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第三章 調合編
23、無理をしたツケ?(前編)
しおりを挟むダンのところから戻ってきたあの日、部屋に着いた俺は気がついたら床へと崩れ落ちていた。
そのとき何故か意識だけはハッキリしており、ただ苦しくて動けないという、今までにない不可思議な状態でもあった。
いつもだったら倒れてすぐ気絶してしまうため、こんなことは一度も無かった。
それなのに、何故か症状はいつもより酷いものだったのだ。
そしてベットから出られない日がもう4日も経ち、今はすでに夜である。
だけど体の調子は良くなる気配が全く無い。
確かに最近、動き回れるようになるまでの日数が、以前より必要だとは思っていた。
最初は疲れているだけだと思っていたが、どう考えても悪化の一途を辿っているようにしか思えないのだ。
そんな俺は明日、誕生日を迎える。
もう……17歳になるのだ。
これは本当に、死期が近づいて来ているのではないだろうか。
そう考えて、俺はステータス画面を確認する。
そこには俺の数値と減少値が表示されていた。
数値はどう見てもよくない。でもダンに貰ったヒーリングピアスは、間違いなく効果を発揮している。
それなのに減少値の増加は、前にも増して酷くなっていく一方だった。
そして俺のベット横では、ライムが心配そうにこちらをずっと見つめている。
確かにこんなにも悪化しているのは久しぶりなのだから仕方がない。
とにかく安心してもらえるように、俺はライムに話しかけていた。
「ライム、今日は明日に備えて早めに休むからもう下がっていいぞ」
「ですが……」
「大丈夫だ。明日になれば動き回れる自信がある」
確かに今の体調からすると、明日になれば動けるのは間違いない。だけど俺には、ほんの少しだけしか動けないという事がわかってしまっていた。
……俺はつい見栄を張ってしまったのだ。
そんな俺をライムはジィーっと見つめ、呟いた。
「………………嘘ですね」
「う、嘘じゃない……」
何故かすぐにバレてしまって、俺は視線を逸らす。
そんな俺の態度に、ライムはため息をつく。
しかしこれ以上問い詰めることは諦めたのか、ライムはベットから離れたのだった。
「では、もう就寝の時間ですから灯は消しますよ」
「ああ……」
なんとか誤魔化せたかなとホッとしつつ、ライムが部屋の灯りを消すのを見守る。
しかし消灯後、いつも部屋から出ていくはずのライムは、何故か俺の方へと戻ってきたのだ。
そしてベットの横で立ち止まると、そのまま俺を見つめているのがわかった。
ただ部屋はもう暗いため、その表情は見えない。
「……主、いえイルレイン様。どうか私のわがままにお付き合い下さいませ」
「え?ど、どうしたライム」
突然、わがままに付き合えと言い出したライムに、俺は首を傾げる。しかしライムはそんな俺に構わずベットに腰掛けた。
そしてライムは俺の横に手をつくと、顔を近づけてくる。
何故かそのときの俺は動く事もできず、その様子をスローモーションのように、ぼーっと見続けていた。
気がついたときには、もう目前にライムの顔があった。
ライムは、俺の頬に手を添えて……。
───そのままキスを落とした。
「んっ!!?」
俺は驚きの余り声を上げる。
でも驚いたのはキスをしたからじゃない。
ライムが俺の魔素を、口から無理やり吸い取ろうとしていたからだ。
ライムはマニと違って、体に魔素をそんなに蓄えられる訳じゃない。それなのに俺の体にある膨大な魔素を、無理やり奪い去ろうとしているのだ。
そんな事をしたら、ライムが魔素に蝕まれて耐えきれずに爆発してしまう!!
「んぅっ……、やめろ!ライム……そんな一時的な措置じゃ、意味が……!」
「やめません!!主が何と言おうが、わたしが、私がイルレイン様を救って見せますから……!」
そう言うと、ライムはまた無理やり唇を奪う。
激しく見えても、実は啄むような優しいキスだったのだが、これは俺を救う為に命を削る行為である。
もちろん、それを続けさせるわけにはいかない。
だから俺は心の中で叫んでいた。
くそ、絶対にライムを失いたくないのに!
だって俺は、ライムを失ってまで生き延びたいわけじゃないんだぞ!!
ライム、お前は俺の気持ちがわかっているのか!?
俺はライムを睨みつけ、体が先程より少し動くようになったことを確認する。
それだけライムが負担を背負ってくれているということに、胸が苦しくなる。
悪いが、ステータス見せてもらうぞ!
俺はライムのステータスを表示し確認する。
魔素によって蝕まれたライムのステータスは、やはり生命力が徐々に減少している事がわかった。
このままいけば数分後には、ライムは耐えきれずに核ごと爆散してしまうだろう。
だからこそ少しだけ動く腕を徐々に移動させて、近くにいてくれたマニを掴んだ。
そしてこれ以上、ライムが俺から魔素を吸収できないように魔術を発動したのだった。
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