男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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「ここどこ?お兄ちゃんたちとお姉ちゃんっちだーれ?」

 まろみを帯びた頬。
 ぷくぷくの小さな手足。
 天使のような愛らしい容貌。
 だぼだぼの服を来た3歳児のアンドュアイスは間違いなく天使だった。

「ここは空の上だぞ。で、今お前は夢の中だ。ほら、月と太陽が一緒に見えるだろ?」

「わ~ほんとうだぁ!すごいね~、お花も虹もきれいだね~」

 サイヒの言葉に納得したらしいアンドュアイスが天界を見渡して、これまた愛らしいボーイソプラノで感激の声を漏らした。
 少し下っ足らずなのが可愛さに拍車をかけている。

「ここにはお母様来てないの?」

「この夢には来てないな」

「そっか~じゃぁ、ボクとお姉ちゃんだけだね」

 ニパーと微笑む。
 何と言う無邪気な笑顔であろうか。
 その可愛さにルークとルーシュとマロンは瀕死状態だ。

 クオンだけが何とも言えない顔をしている。

「何だクオン、マロンがアンドュに夢中なのが気に入らないのか?」

「分かってて聞いているだろうサイヒ。あんな幼い子供が母親が居ない事を喜ぶなど、どんな育て方をしたのかと考えるだけでアンドュ様の親に対してはらわたが煮えくり返りそうだ」

「あぁ、でも笑え。今日はルーシュの誕生日だ。それとアンドュにも幸せな子供時代の記憶が刻まれるのは良い事だろう?」

「術が解けても記憶は残るのか?」

「本人にとっては夢みたいなものだろうな。精神年齢が3歳だから全部を覚えきっていると言う事は無いと思う。それでも良い記憶が根付くならソレで良いではないか」

「そうだな。あの方も幸せな記憶を持っても良いな」

 アンドュアイスがどうして女嫌いになったかルークとマロンを除いた3人は知っている。
 それに特に心を痛めているのは同じ男であるクオンであった。
 親に道具にされ汚される。
 それがどれ程子供の心を潰したのかと思うと、昔は敵視していたのが信じられない程にアンドュアイスの無垢さは父性本能を擽られる。
 サイヒは父性本能でも母性本能でもなくペットのような存在に対する保護欲だが。
 アニマルセラピーも悪くは無いだろう。
 それに今の世はペットは家族と堂意義だ。

「お、アンドュがさっそくマロンに餌付けされているな。流石は母性本能の塊、将来良い母親になりそうだぞ?良かったなクオン」

「だからお前はそう言う事を一々言うな!」

「何してるんだ?サイヒも早く来いよ!」

 キャーキャー言いながらアンドュアイスがルーシュに追いかけられてる。
 どうやら鬼ごっこをしているらしい。
 服はルークが魔術で何とかした様だ。
 スモックのような白い服を着ている。
 良く似合う。

 愛らしい幼児に白いスモック。
 天使だ。

「おねーちゃん、髪きれーだね」
 
 ルーシュに捕まったアンドュアイスが抱っこされた体制のままルーシュの髪に触れる。
 そしてニッコリと笑ってそう言った。

「ア、アアアアアアアアリガトウ!」

 ルーシュは鼻血を出さないように堪えた。
 噴き出したらアンドュアイスを汚してしまう。

「ボクね、おねーちゃんの髪の色好きー♬春が来た時のはっぱみたい。おねーちゃん春の妖精さん?」

「わ、私が妖精?アンドュ様が幼児なのに色気があってツライ!!」

「良かったなルーシュ、女扱いして貰っているぞ」

「ここでも貧乳ネタ引っ張る!?」

「良いじゃないか、アンドュは気に入っているみたいだぞ?」

「言い方――――――っ!!」

 天使な保護犬(と書いてアンドュアイスと読む)を抱きしめて幸せの真っただ中、同時にサイヒにいじられてルーシュの情緒はジェットコースター状態だ。

「おねーちゃん、お胸がどうしたの?」

「アンドュ様は気にしなくて良い事ですよ」

「病気?痛くない?」

「アンドュ様が天使過ぎてツライ……」

「心配するなアンドュ、そのお姉ちゃんは胸が小さいんを気に病んでいるだけだ」

「そうなの?でもボク、おねーちゃんのお胸ふにふにしてて気持ち良くて好きだよ」

 ニッパーッ

 笑顔が輝いている。
 無邪気な子供怖い。
 ルーシュはアンドュアイスを抱きながら口から魂が抜けだしそうになっていた。


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 前後編のつもりが中編挟む形になりました。
 久しぶりの更新ですが、こちらもまた進めていきますのでアンドュとルーシュが結ばれるまで温かい目で見守ってくれると嬉しいです(*- -)(*_ _)ペコリ
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