男として育てられた公爵家の令嬢は聖女の侍女として第2の人生を歩み始めましたー友人経由で何故か帝国の王子にアプローチされておりますー

高井繭来

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本編で語られなかったイチャラブ事情

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 書庫に入りマーガレットを探す。
 その居場所はすぐに分かった。
 少し空間を開けて男の使用人が群れを成している区画があるのだ。

 近づいてみると案の定、マーガレットが読書をしていた。

 ルーシュもアンドュアイスも良く知っている色合いだ。
 空色の髪に翡翠の瞳。

 2人の良く見慣れた”リリィ・オブ・ザ・ヴァリー”と全く同じ配色である。
 本を読む姿は可憐で”妖精姫”の名に相応しい。
 マーガレットはサイヒと真反対の存在だ。

 女らしく
 華奢で
 庇護欲をそそり
 砂糖菓子のように甘そうな存在だ。

 ルーシュは嫌な予感がした。
 隣を見てみる。

「リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女リリィと同じ色なのに女」

 虚ろな日でぼそぼそ呪文のように呟いている。

 空色の髪と翡翠の瞳はアンドュアイスにとってリリィ・オブ・ザ・ヴァリーの色なのだ。
 そしてリリィ・オブ・ザ・ヴァリーはアンドュアイスにとって女では無い。
 性別を超越した存在で、色を含まない眼差しで何時だって自分を可愛がってくれる大切な保護者だ。
 そう、アンドュアイスにとってはサイヒは”保護者”なのである。

 婚約者のルーシュよりも、下手したら心の距離は近いかも知れない。

 まぁルーシュは”サイヒは保護者”と納得しているのでそこで嫉妬は湧かないが。
 だが同じ色合いでこれでもか、と女らしい雰囲気を出しているマーガレットを見てアンドュアイスは恐怖を覚えたようだ。
 アンドュアイスの女嫌いは治っていない。
 寧ろ女恐怖症に近い拒否感を女に抱いている。
 拒否されていない女はルーシュを筆頭にサイヒ、マロン、そしてルーシュの姉たちだけである。

「アンドュ様、マーガレット様とは私が話しますね?」

「うん、ごめんねルーシュ………」

 落ち込んでいる。
 アンドュアイスがこれ以上ないくらいに落ち込んでいる。
 保護者サイヒの姉であるマーガレットに拒否感を覚えたのがショックだったらしい。
 アンドュアイスもルーシュも、マーガレットはサイヒの姉であるからアンドュアイスもすぐに馴染めるだろうと思っていたのだ。
 実際ルーシュの姉たちにはすぐに馴染んだ。

 だがやはり女を強く感じさせる存在は身内の血縁でも駄目であったらしい。
 ルーシュの姉たちは皆、淑女ではなく騎士である。
 女の騎士は珍しい。
 だが華やかな場で見目が良い騎士が護衛に回ると会場が一層明るくなるのだ。
 だからと言って壁の華役をするだけの女騎士ではない。
 ちゃんと剣の道を収め、男の騎士にも負けないほどの心と体の強さを持った女性ばかりだ。
 そんなルーシュの姉だからアンドュアイスも拒否感を起こさなかったのだろう。

 ちなみにルーシュは男として騎士の中でも上位である”聖騎士”を務めていた。
 能力的には姉妹の中でも1番跳びぬけて高い。
 アンドュアイスが1番初めにルーシュを気に入ったのもソレが理由の何割かを占めている。
 今は可愛い女の子のルーシュにも夢中だが。

 だが可愛い女の子でも傍に居て欲しいのはルーシュだけだ。
 
 他の可愛い女の子は拒否感が働いて傍によられると恐怖を覚える。
 トラウマはかなり深いようである。

 そんな落ち込んでしまったアンドュアイスを浮上させるのもルーシュの役目。
 自分で言うのも何だが、アンドュアイスの扱いのコツを掴み始めているルーシュである。
 そして今回はアンドュアイスに効果てきめんのカードをルーシュは持っていた。

「アンドュ様、禁書庫の鍵だけ貰って奥で本読んじゃいましょう。で、早く【次元移動】の術身に付けて書庫をおさらばしましょう。
速く術を覚えて時間が出来たらジャスミンさんと会える時間も作れますよ」

「そうだジャス君!一緒にご飯食べる約束出来たんだよね、嬉しいなぁ初めて友達とご飯食べるんだぁ」

 一気にアンドュアイスがワンコモードに戻った。
 恐るべしジャスミンの存在。
 少し嫉妬するくらいは許されるだろうと、ルーシュは少しばかりの嫉妬心を隠しながらも喜ぶアンドュアイスを見て、こうやってアンドュアイスが自分をさらけ出せる人が増えれば良いなぁと思うのであった。
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