車輪の神 ジョン・ドゥ 〜愛とロマンは地球Bを救う?〜

Peppe

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第二章 キリン探し

きりん ①

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地球B 26日目
AM  10時00分

 ラムザさん達の移住が完了した後、オレとテッサは商会の宿舎に延泊して集落に滞在していた。
野原の集落改め、希望の集落の新たな生活が落ち着くまで、住民たちの様子を見ていてほしいとミーシャさんに頼まれたからだ。

 オレの威光で和解したとはいえ、実際に生活が始まればなにがしかのトラブルが起きても不思議ではないと覚悟をして目を光らせたが、この10日間、元いた住民たちと移住者たちの仲は良好そのもので、集落は平和な空気に包まれていた。

 この調子でいけば、商いの集落に並ぶ理想郷ができるのではないかとミーシャさん達は期待しているが、オレにとっては非常に居心地の悪い集落になってしまった。
通りを歩けば、人に会う度に「神よ!」だの、「ご機嫌はいかがですか?」だのと、天上人が如く扱われるのは小市民のオレにとってはムズ痒くて仕方ないのだ。

 今日まで我慢してみたものの神様バブルは一向に収まる気配もなく、流石に我慢の限界なので集落を発ってキリン探しを再開することにした。

 宿舎の荷物をまとめて、テッサと共に門から出ようとすると、ミーシャさんとガドルさんとラムザさんが見送りに来てくれた。

「わぁ! みんなぁ、わざわざありがとう。」
「あきらさん、今日までたくさんお世話になりまして、本当にありがとうございました。」

 そう言って、ミーシャさんは深々と頭を下げた。
この数日間で、出会った頃とは比べ物にならない程の堂に入った所作が出来るようになったようだ。
やはり、修羅場を乗り越えた若者の成長というものは目覚ましいものなのだろう。

「こちらこそ、長々と宿舎でお世話になっちゃって……凄く助かったよ、ありがとうね。」

 そうして、お互いにお礼を言い合いながら笑顔で挨拶を交わしていると、ガドルさんがヒゲを撫で回しながらニヤニヤと話に割って入ってきた。

「神さんよぉ、おめぇさんはずぅっとここにいた方がぁチヤホヤされていい暮らしができるんじゃぁねぇのかぁ?」

 オレが神扱いされるのが好きではないのを理解して言ってくるのだからイヤらしい。
以外にも、オレよりも二つしか歳が上でないことが判明したガドルさんとは滞在している間にグッと親密になり、飲み歩くのに付き合わされたり、統領になった気苦労を愚痴をられるような仲になった。

「いやいやぁ、統領よりも尊敬される人がいつまでも集落にいたら邪魔でしょー? 後の面倒は全部ガドルさんに任せるから、よろしくお願いしますよ!」
「けぇっ、あいっかわらず口だけは達者だなぁ……また近くに来たら顔を見せてくれよぉ。」
「うん、またみんなの顔を見に来るよ。……飲み過ぎてみんなに迷惑かけちゃダメだよ、統領!」
「最後の最っ後までうるせぇってんだよ、っとによぉ……」
「はははは……ラムザさんも、集落の警備頑張ってね。」

 ビシッと気をつけをして、『神よ、オレにも話しかけてくれオーラ』を垂れ流しながら二人の横に立っていたラムザさんにも声をかけた。

「はい! 神……、失礼! あきらさんからの恩に報いる為、例えこの身が砕けようとも集落を守り続けるつもりです!」
「お、重いねぇ……自分の身が危ない時はラムザさんもみんなと逃げたらいいからさぁ……」
「な、なんと……やはり、あきらさんの優しさはオレなんかの常識では測れない程の……」

 ……まぁた始まったよぉ……
こうなると号泣大絶叫するまで話が終わらないんだよなぁ……

「おいモドキ、ダラダラダラダラと、いい加減にしろ。もう一生会えん訳でもないだろう。」

 ムスッと腕を組み、興味なさげにやりとりを静観していたテッサが、ウンザリした表情で言い放ってきた。
いつも通りのドライで無粋な態度だが、ラムザさんの熱弁から逃げ出したかったオレには渡りに船だ。

「お、おう。……ほんじゃあ、オレ達は出るとするよ。みんな元気でね!」

 そう告げると、三人とも名残惜しそうに様々な別れの言葉を口にしてくれたが、全てに対応していたらテッサが爆発してしまうかもしれないので、オレは断ち切るように大きく手を振り、笑顔でその場から退散した。

 集落から少し歩いて、今にも雨が降り出しそうな空模様だったのでショルダーを召喚して、テッサと共に乗り込んでハンドルを握ると、なんだか懐かしい気持ちが込み上げてきた。
思い返してみれば、地球Bに来てからはしばらく二人きりで旅を続けていたのに、希望の集落に到着してからというもの、こうして並んでショルダーに乗るのは随分久しぶりだった。

「……キリン探し、だいぶ中断させちゃってごめんね。」
「はっ、探索を進める為に集落に寄ったというのに、とんだ足止めを食ったものだ。」

 イヤミったらしい言葉を吐く割りに、テッサの表情はいつもと比べて穏やかに見える。
ようやく探索が再開できるのが嬉しいのだろうか?

「だから謝ってるんじゃんかぁ。」
「……まぁいい。お前が集落でなにやらしている間、周辺の探索は一人で済まておいたからな。」
「あっ、そう? じゃあ今日はどうしよう?」
「……そうだな、集落から離れよう。東の方へしばらく走ってくれるか。」
「あいよ! そんじゃあ久々のキリン探しへ出発しましょうかね!」
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