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無二-only-4
しおりを挟む「俺、そろそろ帰ります。長居しちゃってすみません」
鞄を手に取り座っていた場所から立ち上がる。
「こっちこそ、ごめん。んで、本当にありがとう。心が穏やかになったというか、軽くなったというか、朱斗くんに出会えて、こうして話せて本当に良かったよ……」
「また、どこか出会えたらお願いします。結埜さんのこと応援してるからさ。絶対叶う、大丈夫」
報われたと思った。朱斗の言葉にズンとのし掛かっていた錘が剥がされたようだった。
『大丈夫だって!結埜ならその夢叶えられるよ!』
巡が亡くなって10年が経った。もう結埜は30歳になる。巡と出会って過ごした短い時間以上に彼のことを結埜は永く思い今日まで過ごしてきた。
居ないと受け入れられない恋人を勝手に足枷にして、歩むスピードを遅くしていたんだ。新しく踏み出すチャンスを掴まなかったもの、この世にいない恋人のせいにするのは、もうやめようと結埜は思った。
恋人を包み込んで、彼を思う気持ちも含めて共に生きていこうと誓った。傍から見たら幸せには見えないかもしれなくても、それが結埜なのだとまずは恋人と共存することを選んだ自分自身から受け入れよう。
「またね」
あの日、最期に言えなかった言葉を恩人へ優しく投げた。
「うん、またね。結埜さん」
___
結埜の家を出ると、分かってはいたが更に夜は深けている。肌に当たる外の風はなお冷たくなり毛立つ。
振り返ることなく、駐車場へ歩いていく。運転席に座り、携帯の電源を入れて自身を照らす。現れた時刻を見ると、もう日付が変わろうとしていた。
配列された数字の下には不在着信の文字。
親指でタップをして携帯を鳴らした。
「朱ちゃん……?」
もしもしなんて言葉から始まらない電話が彼ら。聞いた声は久しくないのに会えていない分、遠く懐かしく感じる。
「樹矢。ごめん、電話出れなくて」
「んーん。大丈夫。いま何処にいるの?」
「えーっと…友達の家?」
「なんで疑問形なの」
ふっと笑ってしまった樹矢を想像して、朱斗の口角があがる。
「今から帰るとこ。運転するから、切っていい?」
「なんか……いつもなら一方的に切るのに今日は切っていいか確認するんだね。朱ちゃん、珍しい」
確かに。切るよと言っていつもなら電話を終わらせる。朱斗は今、声が聞きたいと思っていることが、感の良い恋人にはすぐにバレた。
「いいよ。また後で声聞くから。もう遅いし、運転気をつけてね」
「うん、じゃ」
変わらず優しい恋人からの言葉を胸にネオンと外灯が照らすキラキラした都会の夜道の中を運転して、一人帰路についた。
運転しながら、もし樹矢が突然居なくなったらどうしようと考えた。
この世の誰も彼も明日が当たり前にくるなんて不死の世界でしかあり得ない。それでも、隣にいる代わりなんて居ないただ一人の大切にしたい彼と共に明日を迎えたいんだ。
「好きなんだな……」
あまりに惚れているという事実を改めて受け入れるとなんかむず痒くなった。
自宅の玄関前に立ち、鞄から取り出した鍵を差し込み回す。ガチャっと音と共に扉が勝手に開いた。立っている場に迫ってくる扉に驚いて朱斗は反射的に後ろに1歩下がってしまう。
「え?」
あとからついてきた朱斗の声があまりに間抜けだったが、今はそんな事よりも突然扉が開いた怪奇現象への驚きだ。
その犯人はすぐに現れた。扉の裏から顔を見せたのはまだ会えないはずの朱斗の恋人だった。
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