西園寺エヴァの憂鬱

西園寺エヴァの憂鬱 その1 失恋の憂鬱

西園寺エヴァは憂鬱だった・・・


原因は単純であの男イーエフにふられたからだった。
何故ふられたのか考え続けた。
何しろ小さなことにこだわるタイプだったので、予定していた国際的スケジュールを全てキャンセルしてまで考えた。


憂鬱の原因も結果も全てはわかっている。
それはイーエフが最後のデートの時に言った言葉の通りだ。
「あなたは、自分が飼っていた猿と婚活パーティーで知りあった私の顔が似ているので興味を持って僕と付き合ってくれた。僕はそれを恋愛と勘違いしていたが、それも今日でおしまいです。私はあいにく猿じゃないのでさようならします・・・」
そう言って彼はルビーの指輪をテーブルに置いて去って行った。


あの時、西園寺エヴァはイーエフが置いていったルビーの指輪をホテルの池に投げ捨てたが、彼女は思い直してその指輪を池から探し出すことにした。


そのホテルの支配人は西園寺エヴァがこのホテルの株主で上客でもあったので、池の水を抜き金属探知機を使ってルビーの指輪を探してくれてそれをエヴァの手に乗せた。


エヴァは池に指輪を捨てた理由を説明したら支配人はこう言った。
「何ですって！その男はあなたをふったんですか、信じられない、あなたと結婚すれば西園寺財閥の権力も財政も引き継げるし・・・いや失礼、とにかくあなたのような美人をふるなんて信じられない。その男はクレイジーだ」
「クレイジー？そうかも知れないわ、と言うか。彼には何となく普通の人間とは違うところがあるわ、私そんなところにひかれたのかも知れません、これは私のお父さんには言わないでね」
「了解しました。決して言いません。ご安心ください」