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ガンガルシア王国編
223話 主人公、未来を知るー3
しおりを挟む「タクミがこの世界に存在しているのは、奇跡みたいなものなんだよ。」
僕が存在しているのは、奇跡?
「それはそうかもしれないわね。私達が見た田中拓海は、完全にグールに取り憑かれていた。本当なら、そこから生還するなんて、あり得ないのよ。」
セシルが自分の見解を述べる。
「先祖返りのチカラが上手く発現するなんてことも、滅多にあることではありません。すべてのものが上手く噛み合った。その結果なのでしょう。」
エルもセシルに同意する。
「僕は本当なら、ここには居ない存在ってこと?」
驚愕する僕に、タイジュが付け加える。
「世界は奇跡の連続で成り立っているのさ。オレが紋章システムを開発中できたのも奇跡だし、それが上手く続いているのも奇跡だ。」
いや、そんなことはない。
この世界が続いているのは、この世界のみんなが幸せな世界を続けたいという強い意志をもって、それを実行してきたからだ。
いまのこの世界は、ソラが見た未来とは違うってこと?それなら、この世界を救う方法もあるはずだ。未来は変化したのだから。
「それに…。タクミの存在以外に、もうひとつ気になることがある。」
ソラはセシルをジッと見ると、言葉を続ける。
「セシル。お前、どこか身体に異変を感じてないか?」
ソラがセシルの身体について問いただす。
「別にどこも悪くないわよ。」
セシルの言葉にエルが即座に否定する。
「マスター、嘘はダメですよ。ソラ、じつはエレメンテに長く滞在すると、熱が出たり倒れたりとマスターの身体に異変がおこるのです。アースにいるときには、そんなことはないのですが…。私が入念に調べましたが、異常が見つかりません。だから一度、スカラに行ってほしいとお願いしても聞いてくれません。」
「医療の専門家のエルにも分からないって?そうか…。セシル、手を出して。」
セシルが手を出すと、ソラは指をからませて掴む。あれは、僕が一度でいいからしてみたいと思っている恋人繋ぎ!
お子様のセシルには興味がないから羨ましくなけどね!と強がって見ていると、繋いだ手の間から光が漏れ出す。
一体なにを?
目を閉じて何かを探っていたようなソラが、「やっぱりね」とつぶやく。
「姫の魂のチカラが、身体に影響を及ぼしている。この身体は姫の魂と相性が良すぎるらしい。身体の不調はそのせいね。」
「魂のチカラが身体に影響を及ぼしているって?それってどういう…?」
「このセシルの身体に、エンシャントエルフのチカラが発現する可能性があるってことだよ。」
!!!
「身体の異変はそのせいだ。この世界は精霊が多い。精霊達は、エンシャントエルフのチカラに寄ってきてしまう。成人するまでは、アースで暮らした方がいい。子供の身体では、耐えられないから。」
「でっ、では。マスターは病気じゃないのですね?」
エルが喜ぶ。
「病気とは違うけど、このままだと死ぬよ。強すぎるチカラは身体には毒だ。エンシャントエルフのチカラがうまく発現してくれれば、助かるけど。そうじゃないと、タムみたいに…。」
「分かりました。マスターのチカラが発現するまでは、アースで過ごすことにします。」
「うん、それがいいよ。それから、セシルにひとつ忠告。前のセシルの記憶に引きずられるのは、もう止めなよ。前のセシルは、自分が犠牲になってこの世界を救うんだって思ってた。その強い想いを継いだから言葉遣いもそうなってたと思うけど、もう必要ない。そして、いまは姫の記憶に影響されている。悪いことではないけど、姫と今のセシルは別人だ。自分らしく生きればいいんだよ。」
ソラは母親のように、セシルに語りかける。
セシルはソラの真摯な言葉に、素直に頷いた。
「うん。ありがと、ソラ。」
ニッコリ笑う表情は、10歳の女の子。これが本当のセシルなのだろう。
その光景を目を細めて見ていたタイジュが、ソラに話しかける。
「ここは、ソラが見たどの未来とも違う。きっと、上手くいく方法が見つかるはずだ。ソラ、ここで聞いた情報を王たちに話してもいいか?」
「うん。いいよ。ボクもみんなに未来を託すよ。どうするかはタクミ達で決めてほしい。」
「分かった。オレがすべての王に連絡しておく。いまここで話したカシムと双子の意見に対する代わりの案も伝えておくよ。ソラのチカラが込められた石を使った紋章システムの開発も検討してみよう。ジルの言うとおり、チームを作るのも悪くないと思えてきた。いまの世界のヤツラを信じないとな。」
「そうよ、タイジュ。今はあの頃とは違う。いまのエレメンテには、お金や身分による上下関係なんかない。みんな好きなことをして、生きているわ。そんな世界で紋章システムを悪用しようと思う人はいないと思うの。」
「そうだな。紋章システムを使わせてやるから、オレの言うことを聞けっていうのは面倒クセーよな。オレはそれが面倒だから、法律なんてものは廃止したんだ。『人を害してはいけない』それだけで十分だよ。」
たったひとつのルールだけで成り立っているこの世界は奇跡だ。すべての国を体験した僕の願いはただ一つ。この世界を守りたい。僕にしかできないことで救えるのならそうしたい。
それから、数週間後。
精霊王の城に再び集まることが決まった。
この世界の未来を決めるための話し合いがはじまる。
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