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モノクロ2
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なんとなく、見覚えのある街だがどこかはわからない。
日本ではないのだろうな、と、感じるものがあるのだが、なにぶん頭が朦朧としていてうまく働かない。
海外のどこかだと思うし、行ったことも、それまで関心を持ったこともない知らない場所を、ただ歩いている。
曖昧さと、現実感が頭の中に同居していて、その矛盾を持って今は夢の中にいるんだ、と判別できる。
妙な気分だ。
どこにも存在しなくて、どこかに確実に存在している場所を歩いているのだから。
空には、曖昧で具体的な太陽が沈みかけている。
周りに建物は少ないが、どこかの住宅街だと思う。土地が広い。
そして何も動くものがない。
動くものが何もないくせに、道端には原付が列を成して並んでいる。
なのに道路には車が一台も走ってない。
生暖かい風で揺れる木の葉が、唯一現実味を帯びている。
やがて、路上で人間が倒れているのを見つける。
うずくまって屈んでいるが、死んでいるのがわかる。
それを見ているうちに……
それを見ているうちに呼吸の仕方を『忘れた。』
今まで惰性でやってきてたことが、一体どういう複雑なメカニズムでこなしていたことなのか、わからなくなってしまい、
頭がいつもの十倍働いているのに体が全く思うように動かなくなり、これが混乱の渦中にいるのだと肌で感じた頃には、自分も同じような姿勢になっていた。
頭の中は冷たく、死ぬことを受け入れ始めた頃、
一本の木の麓にいることがようやく分かった。
体の先から感覚がなくなっていく中で、なぜかその木に、視線が行った。
* * * * *
「ああ!!」
自分の声の大きさで、中条は目を覚ました。
白い部屋、白いテーブルに白い壁と天井。
最近こういうのが多いな。自分の顔を触った時に、寝汗で水浸しだった。
まだ、指先とか、唇とかがしびれている。
死ぬ夢というのは、一般的にはいいものとされており、
自分の中で大きい変化を予兆するものとされている。
自分が『死ぬ』夢なんてなあ……と、中条は呆れてしまった。
大きい変化か……。
壁に立てかけてある、黒い釣竿に視線が行った。
アルフレッドはあの後、結局一人で奥多摩に行った。渓流釣りが全くわからないながらも一人で釣りをしに行ったのだという。
勇気のある男だ。
そうなるように、仕向けたのは自分達だし、相当苦労もしたのだがそれでも感心してしまった。
なので、ここにくる前には釣りの経験のある中条が、現地に偶然居合わせたおせっかいな中年釣り師としてアルフレッドに釣りを教える係になったのだ。
そして、アルフレッドが奥多摩に来るのは、早いものでもう四回目である。
あれからもう一ヶ月経ろうとしており、アルフレッドは暇さえ見つければ奥多摩に来るようになった。
そして、奥多摩にも釣りにも詳しくなり始めてきている。
中条はすっかり、『シショウ』と慕われている。
釣りで、誰かの師匠になるなんて思っていなかった。
これでアルフレッドが奥多摩に別荘を持ってくれるかどうかはまだわからないが、いい傾向ではあるし、
中条にしてもここ数日は、アルフレッドに会うのが楽しくなってきていた。
* * * * *
喜んでばかりもいられないのは、
新しい作戦が上から告げられたことである。
まだ続くのか……と、正直思ってしまった。
別に、辛くもない任務だが、やはり何も知らないで付き合わされないといけないのは気分が悪い。
今していることが、何になるのか、全くわからない。
本当にこれが、世界大戦を終結させる手段につながっていくのだろうか? 中条本人も疑問に感じ始めていた。
テーブルの上には『最高機密』と書かれたいつもの資料が置かれていた。
そこには、見覚えのある女性の顔と名前が書かれている。
上田美代子。金沢に住む女性研究員で、何かの本だかなんだかを、偶然を装って渡したはずだ。
前回は、本。
今回は、帽子である。
彼女にまた、天啓めいた道筋を歩かせて、とある帽子を手に入れさせなければ、戦争終結につながらないのだという。
……考えたらついていけなくなるので、考えない事にした。
最高機密の資料は、灰皿の上で燃やした。
日本ではないのだろうな、と、感じるものがあるのだが、なにぶん頭が朦朧としていてうまく働かない。
海外のどこかだと思うし、行ったことも、それまで関心を持ったこともない知らない場所を、ただ歩いている。
曖昧さと、現実感が頭の中に同居していて、その矛盾を持って今は夢の中にいるんだ、と判別できる。
妙な気分だ。
どこにも存在しなくて、どこかに確実に存在している場所を歩いているのだから。
空には、曖昧で具体的な太陽が沈みかけている。
周りに建物は少ないが、どこかの住宅街だと思う。土地が広い。
そして何も動くものがない。
動くものが何もないくせに、道端には原付が列を成して並んでいる。
なのに道路には車が一台も走ってない。
生暖かい風で揺れる木の葉が、唯一現実味を帯びている。
やがて、路上で人間が倒れているのを見つける。
うずくまって屈んでいるが、死んでいるのがわかる。
それを見ているうちに……
それを見ているうちに呼吸の仕方を『忘れた。』
今まで惰性でやってきてたことが、一体どういう複雑なメカニズムでこなしていたことなのか、わからなくなってしまい、
頭がいつもの十倍働いているのに体が全く思うように動かなくなり、これが混乱の渦中にいるのだと肌で感じた頃には、自分も同じような姿勢になっていた。
頭の中は冷たく、死ぬことを受け入れ始めた頃、
一本の木の麓にいることがようやく分かった。
体の先から感覚がなくなっていく中で、なぜかその木に、視線が行った。
* * * * *
「ああ!!」
自分の声の大きさで、中条は目を覚ました。
白い部屋、白いテーブルに白い壁と天井。
最近こういうのが多いな。自分の顔を触った時に、寝汗で水浸しだった。
まだ、指先とか、唇とかがしびれている。
死ぬ夢というのは、一般的にはいいものとされており、
自分の中で大きい変化を予兆するものとされている。
自分が『死ぬ』夢なんてなあ……と、中条は呆れてしまった。
大きい変化か……。
壁に立てかけてある、黒い釣竿に視線が行った。
アルフレッドはあの後、結局一人で奥多摩に行った。渓流釣りが全くわからないながらも一人で釣りをしに行ったのだという。
勇気のある男だ。
そうなるように、仕向けたのは自分達だし、相当苦労もしたのだがそれでも感心してしまった。
なので、ここにくる前には釣りの経験のある中条が、現地に偶然居合わせたおせっかいな中年釣り師としてアルフレッドに釣りを教える係になったのだ。
そして、アルフレッドが奥多摩に来るのは、早いものでもう四回目である。
あれからもう一ヶ月経ろうとしており、アルフレッドは暇さえ見つければ奥多摩に来るようになった。
そして、奥多摩にも釣りにも詳しくなり始めてきている。
中条はすっかり、『シショウ』と慕われている。
釣りで、誰かの師匠になるなんて思っていなかった。
これでアルフレッドが奥多摩に別荘を持ってくれるかどうかはまだわからないが、いい傾向ではあるし、
中条にしてもここ数日は、アルフレッドに会うのが楽しくなってきていた。
* * * * *
喜んでばかりもいられないのは、
新しい作戦が上から告げられたことである。
まだ続くのか……と、正直思ってしまった。
別に、辛くもない任務だが、やはり何も知らないで付き合わされないといけないのは気分が悪い。
今していることが、何になるのか、全くわからない。
本当にこれが、世界大戦を終結させる手段につながっていくのだろうか? 中条本人も疑問に感じ始めていた。
テーブルの上には『最高機密』と書かれたいつもの資料が置かれていた。
そこには、見覚えのある女性の顔と名前が書かれている。
上田美代子。金沢に住む女性研究員で、何かの本だかなんだかを、偶然を装って渡したはずだ。
前回は、本。
今回は、帽子である。
彼女にまた、天啓めいた道筋を歩かせて、とある帽子を手に入れさせなければ、戦争終結につながらないのだという。
……考えたらついていけなくなるので、考えない事にした。
最高機密の資料は、灰皿の上で燃やした。
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