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26話 怖い話にオチはない
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怖い話を書いたり話したりしていると、たまに心無い人から
『あんまり怖くない』
『どっかで読んだことある』
『あの話のパクリ?』
『ワンパターン』
などと扱き下ろされることがある。
指摘の仕方や言葉遣いは別として、このような指摘もしょうがないことだと思う。
かといって書く側からすると「それは言いっこなしだよ!」という気持ちもあるので悩ましいところだ。
なぜなら、怖い話やホラー映画なんて、長い歴史の中で数多くの作品や話が生み出され・語られているため、すでにほとんどのパターンが出尽くしてしまっている。つまりはパターン化しているのだ。
皆様にも共感していただけるであろう、ホラー映画によくあるシーンを文章で表現してみよう。
①クローゼットや押し入れ、風呂場やトイレなどの別の部屋から、何か物音がする。
②(やめとけばいいのに)恐る恐る近づいていく。
③意を決して思いっきりドア(もしくは襖)を開けるが、そこには何もいない。
④ホッとして振り返ると、後ろに何かいる。
上述したようなシーン、1度は観たことがないだろうか?
ホラー映画などで散々使われてきたシーンで、もはや1つのパターンである。怖い話にだってこの手法は応用されている。
簡単にまとめると、怖い話やホラー映画を観ていれば観ているほど、聞いていれば聞いているほど、知らず知らずパターンを覚えてしまっているのだ。
年も変わって2021年(※この話を書いた現在)、ここから先のオカルト業界では、新たな怖さの手法を見つけることができる監督や作家が偉大な賞を獲得していくことになるだろう。
話が長くなってしまったが、そろそろ今回の話に移ろう。
実際に起こる怖い出来事は実にシンプルであり、上述した『あんまり怖くない』『ワンパターン』な話であることが多い。つまりは取って付けたようなオチがないことが多い。
◆
「そこの襖は後ろ手で閉めちゃダメだよ」
学生時代、坂本の家によく遊びに行っていたのだが、1番最初にいただいた注意事項だった。
2階へと続く階段、1番上は半畳ほどの踊り場になっており、2階の部屋とは襖で仕切られていたのだが、この襖が上述したように後ろ手で閉めてはいけない襖で、夏であろうと夜は開けっ放しにしてはいけないというルールがあった。
「何で後ろ手で閉めちゃいけないの?」
好奇心で尋ねてみたのだが、意地悪な顔をして「やってみればわかるさ」とだけ言われた。
言うことを聞かない子は痛い目を見なさい、といったニュアンスに近いなと思った。
後悔先に立たずというか何というか、坂本の家だという時点で恐怖体験になるであろうことは明白だったのに、その時の私は好奇心による単純な思考で後ろ手で閉めてしまったのだ。
――グニッ
柔らかいなにかを挟んだような感触がし、襖は最後まで閉まらなかった。
襖に向き直ってみると、ほんの数センチ隙間がある。子どもの脚や腕ぐらいなら通りそうな、そんな小さな隙間だった。
襖を向いた状態で閉めてみると、何の問題もなく最後まで閉まった。
何度か開け閉めしてみたが、後ろ手で閉めたときだけ最後まで閉まらない。
後ろ手でも「絶対に閉めてやる!」と力強く閉めたときは最後まで閉まるのだが、謎の罪悪感が発生するのだ。
まるで「そんな強く閉めないで!」と訴えかけられているような。
「霊感がある人は大体そうなる。霊感がない人でもたまにそうなる」
何度も実験する私を見て何か思うところがあったのか、「もういいだろ?」と言わんばかりの呆れた声でそう言った。
「何で?」
「教えない。」
正直かなり怖かったが、彼は教えないと言ったことは絶対に教えない。
私は急いで開け閉めの実験を終え、できるだけ襖から距離があるところに座りなおした。
また別の日、私は坂本の家にお泊りすることになった。
飲み会で最終バスを逃したのである。ツラい。
この時にはもう襖を後ろ手で閉めることはなくなっていたものの、何かを挟んだ感触のことはすっかり忘れていた。
特に会話もなく、ただ適当にテレビを点けているだけの空間。
坂本は私に背を向けて本を読んでおり、私は携帯をいじっていたと思う。
――トントントントン……
不意にそんな音が聴こえてきた。
軽快に階段を駆け上がるような、そんな音に聴こえた。
しかし少し離れたところで本を読んでいる坂本は微動だにしない。
(気のせいかな?)
そう思った時だった。
――トントントントン……
(うん、気のせいじゃないな……)
絶対にその音は鳴っていた。
胸の鼓動が急速に高鳴る私と対照的に、それでも坂本は呑気に本を読んでいた。
――トントントントン……
それから何度かその音を聴いたのだが、そのうち妙なことに気づいた。
階段から鳴る音は、下る音は聴こえず、上がる音しか聴こえなかった。
そしてその音は、子どもの小さな足が奏でるような音だった。
(怖いけど気になる……)
すぐに後ろ手だと何かを挟んでしまう襖の怪を思い出した私。
恐怖心に反発するように湧き出る好奇心が勝りつつあった。
そしていよいよ意を決して腰を浮かせた時に、その声は発せられた。
「開けない方がいいよ」
こちらを振り向くこともなく、何の抑揚もない声が投げられた。
私は浮かした腰をそのまま下ろし黙り込んだ。
こちらを見ていないにも関わらず釘を刺してきた坂本も怖かったが、それよりも「これ以上追及するな」と言われたようで怖くて何も言えなかった。
後日談となるが、数日後の冷静な頭で考えてみると、『開けない方がいい』と注意してきた彼は『開けてしまって何かあった』のだろう。
そうでないとあの言葉は発せられないはずだ。
開けてしまった彼の身に何があったのか、10年以上経った今でも私は聞けていない。
この話はここで終わりとなる。
よくできたドラマや映画のように、開けた先にある恐怖なんてリアルな日常では追求されない。
だからオチのない怖い話の方が自然だと思う。
『あんまり怖くない』
『どっかで読んだことある』
『あの話のパクリ?』
『ワンパターン』
などと扱き下ろされることがある。
指摘の仕方や言葉遣いは別として、このような指摘もしょうがないことだと思う。
かといって書く側からすると「それは言いっこなしだよ!」という気持ちもあるので悩ましいところだ。
なぜなら、怖い話やホラー映画なんて、長い歴史の中で数多くの作品や話が生み出され・語られているため、すでにほとんどのパターンが出尽くしてしまっている。つまりはパターン化しているのだ。
皆様にも共感していただけるであろう、ホラー映画によくあるシーンを文章で表現してみよう。
①クローゼットや押し入れ、風呂場やトイレなどの別の部屋から、何か物音がする。
②(やめとけばいいのに)恐る恐る近づいていく。
③意を決して思いっきりドア(もしくは襖)を開けるが、そこには何もいない。
④ホッとして振り返ると、後ろに何かいる。
上述したようなシーン、1度は観たことがないだろうか?
ホラー映画などで散々使われてきたシーンで、もはや1つのパターンである。怖い話にだってこの手法は応用されている。
簡単にまとめると、怖い話やホラー映画を観ていれば観ているほど、聞いていれば聞いているほど、知らず知らずパターンを覚えてしまっているのだ。
年も変わって2021年(※この話を書いた現在)、ここから先のオカルト業界では、新たな怖さの手法を見つけることができる監督や作家が偉大な賞を獲得していくことになるだろう。
話が長くなってしまったが、そろそろ今回の話に移ろう。
実際に起こる怖い出来事は実にシンプルであり、上述した『あんまり怖くない』『ワンパターン』な話であることが多い。つまりは取って付けたようなオチがないことが多い。
◆
「そこの襖は後ろ手で閉めちゃダメだよ」
学生時代、坂本の家によく遊びに行っていたのだが、1番最初にいただいた注意事項だった。
2階へと続く階段、1番上は半畳ほどの踊り場になっており、2階の部屋とは襖で仕切られていたのだが、この襖が上述したように後ろ手で閉めてはいけない襖で、夏であろうと夜は開けっ放しにしてはいけないというルールがあった。
「何で後ろ手で閉めちゃいけないの?」
好奇心で尋ねてみたのだが、意地悪な顔をして「やってみればわかるさ」とだけ言われた。
言うことを聞かない子は痛い目を見なさい、といったニュアンスに近いなと思った。
後悔先に立たずというか何というか、坂本の家だという時点で恐怖体験になるであろうことは明白だったのに、その時の私は好奇心による単純な思考で後ろ手で閉めてしまったのだ。
――グニッ
柔らかいなにかを挟んだような感触がし、襖は最後まで閉まらなかった。
襖に向き直ってみると、ほんの数センチ隙間がある。子どもの脚や腕ぐらいなら通りそうな、そんな小さな隙間だった。
襖を向いた状態で閉めてみると、何の問題もなく最後まで閉まった。
何度か開け閉めしてみたが、後ろ手で閉めたときだけ最後まで閉まらない。
後ろ手でも「絶対に閉めてやる!」と力強く閉めたときは最後まで閉まるのだが、謎の罪悪感が発生するのだ。
まるで「そんな強く閉めないで!」と訴えかけられているような。
「霊感がある人は大体そうなる。霊感がない人でもたまにそうなる」
何度も実験する私を見て何か思うところがあったのか、「もういいだろ?」と言わんばかりの呆れた声でそう言った。
「何で?」
「教えない。」
正直かなり怖かったが、彼は教えないと言ったことは絶対に教えない。
私は急いで開け閉めの実験を終え、できるだけ襖から距離があるところに座りなおした。
また別の日、私は坂本の家にお泊りすることになった。
飲み会で最終バスを逃したのである。ツラい。
この時にはもう襖を後ろ手で閉めることはなくなっていたものの、何かを挟んだ感触のことはすっかり忘れていた。
特に会話もなく、ただ適当にテレビを点けているだけの空間。
坂本は私に背を向けて本を読んでおり、私は携帯をいじっていたと思う。
――トントントントン……
不意にそんな音が聴こえてきた。
軽快に階段を駆け上がるような、そんな音に聴こえた。
しかし少し離れたところで本を読んでいる坂本は微動だにしない。
(気のせいかな?)
そう思った時だった。
――トントントントン……
(うん、気のせいじゃないな……)
絶対にその音は鳴っていた。
胸の鼓動が急速に高鳴る私と対照的に、それでも坂本は呑気に本を読んでいた。
――トントントントン……
それから何度かその音を聴いたのだが、そのうち妙なことに気づいた。
階段から鳴る音は、下る音は聴こえず、上がる音しか聴こえなかった。
そしてその音は、子どもの小さな足が奏でるような音だった。
(怖いけど気になる……)
すぐに後ろ手だと何かを挟んでしまう襖の怪を思い出した私。
恐怖心に反発するように湧き出る好奇心が勝りつつあった。
そしていよいよ意を決して腰を浮かせた時に、その声は発せられた。
「開けない方がいいよ」
こちらを振り向くこともなく、何の抑揚もない声が投げられた。
私は浮かした腰をそのまま下ろし黙り込んだ。
こちらを見ていないにも関わらず釘を刺してきた坂本も怖かったが、それよりも「これ以上追及するな」と言われたようで怖くて何も言えなかった。
後日談となるが、数日後の冷静な頭で考えてみると、『開けない方がいい』と注意してきた彼は『開けてしまって何かあった』のだろう。
そうでないとあの言葉は発せられないはずだ。
開けてしまった彼の身に何があったのか、10年以上経った今でも私は聞けていない。
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