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第三章 調合編
28、今は待つしかない(後編)
しおりを挟む召喚の練習をするために発動した魔法陣は、今もなお青白く光り続けている。
しかし、いつまで経ってもそこにライムが現れない事に、俺は一瞬不安になっていた。
「もしかして……これは、失敗したのか?」
そう口に出した瞬間、魔法陣が強く輝き始めた。
これはようやくきたか!?と、俺は眩しさに目を瞑る。
そして次の瞬間、ライムが魔法陣の上にではなく何故か俺の上に、それも俺を押し倒すような形で落ちてきた。
「いってぇ!!なんで真上から?」
「あ、主……この体勢は一体……?」
ライムを見上げると凄く動揺しているのか、何かブツブツと呟いている。
早くどいて欲しかったけど、それよりもこの召喚について確認しないといけないなと、俺は本を手に取る。
本のタイトルは『召喚はおまかせ!シチュエーションは無限大』だ。
シチュエーションについてはよくわからなかったので、適当なページに書いてある魔法陣を使って見たんだけど……なになに?
「相手に襲ってほしいと思ってるあなたに、この召喚魔法陣がオススメ!召喚された相手は現れた途端、あなたを押し倒してくれるはず!!?……なんだそりゃ!!」
「主……それはこちらの台詞ですよ!何故ちゃんと確認せずに試したのですか?」
「いや、一番魔法陣が簡単そうだったから……」
そう言いつつ視線を逸らす俺に、ライムが盛大にため息をつく。
そしてその体勢のまま何故か全く動いてくれない。
「あ、あのライム……どいて欲しいんだけど」
「主は少しお仕置きが必要では無いですか?」
「お、お仕置き!?確かに今回のは俺が悪かったけど……」
押し倒された状態のまま見下ろされて、なんだかいつもよりライムが怖く見える。
そしてライムは薄く笑うと変なことを言い出した。
「では私のオデコに、主のオデコをぶつけるように腹筋を10回してみましょうか」
「は?腹筋……?この病弱な体で?」
「ええ、たまには体を動かさないと健康に戻ったときに苦労しますよ」
確かにそうだと思った俺は、とりあえずライムに言われた通りに腹筋を開始する。
ライムのオデコに向けてゴッチン。
正直オデコをぶつける必要性が全く分からないが、ライムはスライムだから全然痛くない。
それよりも、何故かずっとこっちを見続けているライムの瞳の方が、気になって仕方がない。
オデコとオデコをぶつけたときなんて顔が近すぎて、間違って違うところをぶつけたらどうしようかと、違う意味でドキドキしてしまったところだ。
だから俺は息も切れ切れの状態で抗議する。
「ら、ライム……あんま、こ、こっち……みんな」
「駄目です、一応これはお仕置きなんですよ?ですから私には、主の腹筋をカウントする義務があります。それに今は四回目ですから、あと半分なのでもう少しだけ頑張りましょうね」
そう言われても、もう既にキツいんだけど!!?
辛くて目をギュッと瞑ってしまった俺は、必死に腹筋を続ける。正直ちゃんとオデコに当たってるかも怪しくなってきた頃、ようやく腹筋は終わりを告げた。
「主、頑張りましたね。すぐにベットまでお連れしますよ」
「お、おう……」
俺は苦しくて酷い顔をしていただろうに、ライムはそれを笑う事なく褒めてくれた。
そして俺をベットに横たえたライムは、少し離れた場所で何かをぶつぶつと呟いていた。
「あの主の顔……なんと最高だったことでしょうか。特に主のオデコが私の唇に触れたときなんて……あぁ、これはいけません。どうやら興奮は抑えられそうもありませんね、今にも分裂してしまいそうです……」
よく聞き取れないが、多分聞かないほうがいい話だと思うので、俺はライムをそっとしておくことにした。
そしてライムは「少しの間失礼します」と言うと、何処かへ去ってしまったのだった。
残された俺は、そんなライムのことよりも腹筋10回だけで、死にそうになっている事にショックを受けていた。
もしかして、このままだと呪いが解けて健康になっても、介護されないと生活ができない!?
そう焦る俺だったが、今日はもう動けないのでとりあえず、考えるのはまた今度にしようと思うのだった。
それに今日と明日ゆっくり休んだら、明後日はついにルーディアの元へと向かう日なのである。
だから今はしっかり休む事を優先して、何があってもその日に倒れないようにしなければならない。
でも俺は、絶対にルーディアならできると信じているから……。
そう思い、俺は体の疲れを実感しながらも、重たい目蓋を閉じたのだった。
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