイスの手首を掴むと木々が立ち並ぶ公園の奥の方へと進んで行く。

(コレは止めないと!!)

 暫しあまりの展開に固まっていたルーシュだが我に返り急いでアンドュアイスの元に駆け付ける。

「わぁおにいさん、コレはれてていたいの?法術は効かないの?」

「そうなんだよ。だから中にたまったばい菌出すためにお口で咥えて舐め舐めしてくれないかな?」

「ん~わかったよ。なめなめしたらいいんだね?」

「歯を立てないように気を付けてね」

 茂みを抜けると其処は変態とピュアっ子が居ました。
 男はやはりと言うかコートの下には何も着ておらず、反り返った男性器を地べたに座っているアンドュアイスの方へと突き出していた。
 そして対するアンドュアイスは男の言うように今まさに男性器を口に入れようとしていて。

「ちょっと待ったーーーーーーっ!!」

「「え?」」

「あ、ルーシュ?」

「な、なななな何だ君はっ!!!」

 男とアンドュアイスが同時にルーシュの方へ顔を向けた。

「何だはあなたの方でしょう!何アンドュアイス様が状況把握できていないからって何をする気だったのですか!てゆーか完全アンドュアイス様の事食べる気満々ですよね!!!!」

「え、僕食べられちゃうの?」

 アンドュアイスの碧眼が涙で潤む。
 眉が下がって庇護欲をそそられる表情をする。
 ソレを見た男の男性器が一回り大きくなった。

「何汚らしい物を更に大きくしているんですか!?さぁアンドュアイス様こっちに来て下さい。その男はアンドュアイス様の事滅茶苦茶にして食べてしまうつもりなんです!!」

「僕、食べられるのいやぁ!ルーシュたすけてぇ!!」

「勿論です!!」

 言うが否や自分の後ろえ隠れたアンドュアイスを庇い男と対峙する。

「死ぬ覚悟は出来てんな?」

「う、うわぁぁぁぁ!!!」

 男が身を翻して逃げようとする。
 それに簡単に追いつきルーシュは男の脇腹に肘鉄をぶち込んだ。

「ぐはぁっ!!!!」

 うめき声をたて男は地に倒れ伏した。
 その頭をグリグリとブーツの底で踏みつけながらルーシュは冷静に公園を巡回する衛兵に男の存在を伝える。
 その腰にアンドュアイスはヒシっ、と抱き着いてきた。

「僕、たべられちゃう、ところだった。ルーシュ、助けてくれて、ありがとうっ」

 アンドュアイスの長い睫毛で縁取られた大きな双眸からポロポロと大粒の涙が流れ落ちる。

(うわぁぁあアンドュアイス様可愛過ぎるでしょ!!)

「大丈夫ですよアンドュアイス様。私が守ってあげますから」

 腰にあるアンドュアイスの金糸を撫でる。

(ひゃぁぁアンドュアイス様髪サラサラ!触り心地良すぎ!泣き顔の上目遣いヤバすぎ!!!)

「ルーシュ、ありがと。これからも、僕の事、助けてくれる?」

「アンドュアイス様が、私と居る事を望んでくれるなら…」

「うん、じゃぁずっと僕と一緒に居て、ルーシュ」

 ニッコリ笑う笑顔が愛らしい。

(これは…大変な選択をしてしまったのでは……)

 ルーシュが思考をぐるぐるさせているが、決戦まで後1日である……。


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 色々経験豊富なくせに自分が男に欲情される側とは思ってないピュア大型犬。
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