先読みの巫女を妄信した王子の末路

しがついつか

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先読みの巫女とは

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先読みの巫女さきよみのみこ

それは数日、数年、あるいは数十年も先の未来を視ることの出来る希有な能力を持つ女性のこと。
現存する書物において、初めて巫女が世間に認知されるようになった記録は、1000年前のものだ。

歴史上初めて現れた巫女はこの国の王女であり、彼女の予知によって、数々の災害を乗り越えることが出来たという。
王女の逸話は、子供に読み聞かせる童話として今も受け継がれている。

当時王女が視た内容は、現在では国の歴史書に記載されるなどして概ね公開されていた。
その後現れた次代の巫女達の予知は、的中したものは公開することが可能となっているが、そうでないものは現在も王家において厳重に管理されている。
吉兆ならともかく、凶兆であれば情報公開することにより世間を混乱させることになるからだ。


先読みの巫女の力は『現実に起こりうることを予知した』のであって、『予知したから実現した』ことになってはいけないのだ。




巫女が登場する時期は不明確である。

次代の先読みの巫女が現れるのは、先代の巫女が亡くなってから十数年以上経過していることが多いようだ。
同じ時代に巫女が二人存在した記録は今のところ無い。
時には100年余り次代の巫女が登場しなかったこともある。


そもそも巫女と認定されるためには、予知を視た後、近隣の教会に申し出る必要がある。
王都にある中央教会で、初代巫女が残したとされる宝玉に触れ、宝玉に光が灯ることを確かめるのだ。

これは王女であり初代の巫女が取り決めたことであった。
『私の後を継ぐ者は、能力の大小にかかわらずこの宝玉に光をともすことが出来るでしょう』
宝玉が光る理由は、未だ解明されていない。

宝玉を光らせた者は王城にて報告したすべての予知が管理され、実現の有無によって巫女として正式に認められるようになる。


これは、たとえ未来を視ても、教会に報告さえしなければ巫女にならずに済むともいえる。


中には表舞台に一切登場しなかったことにより、正式に巫女として認定されていない者もいた。

彼女は『一月後に東の大国から奇襲を受ける』予知を視た旨を手紙にしたためて王都の教会に送ったのだ。
手紙を読んだ教会の人間は、最初は悪戯かと思った。
しかし、細かい描写に、先読みの巫女による予知の可能性があると考え国王に報告した。

国王は手紙を信じることにした。

『悪戯ならばそれで良しとしよう。幸い、いつ起きるものなのか期間が絞り込まれているのだ』



予知は見事に的中し、事前に対策を取ることが出来たためこちらが勝利することができた。
彼女の予知における功績は大きいが、ついに姿を現すことが無かったため、歴史書において彼女は『ナナシの巫女』と称されている。



巫女と認定されても、その後一切先を視た記録がないことがある。
能力が失われた場合もあるだろうが、記録に残るような予知がなかった場合もある。

なにしろ、巫女達のほとんどは視たことをすべて報告しない。
初代巫女の遺した書物にも、『普段視るのは晩ご飯のメニューがわかる程度の小さいことがほとんどだ』と記載されている。
国家の存続に関わるような大きな予知は、そう頻繁に起こるものではない。

また過去にはこんなこともある。
天災により多くの被害が出た時、当時の巫女はこれを予知することが出来なかった。
巫女の能力が失われたのかと思われたが、歴代の巫女の予知を再確認したところ、3代前の巫女が既に予知していた事柄であったことが判明した。
さらに数ヶ月後、能力が失われたと思われた当代の巫女が、新たな災害を予知し、こちらは事前に対策を行ったため被害は最小限に防ぐことができた。
これにより、既に予知されているものは、他の巫女が視ることはないと仮説が立てられている。



この国は、巫女の予知により何度も助けられてきた。
そのため巫女の言葉は王族にとって信ずるべきものとして認識されている。

だが時として予知に振り回され、人生を棒に振る者がいる――。
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