乙女ゲームのモブに転生したので、幸せになろうと思います。

木苺

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シアわせ

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私はいつものように図書館で本を読んでいた。
昨日ヒロインとケンカしたが、まぁ次の機会に〝お互い悪かった〟と、バカみたいな和解をすればいいだろう。和解の時期は私が見極めて自分から行くとして…。
この数日間なにしよ。まぁ特に準備することもないし…。ゆったり過ごすか。そう思って私が欠伸をすると、突然図書館の扉が開いた。
「…」
珍しいことでもないので私は本を見ていた。すると、足音が私のほうに近づいてきた。
なんだろうか。クラスの中で近寄らないでオーラを出している私に用があるものなどいくら頑張っても思い出せやしない。私は今日風邪でも引いたのか体が熱いのだ。なるべく放っておいてほしいものだが。
「ねぇ」
鈴が鳴るような澄んだ声が、私の背後から聞こえてきた。これは間違いなくヒロインの声。ヒロインは私と昨日喧嘩した筈なのだが。
「なぁ、お前もうじうじしてねぇでりーべと仲直りしろよ。」
この声は攻略対象の一人のバーンの声。
「そうですよ。」
この声は王子のルミエール。
「ねぇ、早く仲直りしなよ。」
この声は優しいツァールト。
「僕は貴方なんかにかまう暇などないのですよ。」
この声はそっぽを向いたエテュード。
四人そろって何しにここへ。どう見ても私に用しかないじゃないか。私は本から顔を上げて後ろを向いた。
「なんですか?僕に用があるのでしょう。早く言ってくれませんか?僕も暇じゃないんです。」
適当に引き離しておこう。まだ和解をするのは早すぎる。ヒロインは言いにくそうにうじうじと指を絡ませている。
「…用がないならどこか行ってください。僕が関わらないでといったのを忘れたんですか。」
早くどこかへ行ってくれないだろうか。
「…」
ヒロインは私に近づいてきた。何?何をするつもりで
「わっ!?」
ヒロインは突然私の手をつかんで引っ張った。その力で、私は立つことになってしまった。ヒロイン意外と力が強い。
「…やっと私の目を見てくれたね」
まぁ演出のためにわざと目をそらしていたが…。そんなに露骨だったかな?
私がそんなことを思っていたら、ヒロインは私の手を持ってズカズカと進んでいった。後ろから三人もついてくる。
「ちょっ、なにして…」
何をするつもり?私は何もした覚えはない、昔のことがばれた?私の正体が?
いや、怪しまれないようにポーカーフェイスを保っておかなければ。私は熱い体と来たる不安に蝕まれながらできているかわからないポーカーフェイスを浮かべた。
私はヒロインと攻略対象に掴まれて学園の庭園へと来た。赤いバラが美しく咲き誇っている。今日は爽やかな強い風が吹いていて、花びらが空に舞っていた。
「何の用ですか?此処まで…連れてきて。」
何とか表面に出さずにいるが、正直自分でもかなりギリギリだ。
なんかこう…ヒロインに見つめられた時の緊張感がすごい。なぜか…心の底の、私じゃない私を見られているかのような、そんな感じがする。
「…ねぇ、なんでそんなに自分を偽っているの?」
「な、にいって…」
気持ち悪い
「なにって、本当のことを言っているだけ」
「偽ってる…?そんな、ことは、僕は…」
気持ち悪い
「偽っていると、少なくとも私はそう感じた。ねぇ、何がそこまで貴方にさせているの?自分の気持ちを隠して、自分の全てを偽って…。私は、貴方が何をしたいのかわからないの。ねぇ、貴方は…貴方は、自分までも欺いてそして、何がしたかったの?」
「…ッ」
きもち、わるい、きもちわるい、きもちわるい!!私は自分の声がきらい、自分の顔がきらい、自分の態度がきらい、自分の…全てが、きらい。きらいきらいきらいきらい大嫌い!!!こんなの…私じゃない!!
私はこんなに愛想がよくて完璧で、魔法も強い人間じゃない!!!ねぇ、みてよ、私の本当の姿を。
…あぁ、体が熱い。熱い熱いあついあついあついアツイアツイアツイアツイアツイアツイアツイ…もう、全部、いや。
なら…こわしてしまえ。今までもそうしてきたんだから。
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