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第二章 キリン探し
圧倒的完勝 ②
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地球B 15日目
PM 19時30分
「おーい、にいちゃん! もう大丈夫だからこっちきなぁ!」
「は、はい!」
言われるがままにガドルさんのもとへ駆け寄る。
さっきまで激シブいくさ人だったガドルさんは、いつものひょうきんヒゲダルマの優しい顔に戻っていた。
「どうでぃ? オレもなかなかにやるもんだろぉ?」
「いや~、超カッコよかったですよ。ガドルさんもメチャメチャ強いんじゃないですかぁ!」
「へっ、あんがとよぉ。んでもテッサに比べりゃあ鼻くそみたいなもんなんだがなぁ。」
そう言って、照れくさそうに顎ヒゲを撫でている。
「いやいや~、テッサの暴れっぷりも凄いですけど、ガドルさんの剣技はなんだか『達人』って感じがして、オレはそっちの方がカッコよくて好きですよ!」
「でぃはははは! 達人たぁ嬉しいこと言ってくれんじゃねぇかぁ!……さてぇ、こっちも片付いたことだしぃ、そろそろテッサの方もどうにかしなきゃなんだがぁ、どうしたもんかねぇ……」
「へ? テッサですか? アイツならあんなに元気に暴れ回ってるじゃないですか。」
「いんやぁ……ピンピンして見えるけどなぁ、アイツもそろそろ限界だぜぇ……アイツのことだからよ、そのまま全員ぶちのめしてくれるかとも思ったがよ、どうやらそいつは難しいみてぇだなぁ。」
「限界!? まっさかぁ……」
……いや、そういえばアイツたしか、200人ぐらいまでしか息が続かないって言ってたっけ……
見た感じ、もう三分の二ぐらいはやっつけてるみたいだけど、それでもまだ夜盗はたくさん残ってるぞぉ……
「え、じゃあアイツやられちゃうかもなんですか!? どうしましょうガドルさん!」
「だぁから考えてんじゃねぇかぁ、流石にあんな人数相手じゃあオレもどうすることも出来んしよぉ……」
……マジかよ! 楽勝ムードだと思ってたぞ……
くそっ! オレのわがままに付き合ったせいで、アイツが大ケガしたり死んじゃったりしたらどうすんだよぉ……
……何か、何か手はないのか………………また、アレやっちゃう?
オレに出来ることなんてそれぐらいしかないよなぁ……
「神……降臨しちゃうかぁ……」
「あぁ? なぁに言ってんだにいちゃん?」
残念な人を見る目のガドルさんをスルーしてショルダーのもとに駆け寄り、ショルダーを基地に還した。
「なんだぁ!? アレはどこに行ったってんだぁ!?」
「ダービー!」
ーー パチィン! ーー
「うぉう! 今度はなんだぁ!? 一体どこから……」
ーー ドゥゴンッ! ーー
「うぉぉぉお! なんだなんだぁぁ!?」
「よし、ガドルさん、オレの後ろに跨ってください!」
「跨れって……こいつも乗り物なのかい?」
ガドルさんは困惑した様子でダービーに跨るオレを見下ろしている。
「そうですよ。さぁ、早く乗って! テッサのもとへ行きましょう!」
「わ、わかったよぉ……」
何かを覚悟するかのように生唾を飲み込んで、オレの後ろに恐る恐る跨ってきた。
「そんでぇ、どうすんだよぉ? あそこに行ったって出来ることなんざ……」
「とりあえず行きますよ! ショルダーより全然揺れるんで、ちゃんとどこかに捕まっててくださいね。」
「なんだってぇ!? ちょ、ちょっと待ってくれにいちゃん! オレは降り……」
「しゅっぱーーーーーーーつ!!」
一速に入れると同時に思い切りアクセルを開いた。
例によって、前輪が跳ね上がりウィリー状態になると、ガドルさんはオレの腰にガッチリと丸太のような腕を回し「のぇ~~~~~~~!」と、野太くて奇妙な声を空に響かせている。
ガドルさんには申し訳ないが構っている場合ではない。
アクセルは全開のまま、荒ぶる車体の勢いそのままに、数十メートル先で繰り広げられている乱闘騒ぎ目指して直進
した。
ものの数秒で集団の手前まで辿り着くと、テッサまでの道を作るべく、クラクションのスイッチを連打した。
ーー プァー! プァップァップァーーーーー! ーー
テッサに対峙して身構えていた夜盗たちは、初めて聞く謎の機械音に面を食らったようで、ギョッとした顔でこちらに振り向き、次々と飛び避けるようにダービーの進行方向を空けていく。
そうして人海の中に開かれた道をクラクションを連打したまま通り過ぎて行くと、易々とテッサのもとまで辿り着くことが出来た。
仕上げに、テッサを中心に円を描くようにダービーのタイヤを滑らせながら周回すると、テッサを囲んでいた人混みは見る間にその範囲を広げ、オレ達の周りには大きな空間が出来上がった。
夜盗たちとの距離ができ、とりあえずは襲ってきそうにない様子を確認したオレは、アクセルを緩めてテッサの隣にダービーを停めた。
「ふぅ~、お疲れテッサ。ごめん、テッサなら一人で大丈夫だと思ってほったらかしにしちゃってたよ。」
「……ふん。」
テッサは、「余計なマネをするな。」とでも言いたげに不満そうな鼻息を一つ立てたが、その額には大粒の汗が浮かび上がり、肩は呼吸の度に激しく上下している。
遠くからでは余裕いっぱいに見えていたが、体力的にギリギリの状況で戦っていたようだ。
「特にケガもしてないっぽいね。……本当に強いんだなぁ、見直しちゃったよ。」
「お、おいにいちゃん……オレの心配もしてくれたっていいんだぜぇ……」
「うわ! ごめんなさいガドルさん、ヘロヘロですね。」
「へへへへ……もうどんなに頼まれたって二度とこいつにゃあ跨らねぇぜぇ……」
「は、はははは……ま、まぁなんとか全員無事なことだし、ね。……よっしゃ、仕上げといきますか!」
ダービーから降りて、状況が飲み込めずに警戒した様子の夜盗たちと対面する。
念のため、襲い掛かられてもすぐに二人の後ろに回り込めるような距離は保ったままだ。
「お前たち! もうこの二人に敵わないのはわかっただろう! 武器を収めてオレの話を聞くんだ!」
オレの声が夜空に響くと、夜盗たちは呆気にとられたような顔でこちらを見ている。
圧倒的に勝勢だった側からの停戦の申し入れがよほど予想外だったのだろうか。
しばらくお互い無言のまま、どんな返事がくるかドキドキしながら待っていると、おもむろに夜盗の一人がオレに話しかけてきた。
「いきなり出てきやがって……お前は一体なんなんだぁ?」
「ふっ……なんなんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情けっ、てなぁ……」
「何をゴチャゴチャと、ふざけているのかぁ!?」
「あぁ! ごめんなさい! 一回言ってみたかっただけだから! そんな物騒なもん向けないで!」
……しまった、これからカッコよくキメなきゃないのに、みっともなくへっぴり腰を晒してしまったぞ……
えぇい! 今のナシ! 気を取り直してもう一発いこう……
「ゔ、ゔぅん……よいかお前たちぃ! 私は車輪の神ジョン・ドゥ! お前たちの蛮行を止める為、この地に舞い降りし者だぁ!」
PM 19時30分
「おーい、にいちゃん! もう大丈夫だからこっちきなぁ!」
「は、はい!」
言われるがままにガドルさんのもとへ駆け寄る。
さっきまで激シブいくさ人だったガドルさんは、いつものひょうきんヒゲダルマの優しい顔に戻っていた。
「どうでぃ? オレもなかなかにやるもんだろぉ?」
「いや~、超カッコよかったですよ。ガドルさんもメチャメチャ強いんじゃないですかぁ!」
「へっ、あんがとよぉ。んでもテッサに比べりゃあ鼻くそみたいなもんなんだがなぁ。」
そう言って、照れくさそうに顎ヒゲを撫でている。
「いやいや~、テッサの暴れっぷりも凄いですけど、ガドルさんの剣技はなんだか『達人』って感じがして、オレはそっちの方がカッコよくて好きですよ!」
「でぃはははは! 達人たぁ嬉しいこと言ってくれんじゃねぇかぁ!……さてぇ、こっちも片付いたことだしぃ、そろそろテッサの方もどうにかしなきゃなんだがぁ、どうしたもんかねぇ……」
「へ? テッサですか? アイツならあんなに元気に暴れ回ってるじゃないですか。」
「いんやぁ……ピンピンして見えるけどなぁ、アイツもそろそろ限界だぜぇ……アイツのことだからよ、そのまま全員ぶちのめしてくれるかとも思ったがよ、どうやらそいつは難しいみてぇだなぁ。」
「限界!? まっさかぁ……」
……いや、そういえばアイツたしか、200人ぐらいまでしか息が続かないって言ってたっけ……
見た感じ、もう三分の二ぐらいはやっつけてるみたいだけど、それでもまだ夜盗はたくさん残ってるぞぉ……
「え、じゃあアイツやられちゃうかもなんですか!? どうしましょうガドルさん!」
「だぁから考えてんじゃねぇかぁ、流石にあんな人数相手じゃあオレもどうすることも出来んしよぉ……」
……マジかよ! 楽勝ムードだと思ってたぞ……
くそっ! オレのわがままに付き合ったせいで、アイツが大ケガしたり死んじゃったりしたらどうすんだよぉ……
……何か、何か手はないのか………………また、アレやっちゃう?
オレに出来ることなんてそれぐらいしかないよなぁ……
「神……降臨しちゃうかぁ……」
「あぁ? なぁに言ってんだにいちゃん?」
残念な人を見る目のガドルさんをスルーしてショルダーのもとに駆け寄り、ショルダーを基地に還した。
「なんだぁ!? アレはどこに行ったってんだぁ!?」
「ダービー!」
ーー パチィン! ーー
「うぉう! 今度はなんだぁ!? 一体どこから……」
ーー ドゥゴンッ! ーー
「うぉぉぉお! なんだなんだぁぁ!?」
「よし、ガドルさん、オレの後ろに跨ってください!」
「跨れって……こいつも乗り物なのかい?」
ガドルさんは困惑した様子でダービーに跨るオレを見下ろしている。
「そうですよ。さぁ、早く乗って! テッサのもとへ行きましょう!」
「わ、わかったよぉ……」
何かを覚悟するかのように生唾を飲み込んで、オレの後ろに恐る恐る跨ってきた。
「そんでぇ、どうすんだよぉ? あそこに行ったって出来ることなんざ……」
「とりあえず行きますよ! ショルダーより全然揺れるんで、ちゃんとどこかに捕まっててくださいね。」
「なんだってぇ!? ちょ、ちょっと待ってくれにいちゃん! オレは降り……」
「しゅっぱーーーーーーーつ!!」
一速に入れると同時に思い切りアクセルを開いた。
例によって、前輪が跳ね上がりウィリー状態になると、ガドルさんはオレの腰にガッチリと丸太のような腕を回し「のぇ~~~~~~~!」と、野太くて奇妙な声を空に響かせている。
ガドルさんには申し訳ないが構っている場合ではない。
アクセルは全開のまま、荒ぶる車体の勢いそのままに、数十メートル先で繰り広げられている乱闘騒ぎ目指して直進
した。
ものの数秒で集団の手前まで辿り着くと、テッサまでの道を作るべく、クラクションのスイッチを連打した。
ーー プァー! プァップァップァーーーーー! ーー
テッサに対峙して身構えていた夜盗たちは、初めて聞く謎の機械音に面を食らったようで、ギョッとした顔でこちらに振り向き、次々と飛び避けるようにダービーの進行方向を空けていく。
そうして人海の中に開かれた道をクラクションを連打したまま通り過ぎて行くと、易々とテッサのもとまで辿り着くことが出来た。
仕上げに、テッサを中心に円を描くようにダービーのタイヤを滑らせながら周回すると、テッサを囲んでいた人混みは見る間にその範囲を広げ、オレ達の周りには大きな空間が出来上がった。
夜盗たちとの距離ができ、とりあえずは襲ってきそうにない様子を確認したオレは、アクセルを緩めてテッサの隣にダービーを停めた。
「ふぅ~、お疲れテッサ。ごめん、テッサなら一人で大丈夫だと思ってほったらかしにしちゃってたよ。」
「……ふん。」
テッサは、「余計なマネをするな。」とでも言いたげに不満そうな鼻息を一つ立てたが、その額には大粒の汗が浮かび上がり、肩は呼吸の度に激しく上下している。
遠くからでは余裕いっぱいに見えていたが、体力的にギリギリの状況で戦っていたようだ。
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「うわ! ごめんなさいガドルさん、ヘロヘロですね。」
「へへへへ……もうどんなに頼まれたって二度とこいつにゃあ跨らねぇぜぇ……」
「は、はははは……ま、まぁなんとか全員無事なことだし、ね。……よっしゃ、仕上げといきますか!」
ダービーから降りて、状況が飲み込めずに警戒した様子の夜盗たちと対面する。
念のため、襲い掛かられてもすぐに二人の後ろに回り込めるような距離は保ったままだ。
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「何をゴチャゴチャと、ふざけているのかぁ!?」
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