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第二章 キリン探し
きりん ②
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地球B 26日目
AM 11時00分
集落を発ってショルダーを走らせるにつれ、空を覆う雲は徐々に暗さを増してきて、ついにはワイパーをフル稼働させても視界が怪しい程の大雨が降りはじめた。
我が愛機のパワフルな足回りにとっては、多少のぬかるみなど存在しないのも同じだが、幌のルーフは雨天と相性が悪く、機関銃の掃射を彷彿とさせる雨音が車内に鳴り響く。
「うっひゃ~、ガッツリ振ってきたなぁ。……音うるさいよね?」
「ん? あぁ、別に気にならんぞ。外套を纏って歩くことに比べればこんな音、なんの苦でもない。」
……そっか、この星にはカッパもないんだもんな……
うへぇ~、布被ってこの雨の中歩いたりすんのぉ? 地獄じゃん……
「……やはり、ダービーやショルダーはいいな。……この便利さに慣れてしまったものだから、徒歩での探索が面倒で仕方なかった。」
そう言って、ポンポンと優し気にダッシュボードを叩いている。
テッサは出発してからずっとこんな調子で、いつもより表情が穏やかなうえに口数も多い。
久々にショルダーに乗れたのがよっぽど嬉しいのだろうか?
「ふふ、愛着わいてきちゃったんじゃないの? ダービーもショルダーもかんわいいからね~。」
「かわいいかどうかはわからんが、離れがたい程に便利なのは間違いないな。」
「そんなこと言って~、その内この子たちの声が聞こえてくるようになっちゃうんだから。」
「……今も何か話しているのか?」
「今? どれどれ……歌ってるな。……雨♪雨♪でもビュンビュン進ぅむぅ~♪……だってさ。」
「……気持ちの悪い。」
「おい! そんなヒドイこと言うなよ! ショルダーが傷つくだろ!」
「お前に決まっているだろう。」
「あぁ、じゃあいいよ……いや、よくはねぇなぁ!」
「バカが……」
「心外ですな。……ねぇ、鼻歌唄ったらさ、音楽かけたくなっちゃったんだけどかけてもいい?」
「音楽? 楽器などないぞ。また奇妙な歌を唄おうと思ってるならよせよ。」
……は? あ~ね、音楽イコール歌か楽器になりますわな。
「ふっふっふ……実はな、ショルダーは上手にお歌が唄えるのだよ。」
「……さっきも同じような冗談を言っていたぞ。……頭が終わりはじめたんじゃないのか?」
「うぉい! ガチで心配そうな顔するんじゃないよ!……さっきのとは意味が違うの、ちょっと待ってなさいな。」
車を路肩に停め、タブレットとショルダーを無線で繋ぐと、地球音楽への入門編として無難なJ-POPを選曲した。
「ほんで~、こうしますと……ショルダー! 素敵な歌声プッリーズ!」
ーー ♪♪♪ ーー
「な!? おい! 私にもショルダーの歌声が聞こえてきたぞ! 一体どうなっているんだ!?」
そう言って、超能力にでも目覚めてしまったような顔でキョロキョロと車内を見回している。
「どぅふぅっ! ぷぁはははははははは!……」
「……なにがおかしい?」
「いやぁ~、あはははは……ごめんごめん、本当はこれショルダーの歌声じゃないの……なんて言えばいいのかなぁ、タブレットに入ってる歌をショルダーを通して流してるというか……まぁ、そういう便利な機能。」
「ちっ、まぎらわしいことをするな。お前とい過ぎたせいで私の頭までおかしくなったのかと思ったぞ。」
「珍しく慌ててたもんなぁ……ぷふぅっ!」
「……いい加減にしろよ。」
「待て待て、もう笑わないからそんなに睨むなってば……ふぅ~、たまに音楽かけたかったんだけどさ、テッサが耳障りだと悪いかと思って、今まではかけてなかったんだよ。」
「……お前の故郷の歌なのか?」
「そうだね、何年か前にだいぶ流行った曲だよ。」
「そうか……何を言ってるかわからんな。」
「えっ、日本語の歌だよ……あっ!」
……そうか、オレの言葉は喉に翻訳機が着いてるから伝わってるだけで、素の日本語はチンプンカンプンなのか。
「あ~、ごめんごめん、じゃあ聞いてもつまんないよな。」
「いや、いい。言葉を無視すれば音楽自体は悪くない。」
「あ、そう? じゃあかけっぱなしでいきますぜー。」
そうして、雨音に負けないよう爆音で音楽を流しながら探索を続けた。
色々な曲をかけてみた中で、テッサはロックが起きに召したようで、ふと隣に目をやると、人差し指で腿をトントン叩きながらリズムをとっていた。
……うっひゃ~、横顔キッレー……
天気は最悪だけど、なんか『THEドライブ』って感じがして楽しいな……
AM 11時00分
集落を発ってショルダーを走らせるにつれ、空を覆う雲は徐々に暗さを増してきて、ついにはワイパーをフル稼働させても視界が怪しい程の大雨が降りはじめた。
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「うっひゃ~、ガッツリ振ってきたなぁ。……音うるさいよね?」
「ん? あぁ、別に気にならんぞ。外套を纏って歩くことに比べればこんな音、なんの苦でもない。」
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久々にショルダーに乗れたのがよっぽど嬉しいのだろうか?
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「かわいいかどうかはわからんが、離れがたい程に便利なのは間違いないな。」
「そんなこと言って~、その内この子たちの声が聞こえてくるようになっちゃうんだから。」
「……今も何か話しているのか?」
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「……気持ちの悪い。」
「おい! そんなヒドイこと言うなよ! ショルダーが傷つくだろ!」
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「バカが……」
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……は? あ~ね、音楽イコール歌か楽器になりますわな。
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車を路肩に停め、タブレットとショルダーを無線で繋ぐと、地球音楽への入門編として無難なJ-POPを選曲した。
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ーー ♪♪♪ ーー
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