風花雪月

木苺

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四色の少女

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「来たんだね青斗君。」
屋上に来た俺に話しかけてきたのは右から桃、白、黄、黄緑と、四色の髪色をした知らないやつ。
確かここには流れ星きらら…「風花雪月」が来ているはずなんだが。
知らないやつは言葉を続ける。
「あれぇ?忘れちゃったの?きららだよ、きーらら。これも変装のたくさんあるうちの一つの姿だよ。素性を知られたくないからね。」
やっぱり、きららも変装のうちの一つだったか…クソッ「風花雪月」が目の前にいるのに、捕まえられないなんて…。
戸籍の件も揺さぶりだったし…。「風花雪月」は証拠を残さねぇ…当然指紋もない。落ち着け、必ずヒントはあるはず。
「待たせてすまない。」
「風花雪月」はへらへらと笑う。
「あぁいいよ♪何か考えていたようだし…ネ。」
察しがいい…こちらのことは全部ばれてるかもしれないな…。
「ところで聞くが、何故おまえは日常的に変装をしているんだ?」
俺に会う時はするとしても、日常的にする必要はないはずなのに。本当の顔を誰も知らないから。
「風花雪月」の顔が少しゆがんだような気がした。それは一瞬だったから、気のせいかもしれないけど。
「身をくらますためかなぁ?私は風花雪月みたいな子ダシ。」
風花雪月…確か、自然の中の美しい風景、っていう意味だったな…まさか、自分はきれいな風景のよう、って言いたいのか?
「とんだ自己中ヤローだな。」
こんなことを言われても、風花雪月はへらへらと笑っている。
「そうかなぁ?結構、風花雪月って、一般的には言われたら嫌なことだと思うよ。」
風花雪月が嫌?美しいと言われているようなものだぞ……そういえば。
「お前はなんで俺を屋上に呼んだんだ?」
いろいろ気になって、これを聞いてなかった。
「あー…君って探偵なんだよね。」
「そうだが。」
「風花雪月」は質問で返してきた。へらへら笑うのをやめてまっすぐこっちを見てくる。
「依頼…というか、取引のほうが正しいかな…」
何をやろうとしているんだ?
「君は私を捕まえたい。だけど証拠がない。ここで私はヒントをあげる。証拠も手に入るかもしれないし、何もないよりはましだと思うんだ~。君にはいい取引だと思うんだけど、どう?」
取引にしてはあちら側のメリットが少ない。ゲーム感覚でこんなことをやってるのか?それとも俺をなめているのだろうか。こんなの、受けないわけがない!!
「あぁ、受けるさ…絶対に捕まえてやるよ!!」
俺は叫ぶ。「風花雪月」はまた微笑んだ。
「ヒントをもらうときは屋上に来てね。」
屋上の、秘密の取引。
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