異世界に移住することになったので、異世界のルールについて学ぶことになりました!

心太黒蜜きな粉味

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フラルアルド王国編

56話 主人公、仕事について学ぶ

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「「では、始めようか!」」

 でも少し待っててね、と言って席を外した双子は、女子中学生の格好で戻ってきた。前回はセーラーだったけど、今度はブレザーだ。

「「今日は、有名私立中学校風の制服だよ!」」

 はぁ、そうですか…。もう、ツッコム気もないよ!

「「では、仕事についての説明を始めるよ!」」

 どうぞ、お願いします!

「エレメンテでの仕事は、創造的なものでなくてはならないって、セシリア王国の初代王様であるセシルさまが決めたことなんだけど、当初は紋章システムも原始的だったから、肉体労働する国民も多かったんだ。」

「紋章から出す時に、加工っていう機能がなかったから、保管したままの状態で出てくる。食べ物は、生の野菜とかだから、結局、その後、調理しなくちゃいけなくて。」

「建物とかもそうだよ。木材は大量に保管されてるんだけど、家を建てようと思ったら、結局、人手が必要だったんだ。」

「難民の受け入れを優先してたからね。逆に仕事があった方が、みんな生き生きしてたみたいだけど。」

「それを見たセシルさまは、実感したんだ。人は何かの仕事をしている時が一番いい状態になるんじゃないか!ってね。」

「タクミもさ。誰かに頼られるって嬉しくない?」

 確かに、何か仕事があるだけで、ここにいてもいいんだって思えた。だから、仕事を辞めるなんて、なかなか考えられなかったな。

「でも、ジルの空想家って仕事はどうなの?それって何かの役に立つ仕事?」
 アースでは、考えられない仕事だから、想像もできない。

「ジルは元々、開発者の弟子で改良家だったんだ。いまある物を、より良い物にするっていうのが、改良家だよ。」

「開発者ってのは、いまはまだ無い技術を作り出す人のこと。ジルは、無い物を作り出す能力より、改良する能力の方が優れてたんだ。」

「改良家として、様々な物を改良してきたジルは、今度は、全く新しいものを生み出したいって思った。だから、空想家になったんだ。」

「ただし、実績のない空想家は、人気もないけどね。」

「空想家に人気とかってあるの?」

 僕の疑問に、双子は不思議そうな顔をする。

「あっ、そうか!タクミには、まだ話してなかったよね。仕事の報告の仕組み。」

「仕事の成果報告は、一年に一回でいいんだけど、それは最低回数ってことで、実際は何回でもいいんだ。例えば、改良家だった時のジルの場合は、いまある技術を改良した時点で、こういう改良をしたって技術を公開するんだ。」

「そう、その公開っていう行為が、仕事の成果報告になるんだよ。公開は、エレメンテ中に情報を公開するってこと。公開する時に、過去に同じものは無いか、精霊が判断してくれる。同じものが先に公開されてたら、受け付けてくれないからね。早い者勝ちなんだ。」

「例えば、さっき乗ったホバーもいろいろな種類があるんだ。エレメンテ中で使用された回数順とか、参考にされた回数順とかでランキングになってて、その技術を開発、改良した人物の名前も分かるから、ランキングの上位にいる人物は、エレメンテ中から尊敬されるってワケ。」

「ジルは、改良家として、常に上位をキープしてた。」

「でも、ここ何年かはもう改良はやめて、ものすごく新しい物を生み出したいって言ってた。だから、常に何か新しいものはないかって、考えてた。」

「それが、空想家だよ。空想家は、斬新な考えを公開する人のこと。」

「空想家って、開発者と同じような仕事ってこと?」

「開発者は、新しいものを実際に作る人のこと。空想家は、考えだけ。実際に作るのは、開発者の仕事だよ。」

「エレメンテでは、公開された情報は誰でも使える仕組みなんだ。」

 えっ?著作権みたいなものは無いってこと?

「誰にも知られたく無いものは、公開しなきゃいいんだよ。」

「このエレメンテには、お金は無いからね。この世界で一番価値があるのは、その人にしか作れない品物!いわゆる一点物ってヤツ。」

「そうそう。しかもランキング上位者の一点物は、とてつもない価値がある。どうしてもそれが、欲しいって人は、直接本人に交渉するんだ。」

「まぁ、ランキング上位者は変な人も多いから、なかなか作ってくれないけどね。」

「こんな感じで、エレメンテの仕事にはそれぞれの分野でランキングがあって、それを仕事の励みにしてる。たくさんの人に使ってもらえる作品を作る人、熱狂的なファン1人のために作品を作る人など、仕事に対する思いは人それぞれだよ。」

「でも、共通してるのは、やりがいを感じられるってこと。」

「ジルは、有名な改良家だったからね。かなり斬新なものでも、ジルが考えたんだから、実現できるんじゃないか?と思って、挑戦する人が大勢いるんだ。」

「実際は、ジルの思いとは全然別のものが出来上がったりする。でもそれが、とても便利なものだったりするんだよ。」

「そうそう。つまり空想家の仕事は、エレメンテ中の開発者に刺激を与えて、何かを生み出すお手伝いをするってことなんだ。」

 なるほどなぁ。この世界は、アースでは考えられないようなことが仕事になってるんだなぁ。

 僕が双子の話に感心していると、突然ジルの大きな声が聞こえた。

「良し! 大まかな理論は固まった!久しぶりにチームを作るぞ!」と。


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