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第二章 錬金術師編
18、失敗(前編)
しおりを挟む「ダメです……何度レシピ通りに作っても失敗してしまいます」
とうとう弱音を吐き始めたルーディアを、心配そうに見つめる俺がそこにはいた。
それはルーディアが調合を開始して、もう何度目かの挑戦のことだった。
今日はようやく集まった素材を渡すため、俺はルーディアのアトリエに来ていた。
そしてルーディアは、なるべく早く調合を行う事ができるように、すでに準備を終えて待っていてくれたのだった。
意気揚々と調合を始めたルーディアは、最初の頃はあと少しで出来そうな気がします!と、元気に腕を動かしていたが何十回も連続で失敗した事により、とうとう手をだらんと下げてしまった。
「やはり僕にはSランクの調合なんて出来ないんだ……」
「そんな」
「そんなことないって言いたいんですか!?でも僕にはもう出来る気がしない……。あと少しだと思ったのは本当なんです。途中までレシピ通りに行えていたし、分量もおかしくなかった。後は僕の腕が悪いとしか……すみません、一度頭を冷やしますね」
顔を歪ませて自分の手を見つめるルーディアは、俺の前にある椅子に深く腰掛け目を瞑った。
その様子に俺は驚きを隠せないでいた。
ルーディアに出会ってまだ2回目だけど、こんな風に声を荒立てるタイプとは思わなかったからだ。
俺の中でルーディアは、真面目だけど少し頭が固くて何事も冷静に対処できる。
そんな人物だと勝手に思い込んでいた。
でもそれは俺が勝手に作り出したイメージであって、本当はそうじゃないのだろう。
だからだろうか、何故か焦っているその姿をみて、ルーディアの事を少し知りたくなってしまったのだ。
「あの……ひとつ、聞いてもいいか?」
「……はい。なんでしょうか?」
「えっと、依頼した俺が言うのもなんだが、どうして俺のことをそこまで真剣に考えてくれるんだ?」
正直な話、俺はダメだったらまた他の人を探して頼めば良いかな?ぐらいにしか思っていなかったのだ。
だからそんな真面目に向き合われると、今後どうすればいいのかわからなくなってしまう。
少しの沈黙ののち、ルーディアはゆっくりと顔を上げ俺を見つめる。
しばらく見つめあっているとルーディアは突然立ち上がり、何故だかわからないけど俺の隣に座った。
そしていまだに凄く見つめられているのがわかる。
いや、なんで??
ルーディアは真面目だから、真剣な話をするときはなるべく近くで見つめ合うものだと、考えているのかもしれない。
俺には少しハードルが高過ぎたので、ルーディアをチラッと見るだけにした。
「余り楽しいものではありませんが、聞いて頂けますか?」
俺はこくりと頷くと、そのまま手を握られてしまう。
そして、ルーディアはゆっくりと過去の話をし始めたのだった。
なんでも昔から平民育ちのルーディアは、子供の頃母親と暮らしていたそうだ。
それなのに、たった一人の家族であるその母親を、ルーディアは病気で亡くしている。
そのために錬金術師を目指したきっかけも、母親だと言う。
そんなルーディアは子供の頃、病気の母を治すため色んな病院へ足を運んでいた。
なによりその病気を治すには、普通の薬よりもワンランク上の薬ではないとだめであり、それには大金が必要だったのだ。
そのためにお金を稼ぐ必要があったルーディアは、小遣いを稼ぐために母が見てもらっている病院で、薬草摘みの手伝いをしていたそうだ。
そしてルーディアの話は続いた。
ある日、薬草を摘んで戻ると医者と言い争う男の声が聞こえてきた。
ルーディアはそっと声がする窓を覗き込んだ。
「何故、依頼を受けてくれんのだ!お前程の錬金術師の才能があれば、ランクの高い薬を作る事も出来ると言うのに!!」
どうやら相手は医者の息子だったようで、彼は錬金術師らしかった。
それも腕がとても良い錬金術師だったのだろう。
この人なら母親の病気を治す薬が作れるかもしれないと、一瞬希望を持ったルーディアだったが、すぐにそのことを後悔することになる。
その人物は、とても最低な人間だったからだ。
「クソ親父、この世界は金と名誉が全てだ。こんな小さな病院に卸してたんじゃ、意味がねぇんだ。あれは貴族用に作ってるんだからな!用はそれだけか?」
「ま、待ちなさい!!」
「けっ、くだらねぇ。もうこんなことで呼ぶんじゃねえぞ!」
そう言って立ち去るその姿にルーディアは絶望し、憎しみの感情を抱いたのだった。
きっと錬金術師には最低な人間しかいないんだと。そう決めつけたルーディアは、それと同時にある事に気がついた。
錬金術師になれば母親を救えると───。
でも、その願いは叶うことはなかった。
ルーディアはせっかく錬金術師になれたのに、母に薬を作るのが間に合わなかったのだ。
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