乙女ゲームのモブに転生したので、幸せになろうと思います。

木苺

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幸せ

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「お母さま!わたしお母さまの似顔絵を描いたの!あげるね!」
「まぁありがとうファンシー。」
「えへへ~」
母親の前でファンシー…ファンシー・フェリーチェは可愛らしい笑顔で笑う。母親と談笑しながら歩いていると、階段でファンシーは躓いて落ち、気絶してしまった。
「ファンシー!?ファンシー!!貴方!医者を呼んできて!ファンシー…起きて…」
母親は使用人に医者を呼ばせ、心配そうな顔をしてファンシーの顔を覗き込む。
「ファンシー…大丈夫かしら…」

ん…ここどこ?
わたしは写真がながれるまっしろの空間で目を覚ました。
えぇ?この写真…
わたしが写真に触れた瞬間、あたまに映像がうかんだ。まるでわすれていた記憶を掘り起こしていたみたいに。
『お母さぁ~ん、行ってきま~す!』
女の子はドアをあけてともだちと合流した。
『学校行きたくなぁい…』
『あはは…まぁまぁ…』
女の子はともだちをなだめる。
『それでさぁ~』
ともだちが他のことを喋りだしたとき、女の子は横の道路に黒猫がいるのに気付いた。黒猫がトラックに轢かれそうになったとき、助けようとした女の子は――
黒猫の赤い目が見つめる。〝私〟を。

そうだ…私は女子高生。黒猫を助けようとしてトラックに轢かれ死んだ日本人…和華 朱花。
私の意識はそこで途切れた。

パチリ
私の部屋で私は目を覚ました。
そっか…私、転生しちゃったわけか…。
「ファンシー!!」
お母様が入ってきた。
小さい子って、呂律が回らないよね…
「お母さま…?」
これくらいで、良いのかな?
「えぇ。貴方、階段から落ちて気を失ったのよ。大丈夫?明日のパーティ―には行ける?行かなくてもいいわよ?」
お母様が心配そうに言ってくる。
そう言えば明日、王子の四歳パーティーがあるんだった…。

その夜、私は考えた。
私の名前はファンシー・フェリーチェ。公爵家令嬢。王子と同じ四歳。はぁ。…どうやって生きていこう…

王子の誕生日パーティー、城でのことだった。
ハァ…気が重い…というか、前の私の服のセンス悪ッ
フリルとリボンがたくさんついたロリータな服。私シンプルな服が好きなのに…今度お母様に頼んでみよっと。
と、王様が出てきた。
「皆、今日は私の息子の誕生日に来てくれてありがとう。」
王が挨拶し、その後に王子が出てきた。
「皆さんこんにちは。ルミエール・ダークネスです。今日は僕の誕生日パーティーに来てくださってありがとうございます。…」
なんで…!?
私は慌てた。
何故なら、彼は私が好きだった乙女ゲーム、「君と甘い恋を」の攻略する相手の一人、ルミエール・ダークネスだったのだ。
「君と甘い恋を」略して君恋は当時大ヒットした乙女ゲームで、私もやっていた。…戦闘部分もちゃんとしていて面白い乙女ゲームだった。エンドが特徴的で、最後の魔王との戦いで世界が滅び、攻略相手達と主人公のリーベ・サンライトだけが生き残る。実は倒したと思っていた魔王が生きていて「生贄をこの中から捧げよ。さすれば残りは生かしてやろう」と言ってくる。戦おうと思っても、皆は瀕死―
ここでどんな選択をするかでハッピーエンドになるかバッドエンドになるかが決まるんだけど、最後の魔王との戦いで世界が滅ぶのは絶対に避けられない―そんなゲームだった。
…ハッ
しまった、君恋の紹介が長すぎた。ん~でも、小説とかで悪役令嬢に転生したとかはよく聞くけど、ファンシー・フェリーチェは聞いたことないなぁ…
…待って、世界が滅ぶってことは…
私達モブも死んじゃうってとだよね!?数年後!?えぇ前世でも女子高生で死んだのに~!!やだ!!死にたくない!!えっとどうにかして生き残る方法は―
主要人物は生き残るんだよね。例えば目の前のルミエールとか。
だったら―主要人物になればいいんじゃない?
ん~でも主要人物か…小説で悪役令嬢がヒロイン化は見たことあるけど、王子とかに好かれるっていう不確定な要素は将来絶対後悔するから、もっと確実的なやつがいいよね。えっと、えっと…
悲劇の…ヒロイン?
そう言えば小説の主人公って大体辛い過去持ってるよね…
…そうだ。私も辛い過去自分で作っちゃおう。もちろん嘘はつかない。辛い過去を、事実にしてやろう。
誰よりもすごい悲劇の過去を作っちゃえば選ばれるだろう。
私、乙女ゲームのモブに転生したので幸せになろうと思います!!
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