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決着
私にキスをしていたアルトの腕を掴む。
気づくと身体が震えていた。
正直、行かないでほしい……。
変態なアルトに限って……という思いはあるけど、完全に信頼するには、ティーナから奪われた時のことが鮮明に脳裏に焼きつきすぎている。
「私、殿方を満足させるテクニックには詳しいの。ジェシカ姉様よりもきっと満足していただけるわ」
アルトが私の肩に手を乗せて。
ティーナの元へ向かう。
ちょ……えー。
(やっぱり、私じゃ妹には叶わなかったかな)
愛を囁いてくれたアルトへの想いが募って、少し胸が痛くなる。
アルトの裏切り者め……。もう、許さないからな。
彼の背中を睨む。
アルトは私をちらって見ると、小馬鹿にしたように微笑んだ。
あれ? もしかして最初から、お遊びだった?
何それ、いい気になってた私、すっごい恥ずかしい奴じゃん!
いっぱいキスしてきたのも、愛してるって言ったのも、全部ウソだった?
アルトって詐欺師だったんだなぁ。
人間不信の私を完全に騙すとか、見直したよアルト。
「ふっ……」
なんて、強がっても。
悔しいよ……。
やっと、私だけを見てくれる人が現れたと思ったのに。
こんなのってないじゃん……。
「アルト……」
ひどい。嘘つき。アルトは詐欺師だ。
ティーナに近づいた彼が、彼女の顎に手を添えて……。
(そんな女にキスしないでよ!)
「いや、ないな」ってあくどい笑みを浮かべた。
「あの、アルト様?」
「そういうわけだ。ごめんね」
ティーナの元から戻ってきたアルトが、私を抱き上げて胸元にキスをする。
羞恥で顔を真っ赤にする私。
「戻ってくるならちゃんと教えてよ、バカ」
「やっと敬語が取れてくれたな」
「……バカ」
戻ってきてくれたアルトがねだるので、キスで応じる。
瞬間、レンが「この外道がぁ! ジェシカを汚すな!」ってアルトに斬りかかる……! え、ウソでしょ? 思わず目を瞑って……。
再び瞼を開くと、ノックアウトされたのはレンの方だった。
肺のあたりを鞘で突かれて、息も出来なくなってる。
「うぐぉぉぉ」
「不意打ちか。昔は兄さんの方が強かったのにな」
起き上がってこないレンの向こうで、ティーナが信じられないモノを見るようにアルトを見つめている。
「私、ジェシカ姉様に負けたのかしら?」
「どう考えたって負け犬は君だろう」
アルトが呆れたようにティーナに答える。
「君はジェシカに負けていたから、彼女のお下がりで満足していたに過ぎない。長い人生だ。負ける日があっても構わないが、最初から勝とうとすらしていなかった君が、勝者になる日なんてこないよ」
「違う……。私はジェシカ姉様に勝っていたのよ。だって、お姉様はあんなにも悔しがっていて」
「君の中では、そういうことになっていたんだな。僕はジェシカを愛しているし、レンもそうだったらしい。さて、君は誰に愛されていたんだ? ティーナ・グレイス嬢」
「……残念だわ。アルトは私の敵になるのね」
レイン団長が現れ、レンを回収していく。
アルトは上機嫌で私を抱き上げた。
「先ほどは泣かせてすまなかった。僕の心は君と共にあるよ」
「……ひどい詐欺師っぷりだったね」
「辛い思いをさせてすまない。君がそんなに僕のことを大事に思ってくれてるとは思わなかったから」
アルトが笑顔で勝ち誇ってるな。
私はしおらしくアルトの胸におでこをぶつけると、何も言わずに泣いているフリをした。
途端、勝利の余韻など忘れて、慌ててあやしてくれるアルトだ。
私に勝とうなんて十年くらい早いんだから。
「もう、堪らないな! 好きだよジェシカ!」
堪らないらしかった。
気づくと身体が震えていた。
正直、行かないでほしい……。
変態なアルトに限って……という思いはあるけど、完全に信頼するには、ティーナから奪われた時のことが鮮明に脳裏に焼きつきすぎている。
「私、殿方を満足させるテクニックには詳しいの。ジェシカ姉様よりもきっと満足していただけるわ」
アルトが私の肩に手を乗せて。
ティーナの元へ向かう。
ちょ……えー。
(やっぱり、私じゃ妹には叶わなかったかな)
愛を囁いてくれたアルトへの想いが募って、少し胸が痛くなる。
アルトの裏切り者め……。もう、許さないからな。
彼の背中を睨む。
アルトは私をちらって見ると、小馬鹿にしたように微笑んだ。
あれ? もしかして最初から、お遊びだった?
何それ、いい気になってた私、すっごい恥ずかしい奴じゃん!
いっぱいキスしてきたのも、愛してるって言ったのも、全部ウソだった?
アルトって詐欺師だったんだなぁ。
人間不信の私を完全に騙すとか、見直したよアルト。
「ふっ……」
なんて、強がっても。
悔しいよ……。
やっと、私だけを見てくれる人が現れたと思ったのに。
こんなのってないじゃん……。
「アルト……」
ひどい。嘘つき。アルトは詐欺師だ。
ティーナに近づいた彼が、彼女の顎に手を添えて……。
(そんな女にキスしないでよ!)
「いや、ないな」ってあくどい笑みを浮かべた。
「あの、アルト様?」
「そういうわけだ。ごめんね」
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羞恥で顔を真っ赤にする私。
「戻ってくるならちゃんと教えてよ、バカ」
「やっと敬語が取れてくれたな」
「……バカ」
戻ってきてくれたアルトがねだるので、キスで応じる。
瞬間、レンが「この外道がぁ! ジェシカを汚すな!」ってアルトに斬りかかる……! え、ウソでしょ? 思わず目を瞑って……。
再び瞼を開くと、ノックアウトされたのはレンの方だった。
肺のあたりを鞘で突かれて、息も出来なくなってる。
「うぐぉぉぉ」
「不意打ちか。昔は兄さんの方が強かったのにな」
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「私、ジェシカ姉様に負けたのかしら?」
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「君はジェシカに負けていたから、彼女のお下がりで満足していたに過ぎない。長い人生だ。負ける日があっても構わないが、最初から勝とうとすらしていなかった君が、勝者になる日なんてこないよ」
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アルトが笑顔で勝ち誇ってるな。
私はしおらしくアルトの胸におでこをぶつけると、何も言わずに泣いているフリをした。
途端、勝利の余韻など忘れて、慌ててあやしてくれるアルトだ。
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「もう、堪らないな! 好きだよジェシカ!」
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