男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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本編で語られなかったイチャラブ事情

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 晴れて自由の身となったアンドュアイスはご機嫌だった。
 王都で身を隠さなくても堂々と歩ける。
 声をかけられることはない。
 しかも隣には愛しのルーシュ付き。

「♬~♪~~~~」

「楽しそうですねアンドュ様」

「うん、ルーシュと一緒だから!」

「そう言う所、本当に………」

 ルーシュは心友に天然誑しが居るので慣れているが、適性体質でないものはソレだけで落ちるだろう。
 何処に?
 尊さの沼にだ。

「ねぇねぇルーシュ、お昼まだだよね?何食べようか~?」

「そうっすね…折角の王都ですし、羽を広げて買い食いツアーでもしましょうか?」

「何その楽しそうなの!?」

「天然培養のアンドュ様の辞典に”買い食いツアー”が載ってる訳ありませんでしたね。用は美味しいそうなモノを片っ端から食べよう、と言う事ですよ」

「じゃ、じゃぁ屋台のご飯食べて良いの?」

「良いですよ」

「お菓子屋さん入って良い?」

「良いですよ」

「毒身もしなくて良いの!?」

「良いですよ」

 パァァァァッ

 アンドュの顔が輝いた。
 お目目キラキラである。
 おそらく全てが初体験。
 ワンコ、初のお散歩デビューである。

「じゃ、じゃアレ!串焼き食べて見たかったの」

「何本食べます?」

「ん~と…王都って何軒屋台あったっけ………?」

「今日中に制覇しなくてもまた次回続きをすれば良いじゃないですか」

「次?次もあるの!?」

「勿論ありますよ」

「そっかぁ~次かぁ~」

 アンドゥアイスがくふくふ笑う。
 幼子のようで大変可愛らしい。
 サイヒに【認識阻害・強】をかけていて貰って良かった。

「じゃぁ、全種類食べてみたい」

「それなら分けっこしましょーか?」

「分けっこ!?分けっこ、初めてだぁ」

 キラキラしている。
 無駄にキラキラしている。
 顔が良いって怖い。
 それ以上にアンドュアイスは保護欲もそそるので益々怖い。
 沼の底が見えない。

「じゃぁ買って来るんで待っててくださいね」

「ルーシュ!僕が買う!」

「え、じゃぁお願いしますねアンドュ様」

「うん!」

 ワンコ、初めてのお使いである。
 ルーシュはその様子をはらはらしながら見守った。
 果たして生まれてから庶民の生活に触れた事がない(黒アンドュは闇歴史である)アンドュアイスが屋台でちゃんと買い物が出来るだろうか?

 ルーシュは婚約者と言うより保護者の目線で見守っている。

 ちなみに天界でも飼い主と従兄弟がはらはらしながら見守っていた。
 覗き、駄目絶対!

「ルーシュー買えたよ~」

「じゃぁ何処かに歩きながら食べましょうか」

「歩きながら食べて良いの!?」

「人に迷惑変えなければ良いですよ」

「そっか~そっかぁ~♪」

(あぁもう、何もかも尊いなぁこの方は………)

 串焼きを頬張るだけで絵になる男である。
 食べ歩きなのに気品さがあるのは何故だ?
 ルーシュなんか町民Aの如き存在感なのだが。
 ソレはソレで問題である。
 一応ルーシュも武家とは言え公爵家生まれだ。
 しかも皇帝の婚約者。
 もう少し淑やかさを付けないといけないだろう。
 まぁアンドュアイスは淑やかさなどルーシュに求めていないが。

「美味しいね~」

「美味しいですね」

 ニコニコ微笑むアンドュアイスにルーシュも微笑を返した。
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