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第二章 錬金術師編
18、失敗(後編)
しおりを挟む母のことを辛そうに話すルーディアを、俺は先程から黙って見ていた。
まさかこんな重い話をされるとは思っていなくて、間に言葉を挟むことなんて出来なかったのだ。
そんなルーディアは、誰かに懺悔するように嘆いていた。
「せっかく錬金術師になれたのに、僕は間に合いませんでした。それどころか、まだその薬を作る事すら出来ません。でも僕はあの人みたいになりたくないのです!困っている人、誰にでも手を伸ばせるような錬金術師になりたい。それが僕の夢でしたから」
そう話終えたルーディアは、少し寂しそうな目をして、最後にポツリと呟いた。
「僕にはやはり才能がなかったんです。だから僕には無理なんです」
そう言いつつ無意識に、俺の手を強く握り締めたルーディアは、少し震えていた。
そんなルーディアを見た俺は、今まで錬金術師はルーディアじゃなくても良いなんて、気軽に考えていたその考え自体を、改めることにしたのだ。
だってこのままじゃダメだ。
これではルーディアの夢さえも潰す事になってしまう。だから絶対にこの調合を成功させて欲しい……このままルーディアに諦めて欲しく無いから。
そう思うと、俺は俯くルーディアをそっと抱きしめた。
「俺はどんなに時間がかかっても、ルーディアに調合をして欲しい。それにルーディアなら絶対に成功させられるって信じてるから」
本当は死ぬまであと数年しかないので、ゆっくり出来るわけじゃない。でもルーディアにかけてみたかった。
俺はルーディアの頭をゆっくりと撫でて語りかける。
「ルーディアは俺とそのお母さんを重ねて見てるんだよな?だから俺を助けようとしてくれてる」
「……その通りです。僕は気がつかないうちに君と母を重ねて、母が亡くなったときのように、君もすぐに亡くなってしまうのではないかと、焦ってしまったのです」
「俺はすぐに死なないし、死ぬ気もないからな。そんな俺がついてるんだ。まだチャンスはあるからさ……ほら、顔を上げろ」
そういうと、ルーディアはゆっくりと俺の顔を見た。その瞳が大きく揺れる。
「その、失礼かもしれませんが……セイの顔をしっかり見たのは初めてですね」
「あー、それはいつもフードを被ってるからな。仕方がない」
そういいつつ、俺はフードを深くかぶる。余り見られる訳にはいかないから。
「君は何だか母に似ている気がします……」
そう言いつつルーディアは俺の髪をサラリと撫で、俺の瞳をじっくりと見つめてきた。
「母親は少し濁っていましたが、金髪に金色の瞳だったんです。だから余計に重なって見えてしまったのかもしれませんね……」
「それなら……俺のこと、今だけ母親だと思ってくれていいから」
咄嗟に思いついた事を、ポロッと口に出してしまってから、しまったと思い始める。
男の俺にいきなりそんなこと言われても、気持ち悪いだけだよな……もう少し考えて話すべきだった。
ルーディアの顔を見ると、やはり唖然とした顔をしている。
そらそうだと、俺は咄嗟に言い訳をしようと口を開いた。
「ち、ちが……」
「いいのですか??」
「え?」
俺の言い訳を遮るように、ルーディアから溢れたその言葉で、今度は俺がポカンとしてしまう。
この人、今なんていった?
「抱きしめている間だけで構いません。僕の母になってください」
「……あ、ああ。任せておけ!俺は今、ルーディアのお母さんだ!」
困惑する俺は、その勢いのまま訳の分からない事を口走る。
ルーディアが良いと言うのなら、もうどうにでもなれ!
俺は自棄になってルーディアを強く抱きしめた。
それを返すようにルーディアも、俺を強く抱きしめてくる。
すると突然涙を流し始めたルーディアは、しゃくりながらもポツリポツリと話し始めたのだった。
「母さん……僕は、母さんを救えなくてごめん。母さんを救う為に錬金術師に成ろうとしたのに、そのせいで母さんが亡くなったときに間に合わなくてごめん……」
その姿に俺は何も言わず、ひたすら頭を撫でてやる。邪魔をしないで俺が出来ることは、これぐらいだからだ。
「母さん、大好きだったよ。だから母さんとの約束を守る為に、僕は立派な錬金術師になってみせるから。ずっと見守っていて……」
いい終わると同時に、ルーディアがさらに俺を強く抱きしめた。とても感動的なんだけど、きつく抱きしめられた俺は苦しくて、それどころでは無くなっていた。
やばい、このままだと死ぬ……。
意識が遠のいてきたころ、ルーディアは俺から体を離したが、何故か両手を俺の頬にそえてスリスリと撫ではじめた。
その行為に俺は気恥ずかしくなったのに、ずっとルーディアがこちらを見つめてくるので、紫色の瞳から目が離せない。
暫くして満足したのか、ルーディアは完全に俺から離れると、向かいの椅子に座った。
「セイ、ありがとうございました。恥ずかしいところを沢山お見せしてしまいましたね」
その顔はもうスッキリしていて、先程までの弱音を吐いてたルーディアはそこにはいなかった。
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