あの空に届くまで

ねこ

文字の大きさ
3 / 13

皇道八武天~後編~

しおりを挟む
「とりあえず4人集まった」
最初に切り出したのは快晴だ。
日も暮れてきた頃、4人は詩音の両親が経営している喫茶店でケーキセットを頬張っていた。
「なんか、個性強すぎて大変だったんですけど」
亜瑠香が特大パフェを平らげながら長スプーンで快晴を指しながらぶつぶつ言ってる。
大地が口を開く。
「でも、とりあえず4人集まった訳だろ?」
「そうですね、聞いた限りではかなり他の人も個性強いみたいですし」
クラシックが流れる店内では時間すらも止まってしまう程穏やかだ。
「私なんて事件に巻き込まれついでに見つけたみたいなものだし.....」
詩音がため息交じりに息をつく。
カランカラン。
「いらっしゃいませ」
詩音の父さんがコーヒーをかき混ぜながら言う。
「いつものな」
聞き覚えのある声。古斗だ。
「古斗さん!」
4人はほぼ同時に声を発した。
「順調みたいだな。あとたった3人だ。」
古斗は出てきたカプチーノに砂糖を四個入れ、コーヒー風味の砂糖をのどの奥に流し込んだ。
「簡単にいわないでくださいよ。せめてヒントくらい」
快晴は疲れ気味の声音で愚痴を吐き捨てた。
「まぁ、期限はねぇからな。ゆっくり探せや。
あえてヒントを与えるなら快晴、お前のすぐそばにいるな」
古斗はそう言うとカウンターに千円をおいて喫茶店を後にした。
亜瑠香がコーヒー風味の砂糖をまじまじと見ている。
「相変わらず、自由な人ですね」
詩音も疲れ気味の声音で言った。
「快晴。」
「どうした?ラギア」
『俺は強くなれるのか?』
快晴は口をつぐんでしまった。わからない。わからないけど今はこれしかできない。
「なれる。きっと」
『そうか、わかった。』
何かとラギアにも負担をかけてしまった。申し訳なく思っている。
快晴達は喫茶店を後にした。
 
夜、快晴は自分の部屋でベットに横たわって考えた。
「そばにいる....ものか」
「おい!快晴!お腹減った!」
喜一が飛び乗ってきた。
にゃーにゃー鳴いておねだりを繰り返す。
快晴は喜一を抱き上げ、首もとに顔を埋めた。
「快晴?」
喜一がきょとんとこっちを見る。
「なぁ、喜一。僕は強くなれるかな?」
「よくわかんない。」
「だよな」
快晴はもう一度喜一を抱きしめた。
「苦しい」
「もうちょい」
 
今日は土曜日だ。
町は家族連れで溢れかえり、月に一度他国の飛行艇が貿易の為にこの島に来る。見たこともないような綺麗な手鏡や食べ物なんかを運んでくる。港に何か手がかりがないかと踏んだ
亜瑠香の提案で港を訪れた一行。半ば亜瑠香のわがままだけど。
鴎が飛び交い、港は人々で賑わう。髭を生やした大柄の男や貴婦人が飛行艇から降りてくる。
「ねぇねぇ!快晴君これ見て!」
詩音が珍しく快晴に声をかける。
「どうした?」
見ると、ネコ型のブローチが並んでいる。
「お嬢さん、気に入ったのかい?」
「はい。あっ!ごめんなさい、つい。」
「いいよ!サービスだ。
持っていきな!。」
そう言うとおじさんは詩音にブローチを手渡した。
「ありがとうございます!!!」
詩音の目が輝いた。快晴がブローチを褒めた。
「似合ってるよ」
詩音は顔を真っ赤にした。
「快晴快晴快晴快晴快晴快晴!」
亜瑠香が快晴の手をとり空の上を指さす。
「あれ、人じゃない?今、大地さんが『飛翔剣』で見に行ってくれてるけど。』
 
「きゃはははははは!」
大地は奇声を発している女性のそばに近寄っていった。大地の『飛翔剣(ドラグニル)』は対空性能に長けているため、空を飛べる。
「ん~~?だぁれ?」
奇抜な服装をした女性はスケボーに乗って滑走していた。
「こんなところでなにしてんだ?あんた」
大地は少し苛立っていた。先ほど、女子達にもみくちゃにされ、機嫌が悪い。
「はぁー!?何あんた?
あたしの邪魔しないでくれるぅ?」
この話し方が機嫌の悪い大地の導火線の火を増加させた。
「いらつく」
「同感よ」
次の瞬間戦闘が始まった。
「トライアンフ!」
ゴスロリガールの靴が羽を生やした靴に変化した。
「この野郎!」
大地が突っ込んでいった。しかし、ひらりと
かわされ強烈な踵落としを食らった。

「ぐっ!くそ」

大地は猛スピードで海面に叩きつけられた。
「口先ばっかぁ。きゃはははは」
「なめんなよ!」
大地が再び空に跳び上がって向かっていく。

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」
そう言うとゴスロリガールは高速で回転し始め、竜巻を巻き起こした。
大地は風圧に吹き飛ばされ、貿易艇に衝突した。
口に溜まった血を吐き出し、空を睨んだ。
竜巻は雲を巻き込み、軽い嵐を起こした。
「きゃははははははは!
全部全部全部吹き飛ばすんだから!」
さすがにやばいな
「そこまでだ。」
古斗が港の防波堤に立っていた。
「うっ!古斗。くっ、分かったわよ!」
ゴスロリガールは竜巻を止め、地上に降りてきた。大地は飛行艇から降りて、快晴達の元へ向かう。
「こいつは、大河内有栖。皇道八武天の一人。
天馬の通り名でとおってる。」
「あーあ。つまんないわね!」
有栖はどこかへ行ってしまった。
「そんで、こっちが皇道八武天の一人、大食いの異名を持つ森山静歌だ。」
古斗の後ろにはグラマラスな体型の美女が立っていた。
亜瑠香の目が光った。
「ホルスタインハマッサツスル。」
無数の蜻蛉を放った。
「おい!亜瑠香!」
快晴が仲裁にかかるが古斗が目で制する。
「あらぁ?困った子ねぇ
ガブリ様、お願い」
巨大なじょうろの先から巨大な黒い塊が現れ口を開けた。亜瑠香の蜻蛉は口の中に吸い込まれた。
「ぐや、ぐやじぃ ぐすん」
亜瑠香は泣き崩れた。
「ふふっ」
静歌は口角をあげた。
あと一人。あと一人だ。
 
「ただいま」
「おかえり~」
和尚の間の抜けたお帰りが聞こえた。快晴は手早靴を脱ぎ、階段を上り、自分の部屋に入った。
「快晴お帰りー」
喜一が無愛想に出迎える。いつもの喜一らしくないな。
「どうした?喜一」
「なんでもない。」
あぁ、いつもの事だ。よく野良猫と喧嘩していじけて帰ってくる。
「また、タマと喧嘩したのか?」
喜一は首を横に振る
「じゃあ、ミケか?」
まだ首を横に振る。
「まぁ、いいや。ちゃんと飯は食えよなー」
喜一は深く考え込んだが常に上がっている口角のせいでおかしく映った。 
「なぁ!喜一。お前なんか隠してないか?」
「そっ、そんなわけ」
「バレバレだぞ?」
「うっっ」
快晴が喜一の首根っこを掴みあげて問い詰める。
「離せー!」
喜一は暴れている。手足をばたつかせて懸命にもがいている。
「はな、離せってば。離.....せ!!」
快晴に喜一が噛み付いた。
「ぬわっ!」
手を離してしまった。
喜一は低く唸っている。
「怒るなって。悪かったよ」
「なあ、快晴。これから言う秘密を聞いても追い出したりしない?」
喜一は珍しく真剣な表情を見せた。
「当たり前だろ」
「実は快晴達が探していた皇道八武天の最後の一人は俺なんだよ。」
何を言っているのだこの猫は。
「喜一。なに冗談」
「冗談じゃない!!」
「えっ?」
喜一の目には出るはずのない涙が溜まっていた。
「だって、だっ 。もじ、最後の一人だってごどいっだらいままでいっでながっだがらうぞづきだっておもわれるどおもっでいっだらおいだざれるどおもっで」
喜一は喜一なりにきをつかって暮れたのだろう。
喜一が来たあの日もこんな雨の日だった。 快晴が帰り道歩いていると血まみれで呼吸の浅かった瀕死の喜一を見つけて、すぐに抱き抱えて神社に持って帰った。和尚も驚いていたけど看病して神社においてくれた。
「お前のことを嫌いになったりなんかしないし、追い出したりもしない」
快晴は地面に突っ伏して泣いている喜一の頭を撫でた。
「うっ、ひっく。」
気付くと快晴もしゃくり上げて泣いていた。
 
翌日、工事現場屋上昨日の雨の後だからからっからに晴れている。

「全員揃ったな!よくやった!合格だ。」
古斗がO.K.サインを出して言った。
4人は顔を見合わせて喜んだ。
「お前達には八武天が2人体制で教える。」
「はい!」
4人は改めて背筋を伸ばして叫んだ。
「よろしくお願いします!」
「まず、快晴。俺と鉄心がつく。
次に大地。真介と静歌がお前につく。
亜瑠香には、らびと有栖。
詩音は凪と喜一。以上」
「また、あのサーターアンダギーの人かよ」
大地がやれやれという顔でため息を募らせる。
そこへ真介が暑苦しく大地の肩に手を回す。
鉄心が快晴の横にいた。
「俺は、容赦しないぞ。逃げ出したら、切り捨てる。」
「もちろんです。」
鉄心は快晴の頭に手を置いて去って行った。
「あるちゃーん!」
「あっ、ラビ!!」
ラビが癒しオーラ100パーセントで亜瑠香に抱きつく。
「よろしくなの~あるちゃん」
「ほわぁ良い匂い」
あっちでは詩音が話している。
「これからよろしくお願いします。あと、この間はありがとうございました。」
詩音が頭を下げて礼を言っている。その拍子に眼鏡が落ちて探している。
凪が眼鏡を拾い上げ、詩音に手渡す。
「こちらこそよろしくお願いします。良い本と出会うのは簡単でないのと同じでこうして出会えるのも奇跡です。私はあなたが物語を紡ぐ手伝いをするまでです。」
詩音の顔が明るくなった。
 よかった。ここから始まっていくんだ。こっから。
「共に強くなろうラギア」
『もちろん最初からその気だがな』
雨上がりの匂いと共に僕らは新しい一歩を踏み出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

6年前の私へ~その6年は無駄になる~

夏見颯一
恋愛
モルディス侯爵家に嫁いだウィニアは帰ってこない夫・フォレートを待っていた。6年も経ってからようやく帰ってきたフォレートは、妻と子供を連れていた。 テンプレものです。テンプレから脱却はしておりません。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

どうぞお好きに

音無砂月
ファンタジー
公爵家に生まれたスカーレット・ミレイユ。 王命で第二王子であるセルフと婚約することになったけれど彼が商家の娘であるシャーベットを囲っているのはとても有名な話だった。そのせいか、なかなか婚約話が進まず、あまり野心のない公爵家にまで縁談話が来てしまった。

処理中です...