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「すまない。嫌だったか?」
「……わ、分かりません。いや、ではないと言いますか……」
本来なら、翼に触れられれば本能的に怯えすら感じるはずだ。そのはずなのに、センは自分の下半身が熱を帯びてしまったことに気づき、恥ずかしくて頭を抱えながら丸まった。翼で自分を覆い隠す。そうすれば、驪竜に自分の情けない顔を見られなくて済むと思ったのだ。
セン、と翼のすぐ向こうで名を呼ばれる。姉以外はもう、センのことを名前で呼ぶことはなかったし、ここに来てからは、名前で呼ばれても何とも思ったことはないのに。
(どうして、いまなんだろう)
真面目な話をしていたつもりだったのに。驪竜が翼に触れてきてから、身体に異変が起こってしまったのだ。
「セン、どこか痛むのか。灰羅を呼ぶか?!」
「は、灰羅殿は大丈夫で……あの、笑わないで下さいますか……?」
今度こそ泣きそうにながら、ひょこりとセンは顔を出してから、自身の身体を覆っていた翼を軽く広げた。ほっとした顔になった驪竜が、無理なくセンの身体を自分へと引き寄せ――それから、センが顔を赤くしたままの理由に気づいてしまった。
「それは……男の性を持つのだから、そこまで恥ずかしがることではないだろう」
「よ、翼飛の里ではいけないことと言われていて。『応』は無意味に繁殖をしてはならないからと。でも、驪竜さまが翼に触れてから、身体が……おかしいのです。驪竜さま、おれに何かしましたかっ」
熱を帯びている下半身をどうにかしたいのに、息だけがどんどんと上がっていく。驪竜が口を開くことなく、センの喉元に唇を寄せた。そんなところに口づけられるのは初めてな上に、きゅ、と吸い付かれてささやかな声がこぼれ出る。嫌になるどころか、どんどん触れてほしくなっていく己の欲が恐ろしいのに、抗うことができない。
「まるで春に咲く花のような、良い香りがする。……瑞鸞に告げたことを、真にしてしまおうか」
「まことって……あ……っ」
普段のセンでは出せないような、甘えた声が出てしまった。女官が結び直してくれた腰紐も再び解かれて、単衣の袷を乱されてしまう。身内以外には滅多に見せたことがない肢体が露わになった。
「……傷が多いな。歴戦の将のようだ」
「おれの身体、汚いので……」
そのまま熱に流されそうだったが、単衣まで脱がされかけたところで聞こえた驪竜の呟きに、センは我に返った。センの身体は、小さい頃から供物を届けるというほぼ毎日の苦行の際に、負った傷があちこちにある。余分な肉のない綺麗な体つきをしているのだが、特に背中や腕、足のあたりには大きな傷がいくつもあった。
「やっ、やっぱり……い、いけません。驪竜さまには、おれなんかよりもっと相応しい、美しい姫君が……」
「汚くなどない、美しい身体だ。触れるぞ」
センの古い傷を、驪竜の形の良い唇がなぞっていく。その気配だけでも全身を震わせてしまうのに、淡い色づきをした小さな突起の片方を優しく食まれて、センは堪らずまた声を上げた。耳を塞ぎたくなるような濡れた音と、自分の心臓が跳ねる音と――色んな音に追い込まれながら、センは驪竜を見る。この期に及んで、これは夢だろうか、と思ったのだ。
傷に触れられれば、その傷を負った時の痛みを思い出すかと思ったのに、その記憶よりもはるかに驪竜に触れられている今が強烈で、堪らない。『応』である所以の場所――後孔さえも、じわじわと熱を帯びていくのを感じる。足をもじもじとさせたセンの動きに気づいて、驪竜の手がとうとうセンの下肢に触れてきた。熱く昂り、主張しているセンの雄には触れるばかりで更にセンを悶えさせてから、後孔へと触れてきた。そこは既に、相手を受け入れる準備が整っているとばかりに潤っていて、驪竜が驚く気配がした。
「――痛くはないか?」
「お、おれは『応』なので……たぶん、大丈夫だと……はじめてなので、よく分からないのですが……」
そうか、と驪竜の低い声がすぐ近くで聞こえる。再び口づけが与えられて、その気持ちよさにセンがふっと息をついた時、ぐい、と後孔に驪竜の指が入ってくる感覚にセンは目を見開いた。たまらない異物感はあるのだが――そこは己の番いとなるべき相手を受け止めるために、必死だ。『応』はその場所で番いを迎え入れることができるといっても、一度も受け入れたことがないセンのその場所は狭いのだろう、丁重な手つきで拡げられていく動きが堪らず、センは無意識に逃げようと翼を動かした。
「セン、大丈夫か?」
「も、もうしわけ……っ」
もうほとんど泣きながらセンが謝ると、驪竜が小さく笑う気配がした。
「謝る必要はない。ゆっくりでいい――それで、瑞鸞にはどこに触れられた?」
後孔から驪竜の手が退き、代わりにセンのもので濡れたその大きな手が、緩やかにセンの雄を包み込んできた。ようやく与えられた強烈な快感に大きく背をのけぞらせると、その背に驪竜の口づけがいくつも与えられる。
「手っ、手だけで……あっ、……ぁ……も、……気持ちいっ……」
翼飛の体は準備が整うと、触れられるだけでも発情することはセンも知識として知っている。しかし、実際にそういう状況になると、冷静に対処できるわけがない。声を抑えなければ、と必死になっても、追い上げられていくと堪えることは難しくなっていく。その合間を見ながら再び後孔を慣らされると、もはや違和感といったものは消失し、ただ驪竜を求め始めていた。
「り、りょうさま……っ、い、いけない、お手を……!」
汚してしまう、と、センは驪竜の手に震える自分の手を伸ばしたが、それで止めてもらえるわけもない。駄目だ、と思ったその時――翼を食まれて、一際センは高い声を放っていた。同時に、驪竜の手に包み込まれていたセンのものが白濁を放ったが、全身を襲う愉悦は過ぎ去ってくれない。
「……あ、つい……っ」
いつも冷たくて気持ちの良い驪竜の手が、熱を帯びている。そう言いたかったのに、深く口づけられると、センの意識は溶けていってしまった。
「――俺を受け入れてくれ」
下肢に、自分のものではない熱い昂ぶりを感じて、センは必死に頷いた。
「り、りょ……あっ……――――」
ゆっくりと、熱く硬いものが己の中をこじ開け、押し入ってきた。
センの身体は、柔らかな場所を侵されながらも、驪竜を受け入れようともがく。達したばかりの敏感な身体に与えられた更なる刺激は快感へと変わり、センは自分の変質に慄いてもいた。
(これが……『応』の目覚め、なの……かな?)
驪竜のものに深く突き入れられ、最奥で迎え入れると、耐えきれずセンは涙を零した。自分が今までとは違うものになった恐ろしさと、驪竜と身体を繋げることができた嬉しさが、どんどんと押し寄せてくる波になって混ざり合っていく。
「――あ、あぁ……っ、……んっ」
「セン――」
名前を呼ばれて、嬉しくてつい笑い返し――それからは自分も野生の生き物に戻ってしまったようだった。驪竜が動く度に、抗いがたい気持ちの良さに正気が失われていく。何度もはしたない声を上げているうちに、精を放った自分自身が硬く張り詰めていることに気づかれてしまい、触れられてまた喘ぐ。
「やっ、……気持ち……い、い……!」
また、翼の付け根を驪竜が食んだ。恐ろしいまでの快楽に、センはぽろぽろと泣いたが、速くなった驪竜の動きに、無意識にセンの身体が悦んでいた。
「あっ、……な、か……で、っ」
センの後孔が強く驪竜のものを締め付け、驪竜が堪えるように唸った。一際高い声をあげてセンは脱力したが、翼やうなじに与えられる口づけにすぐさま反応して喘いでしまう。
――やがてセンが我に返ったのは、何度か驪竜の吐精を最奥で受けて、しばらく気を失った後のことだった。
「……わ、分かりません。いや、ではないと言いますか……」
本来なら、翼に触れられれば本能的に怯えすら感じるはずだ。そのはずなのに、センは自分の下半身が熱を帯びてしまったことに気づき、恥ずかしくて頭を抱えながら丸まった。翼で自分を覆い隠す。そうすれば、驪竜に自分の情けない顔を見られなくて済むと思ったのだ。
セン、と翼のすぐ向こうで名を呼ばれる。姉以外はもう、センのことを名前で呼ぶことはなかったし、ここに来てからは、名前で呼ばれても何とも思ったことはないのに。
(どうして、いまなんだろう)
真面目な話をしていたつもりだったのに。驪竜が翼に触れてきてから、身体に異変が起こってしまったのだ。
「セン、どこか痛むのか。灰羅を呼ぶか?!」
「は、灰羅殿は大丈夫で……あの、笑わないで下さいますか……?」
今度こそ泣きそうにながら、ひょこりとセンは顔を出してから、自身の身体を覆っていた翼を軽く広げた。ほっとした顔になった驪竜が、無理なくセンの身体を自分へと引き寄せ――それから、センが顔を赤くしたままの理由に気づいてしまった。
「それは……男の性を持つのだから、そこまで恥ずかしがることではないだろう」
「よ、翼飛の里ではいけないことと言われていて。『応』は無意味に繁殖をしてはならないからと。でも、驪竜さまが翼に触れてから、身体が……おかしいのです。驪竜さま、おれに何かしましたかっ」
熱を帯びている下半身をどうにかしたいのに、息だけがどんどんと上がっていく。驪竜が口を開くことなく、センの喉元に唇を寄せた。そんなところに口づけられるのは初めてな上に、きゅ、と吸い付かれてささやかな声がこぼれ出る。嫌になるどころか、どんどん触れてほしくなっていく己の欲が恐ろしいのに、抗うことができない。
「まるで春に咲く花のような、良い香りがする。……瑞鸞に告げたことを、真にしてしまおうか」
「まことって……あ……っ」
普段のセンでは出せないような、甘えた声が出てしまった。女官が結び直してくれた腰紐も再び解かれて、単衣の袷を乱されてしまう。身内以外には滅多に見せたことがない肢体が露わになった。
「……傷が多いな。歴戦の将のようだ」
「おれの身体、汚いので……」
そのまま熱に流されそうだったが、単衣まで脱がされかけたところで聞こえた驪竜の呟きに、センは我に返った。センの身体は、小さい頃から供物を届けるというほぼ毎日の苦行の際に、負った傷があちこちにある。余分な肉のない綺麗な体つきをしているのだが、特に背中や腕、足のあたりには大きな傷がいくつもあった。
「やっ、やっぱり……い、いけません。驪竜さまには、おれなんかよりもっと相応しい、美しい姫君が……」
「汚くなどない、美しい身体だ。触れるぞ」
センの古い傷を、驪竜の形の良い唇がなぞっていく。その気配だけでも全身を震わせてしまうのに、淡い色づきをした小さな突起の片方を優しく食まれて、センは堪らずまた声を上げた。耳を塞ぎたくなるような濡れた音と、自分の心臓が跳ねる音と――色んな音に追い込まれながら、センは驪竜を見る。この期に及んで、これは夢だろうか、と思ったのだ。
傷に触れられれば、その傷を負った時の痛みを思い出すかと思ったのに、その記憶よりもはるかに驪竜に触れられている今が強烈で、堪らない。『応』である所以の場所――後孔さえも、じわじわと熱を帯びていくのを感じる。足をもじもじとさせたセンの動きに気づいて、驪竜の手がとうとうセンの下肢に触れてきた。熱く昂り、主張しているセンの雄には触れるばかりで更にセンを悶えさせてから、後孔へと触れてきた。そこは既に、相手を受け入れる準備が整っているとばかりに潤っていて、驪竜が驚く気配がした。
「――痛くはないか?」
「お、おれは『応』なので……たぶん、大丈夫だと……はじめてなので、よく分からないのですが……」
そうか、と驪竜の低い声がすぐ近くで聞こえる。再び口づけが与えられて、その気持ちよさにセンがふっと息をついた時、ぐい、と後孔に驪竜の指が入ってくる感覚にセンは目を見開いた。たまらない異物感はあるのだが――そこは己の番いとなるべき相手を受け止めるために、必死だ。『応』はその場所で番いを迎え入れることができるといっても、一度も受け入れたことがないセンのその場所は狭いのだろう、丁重な手つきで拡げられていく動きが堪らず、センは無意識に逃げようと翼を動かした。
「セン、大丈夫か?」
「も、もうしわけ……っ」
もうほとんど泣きながらセンが謝ると、驪竜が小さく笑う気配がした。
「謝る必要はない。ゆっくりでいい――それで、瑞鸞にはどこに触れられた?」
後孔から驪竜の手が退き、代わりにセンのもので濡れたその大きな手が、緩やかにセンの雄を包み込んできた。ようやく与えられた強烈な快感に大きく背をのけぞらせると、その背に驪竜の口づけがいくつも与えられる。
「手っ、手だけで……あっ、……ぁ……も、……気持ちいっ……」
翼飛の体は準備が整うと、触れられるだけでも発情することはセンも知識として知っている。しかし、実際にそういう状況になると、冷静に対処できるわけがない。声を抑えなければ、と必死になっても、追い上げられていくと堪えることは難しくなっていく。その合間を見ながら再び後孔を慣らされると、もはや違和感といったものは消失し、ただ驪竜を求め始めていた。
「り、りょうさま……っ、い、いけない、お手を……!」
汚してしまう、と、センは驪竜の手に震える自分の手を伸ばしたが、それで止めてもらえるわけもない。駄目だ、と思ったその時――翼を食まれて、一際センは高い声を放っていた。同時に、驪竜の手に包み込まれていたセンのものが白濁を放ったが、全身を襲う愉悦は過ぎ去ってくれない。
「……あ、つい……っ」
いつも冷たくて気持ちの良い驪竜の手が、熱を帯びている。そう言いたかったのに、深く口づけられると、センの意識は溶けていってしまった。
「――俺を受け入れてくれ」
下肢に、自分のものではない熱い昂ぶりを感じて、センは必死に頷いた。
「り、りょ……あっ……――――」
ゆっくりと、熱く硬いものが己の中をこじ開け、押し入ってきた。
センの身体は、柔らかな場所を侵されながらも、驪竜を受け入れようともがく。達したばかりの敏感な身体に与えられた更なる刺激は快感へと変わり、センは自分の変質に慄いてもいた。
(これが……『応』の目覚め、なの……かな?)
驪竜のものに深く突き入れられ、最奥で迎え入れると、耐えきれずセンは涙を零した。自分が今までとは違うものになった恐ろしさと、驪竜と身体を繋げることができた嬉しさが、どんどんと押し寄せてくる波になって混ざり合っていく。
「――あ、あぁ……っ、……んっ」
「セン――」
名前を呼ばれて、嬉しくてつい笑い返し――それからは自分も野生の生き物に戻ってしまったようだった。驪竜が動く度に、抗いがたい気持ちの良さに正気が失われていく。何度もはしたない声を上げているうちに、精を放った自分自身が硬く張り詰めていることに気づかれてしまい、触れられてまた喘ぐ。
「やっ、……気持ち……い、い……!」
また、翼の付け根を驪竜が食んだ。恐ろしいまでの快楽に、センはぽろぽろと泣いたが、速くなった驪竜の動きに、無意識にセンの身体が悦んでいた。
「あっ、……な、か……で、っ」
センの後孔が強く驪竜のものを締め付け、驪竜が堪えるように唸った。一際高い声をあげてセンは脱力したが、翼やうなじに与えられる口づけにすぐさま反応して喘いでしまう。
――やがてセンが我に返ったのは、何度か驪竜の吐精を最奥で受けて、しばらく気を失った後のことだった。
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