あんたは俺のだから。

そらいろ

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温もり-nukumori-1

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踏み出した足は止まらず、樹矢の元へまっすぐ向かった。

客席の間をくぐり抜けて彼の顔がだんだん近くなり階段を登って、手を差し伸べると樹矢が手首を掴んでひょいと上段にあげてくれた。

タンッ------

足音が響く。

俺の身体を引き寄せて俺の腰にそっと手を添える。

「……樹矢。」

自分にしか聞こえない声でボソッと名前を呟くとその声は届いていたのか、すぐに目が合う。

ニコッといつもの笑顔で笑うと、360℃観客に向けて手を嬉しそうに振ると、くるっと向きを変え俺を連れてランウェイを歩き出す。

樹矢とこんな舞台に立つ日が来るなんて…。

舞台袖まで移動しても樹矢の足は止まらなかった。
嬉しさと恥ずかしさから俺は顔を伏せていてたため自分が何処にいるか、何処へ歩いているか分からなかった。

バタン。と扉が閉まる音がしたと思えば、樹矢は俺を正面から優しく、けど力強い腕で抱きしめた。

「しゆちゃん…。」

彼のか細い声を聞いて、俺の心が震えた気がした。
会いたくて仕方が無かった。ずっとこの腕を、匂いを、温もりを、声を、顔を、彼の全てを身体全部で求めていたんだ。

気づけば、目元から温かい雫が頬を伝って流れていた。

樹矢の腕の中に包まれているのがとても心地よくて、離さまいと自分なりに精一杯の力でぎゅっと抱きしめ返す。
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