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8 精霊の事情
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「やっと生き残れた……」
貴賓室に通された俺は、柔らかいベッドに倒れて溜息をついた。
客人として扱われるに至るまで、六カ月も拷問され、獄中での死まで経験した。
本当にやっとだ。
やっと、異世界での生活が始まるんだ。
「ありがとう。お陰で命拾いしたよ」
「私に礼は不要です。あなたは私の主人なのですから。ハジメ様は外と内で顔を使い分けられるようですが、私に対しては主人として振る舞うのが正しいです。どこに耳があるとも限りませんし」
確かに彼女の言うとおりだ。
今の俺は『精霊王を使役する魔術師』という立場で、かろうじて首の皮が繋がっている状態だ。
それが、『精霊と対等な魔術師』という評価に変わってしまうと、俺を排除して精霊を手懐けようとする者が出てくる。さっきのユウスケがいい例だ。あいつは俺とアイスの関係性が薄いと見るや、すぐさまアイスとの直接交渉を狙った。アイスが断ってくれたので助かったが、今後はなるべく付け入る隙を見せたくない。その為には、主人としての振る舞いを身につける必要がある。
「主人として振る舞うよう意識するよ。今後ともよろしく」
アイスに手を差し出す。
「こちらこそよろしくお願いします、マスター」
強く握手を返してくれた。
嬉しい反面、アイスは俺に対する期待値がやたら高そうだ。
墓穴を掘らないように注意したいと思う。
「では、さっそく魔法のレッスンを始めましょうか」
アイスが俺の手を取ってきた。
一回り年下の少女が相手だが、アイスは美しすぎる。
突然のことで心臓が跳ねたが、彼女は涼しげな顔を崩さない。
「魔法を覚える方法は簡単です。私がマスターの身体に刻印を刻みます。あとは刻んだ刻印に魔法を登録していくだけです。覚えること自体は簡単ですが、使いこなす為には訓練が必要です。全ての魔法には注ぐべき魔力量というものがあります。これが多すぎれば魔法は暴発しますし、少なければ威力が低くなるか、あるいは発動しなくなります」
「なるほど。覚えた後が大変ということか」
「そうです。また、契約した魔法の位や数によって、精霊に支払う魔力量は変わってきます。マスターは大丈夫だと思いますが、並みの術師であれば精霊と契約する魔法は多くても4つ程度になります」
俺の魔力量は多いみたいだし、契約する魔法の数はあまり気にしなくて良さそうだな。
「アイスは今までどんな人間と契約してきたんだ?」
「精霊王は自ら契約せずとも、眷属から魔力を受け取ることでも力を維持することができます」
「え……。じゃあ今まで契約したことないのか?」
「魔力量の少ない人間だと、私と契約しただけで卒倒してしまいますから。契約分の魔力量を確保できる方など稀ですし、その上、魔法まで契約できる方となると更に絞られます」
「精霊王も大変なんだな。……だったら、いっそのこと魔人と契約するっていうのは――」
「マスター」
底冷えするようなアイスの言葉に背筋が伸びた。
あれ、もしかして地雷踏んだ?
「マスターがこの世界の常識に疎いことは理解しています。ですので、これは今後を見据えた警告になります。私以外の精霊に同じことを言えば、一番肝心な時に契約を破棄され、魔法を全て没収されることでしょう」
「え、それって謀殺なんじゃ……」
「それくらいの失言だと理解してください。我々は女神アイシスによってこの地上に創造された存在です。邪神の眷属に手を貸すなど、絶対にあってはならないことです。母親を裏切るようなものですから」
「そうだったのか。すまなかった」
素直に頭を下げるとアイスの表情が和らいだ。
根に持たれなくて良かった……。
「いえ、知らないのであれば無理もないことです。私がマスターと契約したのは、魔力が欲しかったというのもありますが、人類に力を貸すことで間接的に邪神の眷属を減らせると考えたからです。私も同じ陣営として真剣に魔法を吟味しますので、マスターにもお力添えをいただければと思います」
「ありがとう。こちらこそよろしく頼むよ」
貴賓室に通された俺は、柔らかいベッドに倒れて溜息をついた。
客人として扱われるに至るまで、六カ月も拷問され、獄中での死まで経験した。
本当にやっとだ。
やっと、異世界での生活が始まるんだ。
「ありがとう。お陰で命拾いしたよ」
「私に礼は不要です。あなたは私の主人なのですから。ハジメ様は外と内で顔を使い分けられるようですが、私に対しては主人として振る舞うのが正しいです。どこに耳があるとも限りませんし」
確かに彼女の言うとおりだ。
今の俺は『精霊王を使役する魔術師』という立場で、かろうじて首の皮が繋がっている状態だ。
それが、『精霊と対等な魔術師』という評価に変わってしまうと、俺を排除して精霊を手懐けようとする者が出てくる。さっきのユウスケがいい例だ。あいつは俺とアイスの関係性が薄いと見るや、すぐさまアイスとの直接交渉を狙った。アイスが断ってくれたので助かったが、今後はなるべく付け入る隙を見せたくない。その為には、主人としての振る舞いを身につける必要がある。
「主人として振る舞うよう意識するよ。今後ともよろしく」
アイスに手を差し出す。
「こちらこそよろしくお願いします、マスター」
強く握手を返してくれた。
嬉しい反面、アイスは俺に対する期待値がやたら高そうだ。
墓穴を掘らないように注意したいと思う。
「では、さっそく魔法のレッスンを始めましょうか」
アイスが俺の手を取ってきた。
一回り年下の少女が相手だが、アイスは美しすぎる。
突然のことで心臓が跳ねたが、彼女は涼しげな顔を崩さない。
「魔法を覚える方法は簡単です。私がマスターの身体に刻印を刻みます。あとは刻んだ刻印に魔法を登録していくだけです。覚えること自体は簡単ですが、使いこなす為には訓練が必要です。全ての魔法には注ぐべき魔力量というものがあります。これが多すぎれば魔法は暴発しますし、少なければ威力が低くなるか、あるいは発動しなくなります」
「なるほど。覚えた後が大変ということか」
「そうです。また、契約した魔法の位や数によって、精霊に支払う魔力量は変わってきます。マスターは大丈夫だと思いますが、並みの術師であれば精霊と契約する魔法は多くても4つ程度になります」
俺の魔力量は多いみたいだし、契約する魔法の数はあまり気にしなくて良さそうだな。
「アイスは今までどんな人間と契約してきたんだ?」
「精霊王は自ら契約せずとも、眷属から魔力を受け取ることでも力を維持することができます」
「え……。じゃあ今まで契約したことないのか?」
「魔力量の少ない人間だと、私と契約しただけで卒倒してしまいますから。契約分の魔力量を確保できる方など稀ですし、その上、魔法まで契約できる方となると更に絞られます」
「精霊王も大変なんだな。……だったら、いっそのこと魔人と契約するっていうのは――」
「マスター」
底冷えするようなアイスの言葉に背筋が伸びた。
あれ、もしかして地雷踏んだ?
「マスターがこの世界の常識に疎いことは理解しています。ですので、これは今後を見据えた警告になります。私以外の精霊に同じことを言えば、一番肝心な時に契約を破棄され、魔法を全て没収されることでしょう」
「え、それって謀殺なんじゃ……」
「それくらいの失言だと理解してください。我々は女神アイシスによってこの地上に創造された存在です。邪神の眷属に手を貸すなど、絶対にあってはならないことです。母親を裏切るようなものですから」
「そうだったのか。すまなかった」
素直に頭を下げるとアイスの表情が和らいだ。
根に持たれなくて良かった……。
「いえ、知らないのであれば無理もないことです。私がマスターと契約したのは、魔力が欲しかったというのもありますが、人類に力を貸すことで間接的に邪神の眷属を減らせると考えたからです。私も同じ陣営として真剣に魔法を吟味しますので、マスターにもお力添えをいただければと思います」
「ありがとう。こちらこそよろしく頼むよ」
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