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第四章 悪魔召喚編
35、お帰りください
しおりを挟む「召喚してすみませんでした、お帰りください」
俺は土下座して、ウルに帰りを促していた。
悪魔召喚に応じて出てきたウルは、本物の悪魔なのだろう。やはり噂は本当だったのだ。
そしてせっかく悪魔と会えたというのに、俺はそれを上回る拒否反応が出ていた。
「え~!俺のこと悪魔だって知ったくせに、それはないんじゃない?それにせっかく女の子たちと楽しく話してたのに、俺はセイを優先したんだよ。なのにそんなつれないこと言うんだ?」
「なら女の子とそのまま楽しく過ごしてくれよ。俺は知り合いに、ここのこと知られたくないんだ」
そう言ってウルを見ると、物凄く唇の端を吊り上げてニヤニヤしていた。
絶対に嫌なことを考えてるに違いない。
「ねえ、ここって王宮でしょ?」
「…………」
「それで、セイは……あの噂の第5王子ってところかな?」
ズバリ言い当てられた俺は、睨みつけようとしてその赤い瞳に怯んでしまう。
クスクス笑うウルは座り込んでいる俺の前にしゃがみ込むと、俺の顎を手で持ち上げた。
「このこと秘密にしてるんでしょ?だったらバラされたくなかったら……」
「わかった!わかったからもうやめてくれ。お前に帰れとは言わないから……だから誰にも言わないでくれ!!」
悲痛に叫ぶ俺は、一瞬ダンやルーディアの事を思い出し、その関係が崩れる恐怖からなのか、何故かポロポロと涙が溢れてしまったのだった。
「……ごめんね、少しからかい過ぎたかな。まさか泣かせちゃうとは思わなかったよ」
そう言うとウルは俺の瞳から溢れる雫を手で救い上げると、それをぺロっと舌で舐めとり「甘いね」と言った。
しばらくして泣き止んだ俺は、仕方なくウルに今までの経緯とウルを召喚した理由について話をしていた。
「成る程、セイ……いやイルレイン殿下?は、呪いを解く素材のために俺を、呼び出したんだね?」
「そうだけど……お前に殿下とか言われたくないから、イルでいい」
「それじゃあイルは、俺に何を聞きたいのかな?」
そう言いながら、隣りに座るイルは俺の肩を抱く。
距離を詰められると何故か寒気がするのでやめて頂きたい。
「いや待て。そうやって話を進めて、悪魔のような契約をさせるつもりなんだろ!?それから肩を抱くな」
「まあ俺、悪魔だから間違ってないけどね」
「じゃあ本当に契約とかあるのか……?って、おい!さらにぎゅっとするな!!離れろ!」
「契約はあるにはあるけど、イルが思っているものとは違うかな?」
そういいながら俺の体をベタベタ触り始めたウルを、どうにか引き剥がそうとする。
しかし全く動じないウルに必死で抵抗していたつもりの俺は、気がついたら両腕をウルの片手で捕らえられていた。
「嫌がられると興奮するから、それは逆効果だよ?」
「何言ってんだお前!」
「可愛い唇にキスしたくなっちゃうけど、誓約しちゃう事になるからなぁ……」
「それってどういう?」
にやけ顔で「知りたい?」と聞いてくるウルに、俺は素直に頷いていた。
だって仕方がないのだ。お願いをしようにも、代償がわからない限り聞くこともできないのだから。
「まずね、俺たちのような上位種に進化した人間達は、誓約と契約と言うものが付き纏うことになってるんだけど……知ってる?」
「全く、聞いたこともない」
その始めて聞く話に俺は興味津々だった。
でも何故かいまだウルに両手を掴まれているせいで、たまに集中できなくて困る。
「普通の人はそうかもしれないね。それは進化するときに謎の光に教えてもらうことだからね」
「謎の光?」
「多分この世界の神じゃない?まあ、俺は信じてないけどさ。それに今は関係ないから話を戻すけど、俺たちは誓約と契約の2種類を持っているわけだよ」
そう言いながらウルは指を二本立てる。
「そのうちの一つ。誓約とは俺たちのパートナーと交わすもののことだね」
「それって、結婚相手みたいなもの?」
「そうだよ。俺達は普通の人達からしたら不老不死と言われるぐらい長寿だからね。それなのにパートナーが普通の人間だった場合、どうなるかわかるよね?」
きっと、普通の人間なら先に死んでしまうのだろう。
そう思いながら、俺は小さく頷いた。
「俺たちは誓約をする事で、パートナーを少しでも長生きさせることは確かにできる。それでも俺たちからしたらそれは一瞬の人生でしかないんだよ。だから俺たちは同じ長寿の存在を求め、その存在を尊いものとして一生一緒に生きる事を誓約に込めるのさ」
「そこまでする必要があるのか?」
「長寿になれば成る程、一人で生きる事は辛くなる。それで精神がおかしくなって暴走する者もいるからね。だから俺たちがそうならないために、パートナーという存在はとても必要不可欠になってくるのさ」
進化した人間には、それ特有の悩みがあるという事なのだろう。
なによりも、パートナーは特別。
だから誓約によって一緒に生きていくものだと、当たり前のように認識しているみたいだ。
でも価値観の違いからなのか、ただの人間である俺には全く理解できないことだ。
それに今の話を聞いて、気になることがあった。
「なら、ウルはなんで俺を追いかけてくるんだ?」
俺はただの人間なのに、ウルは俺に執着しているように見える。それは俺をパートナーにしようとしているから、という訳ではないのだろうか?
「それはね、イルは必ず進化する。俺はそう思っているからだよ。そのときは俺と誓約してくれるかな?」
「するわけないだろう!!」
「因みに誓約は、想っている相手の体にキスを落とす事で成功しちゃうから、俺が今からチューしたらイルは俺のものなんだよ?」
そう言うと、イルは俺をベットに押し倒し掴んだ両腕を頭の上に固定した。
「おい!やめろ……!」
「んーっ!この眺めは最高だよね……でも、まだイルは進化してないしな~。じゃあ約束してくれたらイルのお願い聞いてもいいよ?」
「なんで、そんなこと!!?」
「だって、俺の契約はね。『俺のお願いを聞くこと』それが契約条件なんだから仕方ないよね?」
そう言うウルは、悪魔のような笑みを浮かべたのだった。
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