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「おいおい、こりゃ何の騒ぎだ?」
「なんでも召喚された勇者様と魔人を倒した英雄が戦うらしいですよ。こんな戦い滅多に見れないんで、不謹慎ですけどちょっと楽しみですよね」

 往来に人だかりができている。

「アイス、フレア、悪いけど……」
「大丈夫です。街の人達を巻き込まないように結界を張ります」
「外のことは気にせず存分にやりなさい」

 ドーム状に二重の結界が張られる。

(感知以外にもこんな結界があるんだな)

「では私の合図で開始とさせていただこう」

 結界の外から女騎士が声を張った。

「これより、勇者と英雄の一騎打ちを行う! これは互いに誇りと女を賭けた負けられない戦いだ! 勝者は全てを手にし、敗者は全てを失う! ユウスケ、ハジメ、それぞれ剣を抜け!」

 そう言われても俺は元々剣を持たない。
 アクアランスという変幻自在の武器を生成して構えた。
 ユウスケが構えるのは、もちろん聖剣グランだ。
 白い柄の美麗な剣を抜いたユウスケは、それを高々と掲げた。

「決闘始め!」

 決闘が始まると同時、ユウスケの存在が蜃気楼のように霧散した。
 とっさにアイスサークルを使い、奴の居場所を探る。
 背後に気配を感じた俺は、振り向きざまにアイスランスを突き入れた。

「へえ……縮地を見せるのは初めてなんだけどなぁ。これをかわせるのかよ」

 ユウスケが涼しげに聖剣で槍を弾く。
 そのままステップで後退した。

 俺は間髪入れずに槍を投擲する。俺が放った槍は無数のウォーターカッターに変形し、ユウスケを切り裂こうとする。だが、全て見えているかのようにユウスケはかわしてみせた。

「全部見えちまってるんだよなぁ」
「アイスコフィン」

 俺を中心に冷気が広がっていく。
 触れたものを瞬く間に凍結させる、絶対零度の術だ。

「それも無駄だっての」

 ユウスケが聖剣を一閃する。
 それだけで俺の魔法が消滅していた。

「なんだその顔。格下だと思ってた奴に追い詰められて悔しいか?」

 俺が想像している以上にユウスケは怪物だった。
 嫌になる世界だな。
 どれだけ強くなっても上には上がいるということか。

「精霊を譲るなら殺しはしねえよ。どうするオッサン」

 フレアとアイスを見つめる。
 彼女達は俺の勝利を信じてくれている。
 どれだけ俺が追い詰められていても、最後には必ず勝つと信じているんだ。

「ユウスケ」
「何だよ」

 俺も覚悟を決めよう……。

「死なせたらごめんな」
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