乙女ゲームのモブに転生したので、幸せになろうと思います。

木苺

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倖せ

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そして私はついに、ヒロインと出会ったのだ!
本当はガッツポーズをして「よっしゃァァァァ!!」と叫びたいところだが、我慢しよう。
「…貴方、いつもここに居るよね?図書館好きなの?」
気付いてなかったけど、居たのか…。
輝くような金髪に、大きな垂れ目…。これぞ、ヒロインっていう優しい感じ。…うん。原作と変わらない正真正銘のリーベ・サンライトだ。
確かリーベは平民で、レアな光魔法を持ってたとかで入学したようだ。よくある王道ストーリー。私も一応平民だが、なんか闇魔法を使えるから入学しろとか魔力測定のおじさんが言っていた。貴族ばかりのメモリー学園で、少ない平民の彼女は、同じ平民の私に親近感を抱いているのだろう。
…じゃあ…始めようか。私はニコッと笑う。
「はい。好きですよ。」
「へぇ~。私も本好きなんだ。私はね、冒険ものが好きなの!!」
「…そうですか。」
この日の会話はこれだけだった。ただ、次の日、次の人、私とヒロインは少しづつ仲良くなっていった。
「おすすめの本ってある?」
「はい!!えっとですね、この冒険ものはいいですよ!!」
ヒロインと会うときに、ほかの攻略対象にも会った。
「…お前には渡さないからな。」
「はい…?」
金髪隻眼のイケメン王子に睨まれたのはいい思い出。そしてヒロインと教室で話すくらいに仲良くなった時、それは急に訪れた。それは、ほかの攻略対象とヒロインと、洞窟に行った時だった。
「うわぁ暗いね。」
ヒロインがライトで床を照らす。その時だった。
スライムが私めがけて飛んできたのだ。。スライムは柔らかい物ではなく、刃物のような爪で襲ってくる、中ボス程度の敵だ。
勿論、当たったら死ぬ。
急だったので私が反応できないでいたら、ヒロインが私の前に出てきて、私を庇ってくれた。
空へと舞う鮮血の雨、揺れるヒロインの体。私としては大いに感謝したいところだが、私の性格上、このチャンスを逃すことはできない。私は一瞬で怯えたような顔を作り、腰を抜かした。
私の過去の悲劇から、この〝俺〟は、アミティエ・イポクリジーは、平気でいれるわけがないのだ。アミティエ・イポクリジーは、リーベ・サンライトに、名前すら教えていない。要は、まだ戻れるということ。
「おい、何してんだよ!!」
攻略対象のバーンに怒鳴られ、アミティエ・イポクリジーは、我に返る。
「は、はい!!」
私とみんなで、リーベを学校の保健室に連れていく。みんな必死で腰が抜けていたのに立っている私に気づかないようだ。
保健室に運び込んだら、私はそっとドアから出た。アミティエ・イポクリジーは、後悔している。ヒロイン…彼女、リーベと仲良くなったことを。自分といて死んでいない人など、居るはずがないのに。
翌日、回復したヒロインに廊下で挨拶されそうになった私は、無表情で通り過ぎた。
アミティエ・イポクリジーは、全てを拒絶している。
ほら、心配で仕方ないよね…?可愛くて、良い子のヒロインちゃん。
ねぇ、私を助けてよ。
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