異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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ベアルダウン王国編

174話 主人公、自給自足を経験するー4

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「さぁ、着いた。ここが例の神殿だ。」

 ナナシについての話をしながら歩いていたら、いつの間にか神殿が近くなっていた。

 間近で神殿を見た僕は、ある事に気付く。

 これって、どこかで見たような…。
 あっ、紫禁城!故宮博物院だ!

 紫禁城は広大な敷地の中に、皇帝の居城として使用されていた建物や大小の建物が建っている。

 目の前の神殿も、大きな建物の周りに大小の建物が配置されている。

「これって、神殿っていうより誰かが住んでいたような建物だね。」

「んっ?タクミにはそう見えるのかい?この世界には、こういう建物は無いから、よく分からないのさ。とりあえず、拠点となる小屋を作ろうか。リオンとシオンには1週間くらい滞在して、自給自足を学ばせてくれって頼まれてるよ。」

 いっ、1週間?そんな生活、耐えられるかな…。

「じゃ、作ろうか!」

 えっ?そんな簡単な感じではじめるの?

 僕の見ている前で、ユーリはドラゴノイドに変現する。そして、鋭い爪で樹木を切り倒していく。

「この辺りの木は間伐する予定だったから、ちょうどいいよ。」

 間伐とは、森の環境を維持するために、計画的に木を切る事だ。木が増えすぎると、太陽光が地面にあたらなくなり、他の植物が育たなくなる。

「冒険者って、間伐までしてるんだ?」

「あぁ。この島にはこの神殿があるし、この島に果樹が豊富なのは、この森を守っているからなのさ。」

 ユーリは話をしながらも、どんどん木材を調達して、あっという間に簡素な小屋を建てる。

「木を組み合わせただけの小屋だが、数日滞在するだけなら、大丈夫さ。すぐ近くに小川があるから、水はそこで確保。排泄は少し離れた森の中で、穴を掘ってしておくれ。」

 やっぱり、外だったか!

「風呂なんて無いよね?」

「風呂?その小川で水浴びしなよ。それより、食材の確保に行くよ。アタイは肉を調達してくるから、タクミはこの森にある果物や植物を採ってきてくれよ。」

 ユーリはそれだけ言うと、サッサッと森の奥へ入っていく。

 ちょっと待った!僕は食べられる物の見分け方なんか知らないよ!

「タクミ、そこに生えてる草は食べられるよ。あそこの赤い実も食べ頃だよ!」

「ミライ、分かるの?」

「あい!分からないことは何でも聞いてね!」

 そうだ。タムが言っていたな。
 パートナー精霊がいたから、サバイバル体験を乗り切れたって。

 ミライの指示でいろいろな食材を採ることができた僕が小屋に戻ると、ユーリがもう戻っていた。

 小屋から少し離れたところで火をおこしている。

「いっぱい採れたようだね。ミライがいるから大丈夫だと思っていたよ。」

「あっ、うん。ミライの指示でいっぱい採れたけど…。ユーリって何か、火をおこす道具持ってた?」

「あぁ、この火かい?これは簡単な術式で火を出したのさ。複雑な術式は、パートナー精霊の協力がないと展開できないが、これは術式の初歩だからね。成人する前の子供でも使えるよ。」

 僕は術式が使えない。この世界の子供より何もできないのか…。なんだか、複雑。

「タクミ!タクミは術式なんか必要ないよ。ドラゴンに変現したら、炎が吐けるし!」

「ミライ…。ドラゴンの炎じゃ、火力が強過ぎるよ。この辺り一帯、焼き尽くすつもり?」

 ドラゴンの炎をマッチ代わりに使おうなんて…。

「ところで、その術式ってどういう仕組みなの?」

「あい!術式を詳しく説明するには、3時間くらいかかるけど聞く?」

「えっと、簡単にお願いします。」

「あい!術式の発動には、精霊が必要なんだよ。この世界では、何をするにも精霊が動いて現象が起きる。簡単に説明すると、精霊に火を出してってお願いすると火が出る。お願いする方法が術式なんだよ。」

 なるほど。
 術式は、精霊を動かすプログラムみたいなものなんだな。そのプログラムが正しいと精霊は動いてくれる。間違っていると動かない。

「この地面に術式を書いて、炎を出した後は、この燃える石を置く。そして風よけを兼ねて、石の周りに枯れ木を置いたら完成だ。今日はさっきアタイが確保した肉を焼いて、タクミが採ってきた葉に巻いて食べよう。果物もあるし、この小川の水はキレイだから、そのまま飲める。ほら、サバイバルなんて、簡単だろ?」

 簡単だろ?って…。
 それはユーリのように、サバイバルに慣れた人がいるから何とかなるだけで、僕だけなら、まず無理だ。
 動物を屠殺したこともないし。

「残った肉は塩漬けにして、干しておくよ。」

「ユーリは包丁とか持ってなかったよね?どうやって…?まさか?」

「えっ?もちろん、これだよ。」

 ユーリは自慢気にドラゴノイドの爪を見せる。
 はぁ、包丁代わりに使うなんて。

「使えるものは、なんでも使うのは当たり前さ。ホームにいる頃に、そう学ぶんだよ。」

「あぁ、ホームでは自給自足で生活してるんだったね。」

「もちろん、完全な自給自足じゃない。ホームの家は紋章システムを使って建てているし、服を作る布も紋章システムから出している。布を作るのはとても大変なことなんだよ。紋章システムを必要としないのは、食に関することだけだ。家畜を飼育し、野菜を育てる。だけど、精霊球は使えないから大変さ。」

「自給自足って、大変なんだね。」

「そうさ。本当に自給自足で生活しようとすると、かなり原始的な生活になってしまうんだよ。」

「スローライフって、便利な道具があるからできる生活なんだな。道具をうまく使って、ゆったりとした生活をする。これが本当のスローライフ。この世界は紋章システムっていう便利な道具がある。だから僕の理想とする生活ができてるんだね。」

「あい!この世界の紋章システムは、人が幸せになるためにあるんだよ。アースにはさ。楽をすると、何もしなくなって人はダメになってしまうって考えてる人もいるんだよね?でもそれは、道具が悪いんじゃないよ。」

「そうか!この世界は、そうならないように子供の頃に自給自足を学んで、道具をうまく使えるような人に育ててるんだね。」

「あい!その通りだよ!」

 スローライフには、便利な道具が必要。
 本当の自給自足は、僕には無理!
 それを強く実感したのだった。
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