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第四章 悪魔召喚編

40、葛藤

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ダンと別れて部屋に戻ってきたその日、俺は泣き疲れたままベットに倒れ込んだ。
そしてそれからの数日間、俺の心は荒れに荒れていた。

まったく、一体全体何故なのか!?

俺はハーレムが作りたかったはずなのに、何故か男を好きになるし。
好きだと思った男は、俺のことを愛してると言ったのに、俺の前からいなくなるし。
そして惚れてると言ったくせに、戻ってこない奴もいる。


「あーー!!!俺は一体どうしたらいいんだ!!」

俺は我慢できずに、ベットの上で声を上げていた。
そんな俺を見て、相変わらず部屋にいるウルが呑気に声をかけてくる。

「おー、またやってる」

そうなのだ、もうかれこれ何度目かわからないほど俺は叫んでいる。
だって思い出すたびに、何故かイライラしてしまうのだから仕方がない。

「いいねぇ、なんか面白くなってきたじゃん」
「何処が面白そうなんだよ!!」
「全部?」

こいつの態度が、さらにイライラを増長しているのではないかと思ってしまう。
でもウルはダンのことを何か知ってるんじゃないかと疑っているため、追い出す事もできない。

「本当に、ウルはダンがあんなこと言った理由に心当たり無いのかよ?」
「全くないね……って、その顔は信じてないね?」
「だって仕方がないだろ。あんなこと言っていなくなったんだから……」

ダンには、呪いを解くための素材を取りに行く手伝いをしてもらっていただけで、俺はその種類や数については何も教えていない。
それなのに、何故かダンは素材集めが終わったことを知っていた。

でも前にアイスドラゴンを倒したときは、俺の呪いについて何も知らなそうな顔をしていたのに……あれは演技だったとでも言うのだろうか?

「うーん、俺にはさっぱりだよ」
「でも、久しぶりに会ったんだろ?前と違うところがあったりしなかったのか?」
「前と違うところねぇ……君にだけ甘々なのは変わってないけど、そういえば俺を押さえ付けているときの雰囲気が全くの別人だった気がする。それとイルのことを自分のもの、なんて言ったときの顔は……以前のダンでは考えられない顔してたね」

『俺のもの』発言は、あの声を思い出して顔が赤くなるからやめてほしい。
でも、最近ダンが変わったのは間違いないようだ。

「そういえば、ダンって出会った頃は昔の記憶が無いって話をしていた気がするよ?」
「記憶がない?」
「うん、だからもしかすると記憶が戻ったとか……?そのせいでイルといられなくなっちゃったのかもねぇ」

ダンが記憶喪失だったなんて、そんな話は聞いたことがない。
そもそも、ダンがソロで冒険者をやっていた話さえも聞いたことがないのだ。

「でも、俺のものだっていったくせに、俺の前から居なくなる意味がわからないんだけど!!」
「まあまあ、ある意味両思い?なんだからいいじゃない」
「全然よくない!!それに、俺はまだ完全にハーレムを諦めたわけじゃないからな!」

その発言に、ウルは首を傾げるとニコリと笑っていったのだ。

「え?ハーレムって女の子じゃないといけないの?」
「そ、それは……そうじゃないのか?」

ウルにはハーレムについて話してある。
というか、こいつの日常生活はハーレムみたいな生活をしてやがったので、俺がキレて話をしてしまったのだ。

「じゃあ言い方を変えるよ。イルは男の人達でハーレム作ってるね。凄いや!」
「…………え?」
「だって、イルの周りにはイルの事が大好きで大切に思ってる男性しかいないじゃないか。俺も含めてさ!イルおめでとう、ハーレムだよ!よかったねぇ~」

無駄に拍手までするウルの言葉で、俺は初めて気がついた。
おかしい、俺が作りたかったハーレムはこうじゃなかったはずなのに……なぜだ?

「ほら。夢が叶ったんだから、後は自分の本当の気持ちを大切にする事が大事じゃない?」
「ウル……流されてる気もするけど、確かにそうだよな。今は混乱して頭の整理がつかないだけかもしれないし、もう少し考えてみる」

だって俺はまだ、ダンのことを好きだと認めただけで、それ以外のことには全く頭が回っていなかったのだ。

「それで、最終的に俺が全部壊してイルを手に入れれば全て解決じゃない?」
「おいぃ!そういいながら、俺を押し倒すな!!」

やはり、ウルへの好感度は上がったり下がったりが激しい。
こいつはただ俺を困らせて、楽しんでるだけなのかもしれないけど。

「大丈夫大丈夫、一線越えようとすると君のその指輪が反応してくれるからさ」

それはライムが俺にくれた指輪の事だ。
あれからちゃんと話せていないため、指輪の事だって聞けていない。
俺は指輪を見て、こんなに長いことライムが帰ってこないなんて……と、なんだか寂しくなってしまった。

……ライム、早く帰ってきてくれ。
ライムがいないと、俺は……俺は凄く寂しいんだ。

そう思っただけなのに、俺は何故かライムの唇が当たったときの感触を思い出してしまった。
そして突然、ドキドキと俺の心臓が早くなる。

あれ?前までこんな風にならなかったのに、なんでいきなり……それにこの気持ちは?
このとき初めて、俺はライムを恋愛対象として意識した。

「あれ?イル、顔真っ赤だけど大丈夫?からかいすぎて熱がでたかもしれないね。もう寝た方がいいよ」

ウルがそういいながら、俺の体勢を整えて布団を被せてくれた。
なんだかんだいって俺の世話を焼いてくれる。
そんないい奴だからこそ、憎めないのかもしれない。

こうして顔を赤くした俺は、さらに頭を悩ませるのだった。


何故だ、おかしい。
俺はダンのことが好きなはずなのに……ライムの事を考えても、あのときのことを思い出して、恥ずかしくて顔が熱くなってしまう。
何なんだこの気持ちは───。

まさか俺は二人とも好きってこと……?
そんな、俺ってば超優柔不断野郎なのか!!!?

そう思いながら、しばらく布団にこもる俺がいた。
こうして俺は数日さらに頭を悩ませることになってしまったのだ。

そしてせっかく全ての素材が集まったのに、いまだにその使用方法はわかっていない。
きっとダンは何かを知っていたのかもしれないけど、もういない相手なのだと思うと俺はさらに落ち込んでいた。

一応ルーディアには既に素材が全部揃ったことを手紙で伝えてある。
だから次会うときまでには何かわかればいいのだけど……。

なんてことを考えている間に、王宮で行われるパーティーが開かれる日は、もうすぐそこまで迫っている事を、俺はすっかり忘れていたのだった。
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