福来博士の憂鬱

福来博士の憂鬱 その14 モーニングセット

そして翌朝、福来博士は元気に目覚めた。


レストランの丸いテーブルに向かうと、反町とリルがいた。
ピノコはなんか楽しげにそこら中を走り回っている。


ソフィアがやって来て言った。
「今日の朝食はモーニングセットを用意してあります」
ソフィアがそう言って軽く手を叩くと、ヒューマノイドとアンドロイドとマシンロボットの３人組がやってきた。


マシンロボットは大きなカートを押してきた。
カートの上にはフランスパンらしいのやら湯気をたてたベーコンエッグやフルーツサラダやコーヒーポットが乗っている。


大きなコーヒーポットがテーブルに乗せられると、コーヒーのいい香りが漂ってきた。
博士のコーヒーカップにコーヒーが注がれると、その香りに引き寄せられたのか、星野カップルと白ひげマスターもやってきて席についた。


「やあこれは素晴らしい香りじゃないか、飲む前に素晴らしい味だとわかるよ」とマスターは言った。
コーヒーのプロがそう言うなら間違いなく旨いはずだ。
そしてアンドロイドのリル以外はコーヒーを飲んでその、うまさに感動したようだった。
それからフランスパンにマーマレードやらスクランブルエッグを乗せてその旨さに全員感動した。
「素晴らしい味じゃのこのフランスパンは、もっともここは木星の衛星軌道だから木星パンと言った方がいいかもしれんが？」とマスターは白ひげを撫でながら言った。
「この味を地球に帰った時に再現出来たら大ヒット間違い無しじゃ」
マスターはだいぶこのパンに惚れ込んでいるようだ。
「だいたいわかってきましたよ博士」とフランスパンをかじりながら反町が言った。
「何が？」
「ヒューマノイドとアンドロイドとマシンロボットですよ」
「？」
「彼らはいつもヒューマノイドとアンドロイドとマシンロボットの３人一組で現れます。見ていてください、次も３人セットで現れますからね」
「なるほど、なかなか微妙なとこに気がついたな、参考にして見てみるよ」


それから博士は彼らが現れる度にみていたが、反町が言う通りだった。
いつもヒューマノイドとアンドロイドとマシンロボットはセットで行動しているのがわかった。


「実はもう一つ気がついた事があります」
「何だ？」
「星野カップルですが、２人は絶対に結婚しません」と反町は自信ありげに言った。
「何故だ？」
「フリンジ科学については博士のほうが上ですが、恋愛心理については僕のほうが上です。二人は戦中の悲劇的状況でお互いを確かめるのを恋愛だと錯覚していただけなんです。そして現在はお互いの存在の意味を少しずつ確かめあっているんです。どうです？そう思いませんか」
「なるほど、そう言えばそうだ・・・私は二人がすぐに結婚するものと思っていたが、今はそんな様子は全く無いもんな」
「でしょ、事恋愛に関しては僕のほうが理解でします。任せてください」
「なんかわからんが、まかせるよ」


モーニングセットを食べたり飲んだりしてくつろいでいると、ソフィアがやって来て言った。

「皆さん、今日は本格的に健康診断を始めますが、最初にショッキングな事をお願いします」
何だショッキングとは？全員の顔に緊張が走った。
猫のピノコはそんな事には関係なく床を楽しそうに走り回っている。


「皆さんの頭の髪の毛をきれいにそってもらいます。ベテランのスタッフがやりますので、皆さんは順番に椅子に座ってもらうだけです。よろしいでしょうか？」
そう言われて嫌だと言うわけにはいかない。何しろここは木星の衛星軌道だ、放り出されるわけにはいかない。
「まず、最初は猫のピノコちゃんに体験してもらいます」
そう言われて皆、ソフィアに理容室みたいな実験室みたいなところに連れていかれた。


そこには理容師みたいな手術師みたいなヒューマノイドとアンドロイドが手術着をきて待っていた。マシンロボットも掃除機みたいなもの
を持っていた。


「これよりピノコちゃんの散髪を始めます」とヒューマノイドは言った。
手術台に乗せられたピノコに麻酔注射器を当てられたピノコはすぐ眠りについた。

理容師ヒューマノイドは髭剃りのような散髪機をピノコの体を撫でるように毛を刈り取っていく、ある程度刈り取るとさらに、散髪機を取り替え微妙な部分を丁寧に刈り取り、ピノコは完全に丸裸の猫になった。
その体を消毒液のようなものできれいに拭かれて刈り取りは終了した。
丸裸になったピノコに湯上がりパジャマが着せられた。

「これでピノコちゃん刈り取りは終了しました。次は皆さんに１人ひとり順番に体験してもらいます。１番目は誰がやりますか？」
とソフィアが言った。
全員顔をみあわせた。
誰もこんな事は体験したくないと言う顔をしていたが
「はい、俺が体験します」と反町が真っ先に手を上げた。ここは俺が最初に体験するしかないなと決断したのだろう。

理容室の椅子に反町が座るとヒューマノイドがバリカンを反町の頭に当てる、ほぼ髪の毛が短くなると、仕上げのバリカンで反町の頭は完全に坊さんのようになった。
そして眉毛も顎髭も完全に刈り取られてしまった。
反町は鏡を見たが、反町イメージは完全に無くなっていた。
ここで理容室のドアが閉められ、博士たちは外に出された。
何がはじまるかと思ったが、反町は立たされパンツを脱がされた。

ここまでくれば想像がつく。
彼らは下半身の毛まで刈り取るつもりなのだ。
仕方ない今さら逃げ出すわけにもいかない。
反町の下半身の大事な部分をアンドロイドが持ち上げたりしながら、ヒューマノイドが毛を刈り上げていく。
２人がかりで反町の大事なものを守るようにしたがらその周囲の毛を刈り上げられる気分は
妙な気分になりそうなのは我慢するしかない。

そして全身の毛が無くなった反町に頭から消毒液のシャワーがかけられ、完全消毒されて体が乾かされ、風呂上がりのパジャマを着て終了。

理容室から出て来たツルツル頭の眉無し顔の反町を見て全員が驚いた。
「皆さんお待たせしました。こんなにさっぱりした反町になりました。でもなかなかいい気分かもしれない」と言って反町は笑った。

次は誰が理容室に入るか全員でじゃん拳をはじめた。
次は白ひげマスターに決まった。
マスターは剃られてしまう自分の白ひげを哀愁を込めてなでながら理容室に肩を落として入って行った。

しばらくして出てきたマスターはツルツル頭の地蔵さまのようで皆笑いながら、手を合わせておがんでしまった。

次は福来博士、その次星村風光カップル。
そして全員が終わり、お互いの顔や頭を見て鑑賞会をしていると、ソフィアがカートに化粧セットを乗せて現れた。