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並行-heikou-9 結埜side
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「では、今日は本当にありがとう。宣材写真の件も、またお礼させて頂きますね」
「あ、はい」
朱斗にお礼を言い、結埜は現場を去ろうとした。
「おつかれさまでしたー。あっ!今日はありがとうございます!」
簡単に去ることが出来ない。スタッフさん達への挨拶は欠かせないからだ。
見知ったスタッフさんへもこういった現場でしか会えないスタッフがいる為、知っている人は当然のように名前で呼び軽い談話をする。
「またお願いします。いつでも飛んで行くんで!」
「ははっ、頼むよー」
挨拶を交し終えて、私服へ着替えるため控え室に戻る。
ハンガーに掛かっているジャケットの隙間からキラリと見えたのはネックレス。ぶら下がる先には小さな小瓶があり、中身は分からない。
(もう、いかないで……)
結埜はその瓶を指先で優しく撫でて小さく願う。
___
着替えを済ませ、廊下に出る。このあとの用も無くなったので足早に歩いていく。家に送るために駐車場で待っているであろうマネージャーの乗る移動車を目指す。
すると、廊下に聞き慣れない音が響いていることに気づいた。
(あれ…は…)
黒くて大きな袋を重たそうに肩に掛け、歩いている男性の姿が見えた。響いていた音の正体は、金属がぶつかる音だ。
歩幅をさらに大きくして、その男性に近づく。
(やっぱり、須藤さんだ…)
男性の正体が分かった途端、高揚した。
手を伸ばせば触れられる距離まで近づく。そして、彼の肩に掛かっている大きな荷物を手に取った。
「へ……」
振り返った朱斗は驚きの表情だ。
それもそうか。と思いながら、結埜は笑顔で声を掛ける。
「お疲れ様です。にしても、これすっごく重たいね。撮影に使っていた三脚…とか?」
想像よりも重量のあった荷物に驚きながらも、自分の肩に掛ける。
「えっ…とー。そうです。三脚の他にもレンズとか予備のカメラも入っていて…って重たいですよね!!」
慌てた様子で荷物を取り返そうとされるが、こんな重たいもの持たせられないという思いがエゴだと感じつつ「持つんで、行きましょう」と再び歩き出した。
---
コツコツと廊下に響く二つの足音。
「須藤さん、車?」
「はい。そうです」
「んー。このあとって…何か予定あるかな?」
「予定?いや、今日はもうこれで仕事も終わりなんで帰るだけです」
「じゃあ、少しさ、俺に付き合ってくれない?」
笑顔を向ける。
その相手は朱斗であって、彼でない。それに結埜自身は気づいている。気づきながらも、離れたくない。離したくないと、過去の後悔を重ねながら朱斗に近づく。
「は、い…」
朱斗の返事に結埜は心から喜んだ。
「あ、はい」
朱斗にお礼を言い、結埜は現場を去ろうとした。
「おつかれさまでしたー。あっ!今日はありがとうございます!」
簡単に去ることが出来ない。スタッフさん達への挨拶は欠かせないからだ。
見知ったスタッフさんへもこういった現場でしか会えないスタッフがいる為、知っている人は当然のように名前で呼び軽い談話をする。
「またお願いします。いつでも飛んで行くんで!」
「ははっ、頼むよー」
挨拶を交し終えて、私服へ着替えるため控え室に戻る。
ハンガーに掛かっているジャケットの隙間からキラリと見えたのはネックレス。ぶら下がる先には小さな小瓶があり、中身は分からない。
(もう、いかないで……)
結埜はその瓶を指先で優しく撫でて小さく願う。
___
着替えを済ませ、廊下に出る。このあとの用も無くなったので足早に歩いていく。家に送るために駐車場で待っているであろうマネージャーの乗る移動車を目指す。
すると、廊下に聞き慣れない音が響いていることに気づいた。
(あれ…は…)
黒くて大きな袋を重たそうに肩に掛け、歩いている男性の姿が見えた。響いていた音の正体は、金属がぶつかる音だ。
歩幅をさらに大きくして、その男性に近づく。
(やっぱり、須藤さんだ…)
男性の正体が分かった途端、高揚した。
手を伸ばせば触れられる距離まで近づく。そして、彼の肩に掛かっている大きな荷物を手に取った。
「へ……」
振り返った朱斗は驚きの表情だ。
それもそうか。と思いながら、結埜は笑顔で声を掛ける。
「お疲れ様です。にしても、これすっごく重たいね。撮影に使っていた三脚…とか?」
想像よりも重量のあった荷物に驚きながらも、自分の肩に掛ける。
「えっ…とー。そうです。三脚の他にもレンズとか予備のカメラも入っていて…って重たいですよね!!」
慌てた様子で荷物を取り返そうとされるが、こんな重たいもの持たせられないという思いがエゴだと感じつつ「持つんで、行きましょう」と再び歩き出した。
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コツコツと廊下に響く二つの足音。
「須藤さん、車?」
「はい。そうです」
「んー。このあとって…何か予定あるかな?」
「予定?いや、今日はもうこれで仕事も終わりなんで帰るだけです」
「じゃあ、少しさ、俺に付き合ってくれない?」
笑顔を向ける。
その相手は朱斗であって、彼でない。それに結埜自身は気づいている。気づきながらも、離れたくない。離したくないと、過去の後悔を重ねながら朱斗に近づく。
「は、い…」
朱斗の返事に結埜は心から喜んだ。
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