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三章までの間話
155、契約と付与①(ウル視点)
しおりを挟む149話『お尻を』の後、ウルがサースと何を話したのか。
本編に入れるか迷ったのですが、説明がくどくなりそうだったので割愛しました。
ウル視点です。凄く長くなったので3話に分割してます。
ー ー ー ー ー
どうしよう、日に日にデオの色気が止まらなくなっている気がする……?
というより、前よりも自分から求めてくるようになったような気がするのだ。
俺としては嬉しいのだけど、何故だか凄く違和感を感じてしまう。
───そう、確かに違和感はあるんだよね。
でも、今はそんな事よりも!
常に色気が漏れてるデオを宿に一人にしても大丈夫だったのか、俺はもうその事が不安で不安でそれ以外の事を考える余裕はなくなっていた。
俺が帰るまでにデオが襲われてたらどうしよう。心配だからなるべく早く用事を済ませないと……。
そう思い焦っている俺は今、サースの店……いや、今は俺の店であるアクセサリー屋へと来ていた。
本当ならデオともう少しだけピロートークでもしたかったんだけど、サースに「残ってるデオルライド様の精液で何か付与できますが、ただし期限は今日中です」と、言われてしまったのだ。
そんな事を聞いたら、急いでお店へと戻ってくるしかないよねぇ……?
そんなわけで俺は今、この店にいる。
しかしサースは「主従契約を先に結んでからじゃないと付与はやりません」と、俺に交換条件をだしてきたのだ。
それなら主従契約はさっさと終わらせて、付与をしてもう事にしよう。
そう思いながら俺は今、サースを待っているところだった。
「マスター、準備が整いましたのでこちらへ」
「うん、早く契約なんて終わらせようね~」
どうやらサースは、俺とデオが汚してしまった部屋を今まで片付けていたらしい。
そして改めてその部屋に入った俺は少し驚いた。
「へ~、この部屋がさっきまで精液まみれになっていたなんて信じられないよ。ここまで綺麗になるもんなんだねぇ」
「恥ずかしながら、慣れておりますので……」
つまりそれは、今までに何人もの人がアレの餌食になったという事になる。
しかし誰が犠牲になろうが俺には関係ないし興味もないので、深く聞くつもりはない。
だって俺はサースに早く契約と付与をして貰って、可愛いデオのもとへと帰るんだから……。
「契約さえすれば、もう禁呪に頼らなくていいんだしさっさと終わらせよう」
「はい、よろしくお願いします」
頭を下げるサースを見ながら、そういえば主従契約なんてした事ないな……なんて、俺は呑気に思っていた。
「……一応伝えておくけど、俺は主従契約を結んだ事がないんだよね。だから主従契約をしていたサースに、コツとか聞いてもいいかな?」
「そうですね……主従契約をするには『従』の命に一番近い場所へと刻印を、『主』は人に見えない場所へ刻印をとされています。それは命に近ければ近いほど『主』へと服従している、という事になり『従』の能力を最大限引き出す事が出来るのです」
「成る程ね~、だけど契約すると俺にも刻印が残るって事か……」
うーん、跡が残るのは少し嫌だな。
そう思っているのがどうやら顔に出ていたのか、サースはさらに詳しい説明をしてくれたのだ。
「確かにマスターの仰るとおり刻印は残ります。ですが重要なのは『従』へと刻印する場所であって、『主』の刻印は『従』にとっての目印でしかありません。そのため、殆どは人から見えない場所に刻印が浮かび上がるそうですよ?」
「つまり今の話だと『主』は刻印の場所が選べないって事なのかな?」
「私の時はそうでしたので、おそらくは選べないのだと思います……ですが『従』に刻印する場所は選べますので、お好きな場所へと刻印してください」
サースは刻印しやすいように手を広げ、俺が動くのをじっと待っているようだった。
「ふーん、つまり俺が適当な場所に契約魔法の刻印を施しても、文句は言わないって事かな?」
「ええ、命に近い場所であればどこでも……心の臓に直接でも私は全く構いません。それにマスター程の使い手であれば、私の服を脱がさずとも心臓へと直接魔法陣を刻む事は容易い事でしょう」
「まぁ、確かにそうだね」
何だか今の話だと、サースはなるべく命の近くへと刻印をつけて欲しい、そう言っているように聞こえたのだ。
もしかすると元の契約を上書きする為には、前よりも強固な契約にしないといけないのかもしれない。
「それじゃあ、契約するけど心の準備はいい?」
「はい、いつで構いません」
頷くサースを見てから、俺は指を軽く動かして魔法陣を宙に描き始めた。契約をした事がないだけでその魔法陣は覚えている。
迷いのない手つきで綺麗な円を描き必要な文字を書き込み終えた俺は、サースの心臓付近へ魔法陣を刻み込むため最後にフッと息を吹きかけた。
「ぐぅっ……!」
魔法陣が刻印されたからなのか、サースは突然胸を押さえて座り込んでしまったのだ。
「ふーん、魔法陣を刻み込まれると苦しいんだ?」
「……そ、そうですね。ほんの一瞬でしたが、心臓を鷲掴みされた気分でした……ですが、もう平気なようです」
「そっかー、なら良かった。それで、あとは『主』の契約書にサインすればいいんだっけ?」
俺はサースの魔法陣から契約書を引き摺り出す。
そして徐々に浮かび上がる文字列に、俺はサッと目を通していた。
その内容は簡単に言うと『主』と『従』の決まり事が書かれており、それを守りなさいと書いてあるだけのようだった。
そしてその契約書を最後まで読むと、そこには既に誰かのサインが書かれていた。
そういえばサースから聞いた話では、妖精の契約をサースが引き継いだんだっけ?だからサースは自分自身と契約しているという、意味不明な状態だと言っていた筈だ。
そう思いながら改めてサインをよく見ると、確かに今の契約書にはサースの名前が書かれていた。
多分このサインを上書きすればいい筈だから、一度サインを消して俺の名前を書けばいいのかな?
そう思いながら、俺はその契約書のサインを書き換える。そして最後に俺の血判を押すと、契約書は新たな魔法陣へと形を変え俺の足へと吸い込まれていったのだった。
「うーん、特に痛みもないけど……これで契約は終わったのかな?」
「………………………」
「サース……?」
契約が終わったと言うのに、サースが何も言ってこない事を不思議に思った俺は、改めてサースを見て固まった。
「……は?」
「……マスター、これは凄いですよ。今まで抑えられてた力がどんどん溢れてきます!」
確かに今のサースは魔力が有り余っているのか、薄っすらと光っていた。
だけどそこにいたのは、何故か先程までいたはずのサースとは全くの別人で───。
「え?誰……?」
「誰って、サースですよ。ほら、先程マスターと主従関係になったばかりの!」
「いや、そう言われても体が……それに声も高くない?」
「……体?」
サースは首を傾げ、近くの鏡まで転けそうになりながら走り寄っていった。
そして自分の姿を確認して、驚きのあまり声をあげたのだ。
「誰ですか、この美少年!!?」
サースが驚くのも無理はない。
見た目は何故か若返り、その顔にはサースの面影すらなくなっていたのだから……。
そして俺には今のサースがどう頑張っても、10歳ぐらいの子供にしか見えなかった。
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