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3 二度目の挑戦
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目が覚めるとそこはロードオブザリングに出てきそうな城の中だった。
「召喚の儀は成りました。勇者よ、どうかあなたの力をこの国の為に役立ててください」
「は?」
「あぁー……」
俺ともう一人の少年の声が重なる。
ただし、少年の方は何も分かってない顔で、俺の方は何もかも分かった顔だ。
したり顔である。
「おかしいですね。私が召喚した勇者は一人のはずですが……」
「いや、恐らくは何かの手違いでしょうね」
宰相らしき老人の台詞を奪ってやった。
「あなたはこの状況を理解しているようですね」
「ええ、恐らくは俺の方が手違いで召喚されたんでしょう。邪魔をするつもりはないので、どうぞ皆さんでごゆっくり話してください。俺の方は邪魔にならないよう別室にでもいますから」
「なるほど……。ええ、私が召喚したのは、確かに彼の方です」
そう言って女王が指したのは、俺ではなく隣にいる少年だった。
当たり前だな。
「しかし、関係のない一般人まで巻き込んでしまったようです」
「え!? じゃあ、このオッサンが巻き込まれたって認識でオーケー?」
「その認識で間違いありません。ここから先は勇者にしか聞かせられない話になりますので、部外者のあなたは退室してください」
ここまでは悪くない流れだなーと思っていたら、騎士の男が「怪しいな」と発した。
「貴様、なぜ自分が勇者ではないと思った」
「ええと……」
「どうした。なぜ素直に話さない。それとも、何か聞かれて困ることでもあるのか?」
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。ただの勘ですし、実際彼の方が勇者だったんだからいいじゃないですか。俺は何も間違ったこと言ってないですよね!?」
「……冷静すぎる。貴様、自分が召喚されることを分かっていたな? 女王陛下の召喚魔法に乗じて王宮に潜入するとは見過ごせん」
騎士の命令に従って、兵士達が殺到してくる。
「暴力に訴えるのはやめてくれ!」
「諦めろよオッサン」
少年に助けを求める気などなかったが、助けてくれる気はなさそうだ。
(こうなったら、アレを使うしかない!)
「停止しろ!」
俺は時間停止のスキルを使った。使い方は初めから分かってた感じだ。鳥が誰に習ったわけでもなく飛び方を知っているように、スキルの使い方は身体が知っていた。なんなく時間停止のスキルは発動し、広間にいた全員の時間が平等に停止する。
「ふう。俺だけは動けるみたいだな」
腕時計を見てみると、ちゃんと時間が止まっている。
しかし、なんだこの感じ……。急速に力が抜けているような感覚がある。
「早めに解除した方がよさそうだな」
謁見の間から逃げる為に扉に向かう。堅く閉じられた両開きの扉を押すが、重すぎてうんともすんとも言わない。これ、開ける時に兵士が数人がかりとかで押すタイプなんじゃないか? 女王を人質に取って開けさせるべきだったか……。
扉を押してるつもりが、気がつくともたれかかっていた。
それに、だんだんと意識もぼやけてる気がする……。
危険を感じた俺はすぐさま時間停止を解除した。
この力、連続してずっと使っていられるような代物ではないらしい。
効果が強力な代わりにデメリットが大きすぎる。
「はぁ……はぁ……きつ……。体調悪い」
「き、貴様、いつの間に……!」
謁見の間にいる連中が驚いてる。
そりゃ、止まった時のなかで動いてたからな。
連中からしてみれば瞬間移動と同じ現象だ。
「ふむ。事情は分からんが動けんようだな」
屈強な騎士がニタリと笑う。
不味い、このままだとまた絞首刑だ!
ここは気を失ってでも時間停止を――ッ!
と、意気込んだはいいが、俺の意識は長くはもたなかった。
数秒程度の時間停止の後、意識が途切れてしまったのだ。
そうして、次に目を覚ますと、そこは牢の中だった。
「女王に対する非礼、その身で贖わせてやるぞ」
二度目の転生人生も長くは続かなかった。
スキル使用のリスクを把握していなかったせいだ。
人質を取るとか、もっと別の使いようもあったはずなのにな……。
「召喚の儀は成りました。勇者よ、どうかあなたの力をこの国の為に役立ててください」
「は?」
「あぁー……」
俺ともう一人の少年の声が重なる。
ただし、少年の方は何も分かってない顔で、俺の方は何もかも分かった顔だ。
したり顔である。
「おかしいですね。私が召喚した勇者は一人のはずですが……」
「いや、恐らくは何かの手違いでしょうね」
宰相らしき老人の台詞を奪ってやった。
「あなたはこの状況を理解しているようですね」
「ええ、恐らくは俺の方が手違いで召喚されたんでしょう。邪魔をするつもりはないので、どうぞ皆さんでごゆっくり話してください。俺の方は邪魔にならないよう別室にでもいますから」
「なるほど……。ええ、私が召喚したのは、確かに彼の方です」
そう言って女王が指したのは、俺ではなく隣にいる少年だった。
当たり前だな。
「しかし、関係のない一般人まで巻き込んでしまったようです」
「え!? じゃあ、このオッサンが巻き込まれたって認識でオーケー?」
「その認識で間違いありません。ここから先は勇者にしか聞かせられない話になりますので、部外者のあなたは退室してください」
ここまでは悪くない流れだなーと思っていたら、騎士の男が「怪しいな」と発した。
「貴様、なぜ自分が勇者ではないと思った」
「ええと……」
「どうした。なぜ素直に話さない。それとも、何か聞かれて困ることでもあるのか?」
「いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。ただの勘ですし、実際彼の方が勇者だったんだからいいじゃないですか。俺は何も間違ったこと言ってないですよね!?」
「……冷静すぎる。貴様、自分が召喚されることを分かっていたな? 女王陛下の召喚魔法に乗じて王宮に潜入するとは見過ごせん」
騎士の命令に従って、兵士達が殺到してくる。
「暴力に訴えるのはやめてくれ!」
「諦めろよオッサン」
少年に助けを求める気などなかったが、助けてくれる気はなさそうだ。
(こうなったら、アレを使うしかない!)
「停止しろ!」
俺は時間停止のスキルを使った。使い方は初めから分かってた感じだ。鳥が誰に習ったわけでもなく飛び方を知っているように、スキルの使い方は身体が知っていた。なんなく時間停止のスキルは発動し、広間にいた全員の時間が平等に停止する。
「ふう。俺だけは動けるみたいだな」
腕時計を見てみると、ちゃんと時間が止まっている。
しかし、なんだこの感じ……。急速に力が抜けているような感覚がある。
「早めに解除した方がよさそうだな」
謁見の間から逃げる為に扉に向かう。堅く閉じられた両開きの扉を押すが、重すぎてうんともすんとも言わない。これ、開ける時に兵士が数人がかりとかで押すタイプなんじゃないか? 女王を人質に取って開けさせるべきだったか……。
扉を押してるつもりが、気がつくともたれかかっていた。
それに、だんだんと意識もぼやけてる気がする……。
危険を感じた俺はすぐさま時間停止を解除した。
この力、連続してずっと使っていられるような代物ではないらしい。
効果が強力な代わりにデメリットが大きすぎる。
「はぁ……はぁ……きつ……。体調悪い」
「き、貴様、いつの間に……!」
謁見の間にいる連中が驚いてる。
そりゃ、止まった時のなかで動いてたからな。
連中からしてみれば瞬間移動と同じ現象だ。
「ふむ。事情は分からんが動けんようだな」
屈強な騎士がニタリと笑う。
不味い、このままだとまた絞首刑だ!
ここは気を失ってでも時間停止を――ッ!
と、意気込んだはいいが、俺の意識は長くはもたなかった。
数秒程度の時間停止の後、意識が途切れてしまったのだ。
そうして、次に目を覚ますと、そこは牢の中だった。
「女王に対する非礼、その身で贖わせてやるぞ」
二度目の転生人生も長くは続かなかった。
スキル使用のリスクを把握していなかったせいだ。
人質を取るとか、もっと別の使いようもあったはずなのにな……。
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