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第四章 悪魔召喚編

31、お祝いと仮面と(前編)

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祝福の鈴と、時の調律がとうとう出来上がった。
この数日間、俺はそのことでとても浮かれていた。
そのせいで、ずっとそれの事を忘れていた俺は、とんだおバカである。


「主、呪いを解くための素材が二つも増えた事は、とても喜ばしいことだと思います。勿論私もとても嬉しく思っております。だからこそお祝いの準備をしなくてはならないのですが、それにはやはり必要な物があると思うのです。それについて主はどう思われますか?主、ちゃんとこちらを向いてお答え下さい」

早口でそう言うライムは、口では俺を祝いつつもその瞳はとても冷たい。
そして俺は冷や汗を流しつつ、ライムから視線を動かせないでいた。

どうしよう。なんでかわからないけど、ライムが怒ってる……!!
だって俺の頬は両手で押さえられ、そのせいで顔は動かない。なにより絶対にその瞳から、逸らすことを許してくれないのだ。

なによりライムは、怒っているといつも瞳で訴えかけてくる。きっと俺がそれに弱いということを知っているからだろう。


「えっと、ライム……祝ってくれてありがとう。あと残りの2つも頑張って手に入れるので、今は手を離してもらえないかな……?」
「ダメです。主は何故私がこんなことをしているかわかっていますか?」
「すみません!わかりません……」

そんな俺の答えにライムはため息をつくと、左手の親指で俺の目尻をゆっくりと撫でる。そして右手が離れた思ったらその手にはある物が握られていた。

俺は最近、それを見た覚えがある。
そんなことを思っている間に、ライムは俺の顔にそれを装着したのだった。

「あ!ライムから貰った仮面……」

誕生日の日に貰ったそれは、後で確認しようと思ったのになんやかんやあって、そのまま忘れてしまっていた物だった。

この仮面は目元から鼻を覆い隠し、その表面は黒く光沢質である。シンプルなそれはパーティーなどにつける派手やかさはない事から、実用面で使用される物なのだろう。

そんな事を貰ったときは思ったのだが、実際に付けてみるとつけ心地も悪くなかった。
俺に仮面を付けたライムは、まだ怒っているはずなのに、アッサリ俺から離れるとその姿を観察しだした。

「やはりとても似合っています。しかしこれではダメです!主の良さが隠し切れていません……むしろ怪しさが増したせいで、近寄ってくる人間が増えるかもしれない……!」

突然ブツブツと喋り出したライムに、とりあえず早めに謝っておかなくてはと、俺は口を開く。

「え、えっとライム。俺が悪かった!だから怒らないでくれ……。それに誕生日プレゼントありがとう。つけてみて、俺はこれが気に入ったから、うん。せかったくだしこれをつけてお祝いしよう!そ、そうしよう……!」

少し苦し紛れだっただろうか……でも気に入ったのは事実だし、それにこれをつけたとき閃いたのだ。
この仮面があれば、冒険者としてパーティーに呼ばれたとしても誤魔化せる可能性があると!

もしかするとライムはそれを見越して、俺にこの仮面を贈ってくれたのかもしれない。
そんな呑気な俺を見てライムはため息をつくと、予想していない答が返ってきたのだった。

「主、別に私は怒ってなどいませんし、仮面をつけたままお祝いするのはどうかと思いますけど……」
「えぇ……!!じゃあさっきの質問で、お祝いに必要なものって何だったんだ」
「ああ、あれの答えは勿論、私です」

ん?どういうことだ!?
確かにお祝いするのには相手がいないと出来ないからとか、そういう事だろうか……。

「実を言うと、最近の主はあまりにも上の空で、私との会話も成り立たっていませんでした。それなのに、今度の冒険業はあのクソ男だけでなく、噂の錬金術師の男とも行くと言われて、私は仲間外れなのかと……それで、拗ねていただけです」
「拗ねてた……?」
「はい。二つのアイテムができたことは、とても喜ばしいとわかっているのですが、そのせいで私がプレゼントした仮面も、袋に入ったまま放置されているのを見つけてしまい、感情を抑え切れませんでした」

プレゼントを忘れていたことは全面的に俺が悪いけど、まさかライムが拗ねていたなんて……全く気がつかなかった。
確かに最近の俺は、時間があれば出来上がった祝福の鈴をみたり、少し手が空けば刻の調律を触ったりしていたのだ。

それに今週は、ルーディアがダンに会ってみたいと言ってたから、三人でクエストをする予定なだけで……別に仲間外れにしたつもりはない。
でも少しは悪かったと思い、一応謝っておくことにした。

「それは色々と悪かった。それにプレゼントの事も……」
「いえ、いいんです。今日いっぱい構ってもらえたので」
「なんかペットみたいな発言に聞こえるんだが!?」
「前にもいいましたが、私は従魔なのでペットみたいなものですから。もっと構って下さい」

そういいながら、俺に詰め寄ってくるライムに俺はワタワタしながら考えた。
えーっと、ペット?ペットを止めるためには何て言うんだっけ?そうだ……!

「まて!こ、今回はお預けだ……」

何か犬に餌を与えるときみたいな言葉になってしまった。
しかしライムは何故かそれで満足したのか、和かにその場に立ち止まったのだった。
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