おとぎ話の惑星

おとぎ話の惑星 その1 ノックの音が

ノックの音がした・・・

エヌイー博士はその音で目を覚ました。

ここは地球から遥かに離れたとある『惑星エフジー』のとある地点のエヌイー博士の探査宇宙船の船内。
そして夜空にはに２つの大きな月が輝く深夜・・・


エヌイー博士はベッドから立ち上がりドアのスコープから部屋の外を見たが誰もいない。
誰もいるはずも無い。
部屋から出て操縦室のスクリーンで宇宙船の周囲を確認したが誰もいない。
また念のためレーダーで見渡す限り周囲を確認したが、何の存在も認められない。

ここは地球人の富裕層の為にリゾート地として開発された『惑星シータ』の高級住宅地だが、ここに住んだ人は奇妙な現象に悩ませられる為に人気を無くし、全ての人々がこの惑星を去り、残されたすべての住宅が住民のいないまま風化して廃墟になるのは時間の問題だった。
そのため地球連邦から調査を依頼されたエヌイー博士がここに派遣された。


船内のエネルギー充填室で休憩していたアンドロイド美女のジェイエルが出てきた。
『博士、何か異常がありましたか？』とジェイエルが訊いた。
「いや何も無い。いつもの様にノックの音がしただけだ」
『そうですか、異常が無ければお休みになって下さい、あとは私が観察を続けますから』
「そうだな、コーヒーを飲んで気分転換をしてから寝るとしよう」
『私がコーヒーを入れます』
ジェイエルはコーヒーマシンのスイッチを入れた。

博士はコーヒーを飲みながら言った。
「お前は最高のアンドロイドだな、まるで本物の美女のように思える」
『いやですわ。博士にそんなお世辞を言われるなんて』と言って彼女は顔を赤らめた。
「そうそんなとこがまるで人間だ」と博士は感心して彼女の顔を見つめた。

とにかくここは彼女に任せて、博士は自分の個室に行きベッドで寝ることにした。
『ごゆっくり博士、いい夢を見て下さい』
「夢か、前から思っていたんだがアンドロイドは夢を見るのかな？」　
『夢は見ますよ』
「本当か、どんな夢なんだ」
『まず、寝て目を閉じると電気羊が歩いて来ます。私は右から左へ歩いていく電気羊の数を数えます。9999匹を過ぎたあたりで、完全な眠りにつき、生体活動は休止します』
「電気羊の夢を見るのか、そう言えばそんなSF小説があったな、確かタイトルは【アンドロイドは電気羊の夢を見るか】だった。作者は確かフィリップ・K・ディック」
『私も知っています。それは【ブレードランナー】というタイトルで映画化され大ヒットしましたね』
「そうだったな、私も見たことがあるよ。ブレードランナーのタイトルの意味は【刃物を持って走る人】だから意味がよくわからんタイトルだった、考えたら考えるほど意味がわからんタイトルだ」
『さあさあ、博士そんなことを考えてないで早くお休みになって下さい』
「わかった、あとはよろしく美人アンドロイド君」

そう言って博士は自分の寝室に向かった。
ジェイエルに任せておけば何の心配も無い。
どんな状況になっても彼女の処理能力は抜群で人間の処理能力の遥か上をいっている。