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4話 ストーカー、覚醒する。4
しおりを挟むそれから吉崎 拓哉は、郵便受け覗き、ゴミ漁りに加えて、在宅時には壁に耳をひっつけて隣の物音に聞き耳を立てるようになった。
ところが、壁が思ったよりも厚いのか、ろくな音が聞こえてこない。
それでも時たま、うっすらと喘ぎ声のようなものが断続的に聞こえるときがある。
真っ昼間だ。
そのうっすらとした声とも音ともつかないものを聞いた瞬間、吉崎 拓哉は酷く興奮した。
大抵の人間が昼飯を食っているタイミングで、ジュリアは隣の部屋でセックスをしている。
あのふわふわした茶髪が、隣の部屋で汗をかきながら揺れて、湿っているのだ。
吉崎 拓哉は、たった一度見ただけのジュリアの顔を、まるで写真にでも収めたかのように鮮明に覚えていた。
吉崎 拓哉はその状況を俯瞰で想像する。
みんなが飯を食っている。
ジュリアはセックスをしている。
吉崎 拓哉はそれを、壁に耳をつけて盗み聞きしている。
こらえようのない興奮に、吉崎 拓哉は突っ立ったまま壁に向かってマスターベーションをした。
荒い呼吸を繰り返し、ティッシュが必要なタイミングで少しだけ我に返った。
おかげで壁は汚さずに済んだ。
それからというもの、吉崎 拓哉はもう隣の部屋が気になって気になって仕方がなくなっていた。
その頃にはもうゴミ漁りも常習化しており、ジュリアのありとあらゆる生活が手に取るかのごとく分かるようになっていた。
ジュリアは自炊をしない。
いつもコンビニ弁当を買ってくるか、外食で済ませているようだ。
好きな飲み物はペットボトルのお茶。
煙草は吸わない。
酒は飲む。
セックスの頻度には波がある。
そのほか使っている洗濯洗剤の種類、シャンプーや洗顔の種類、好きなファッションブランド。
行きつけは吉崎 拓哉のバイト先とは違う、マンションから一番近いコンビニであるということも。
ありとあらゆる生活習慣を覗くことができた。
それだけでは飽き足らず、吉崎 拓哉は常に周りの物音を聞いて生活するようになっていた。
そして気づいたのだ。
ジュリアは、近所のコンビニに行くときだけは、玄関の鍵をかけないということに。
悪いことをしようとしているのは分かっている。
だが気づいてしまったからには、どうしても確かめたい。
吉崎 拓哉は、隣の302号室の玄関が開閉し、鍵をかける音が聞こえなかったタイミングを待っていた。
すたすたすた、と、いつものようにジュリアの足音が向こう側へ遠くなっていく。
ジュリアがコンビニへ向かってから戻ってくるまでは、いつも大体10分程度。
吉崎 拓哉はたっぷり3分ほど待ってから、意を決して自分の部屋の玄関を開けた。
顔を出すと共用通路には誰もいない。
しめた、とばかりに、吉崎 拓哉はこっそりと自分の部屋から出て、隣のジュリアの部屋の前に立った。
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