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第四章 悪魔召喚編
39、告白
しおりを挟む外にでると、王都が上からよく見えた。
神殿は丘の上にあるため見晴らしがとてもいいのだ。
だからその景色に俺は声を上げた。
「おぉ、ここからみる王都もいいもんだな」
素材を全て集めることができたからだろうか?
嬉しくていつもより景色が綺麗に見えているかもしれない。
「そうか?俺からしたらどこでも一緒に思っちまうんだがな」
そう言うダンを見上げると、全く興味なさげにその景色を見ていた。それだけなのに、俺はダンの顔から目が離せなくなる。
できれば、そのままこっちを見ないでくれと思ったのに、ダンはすぐにこちらを向いてしまった。
そのせいで、黒色の瞳と目が合ってしまう。
「ん?どうした、こっちをじっと見つめて……」
「い、いや何でもない」
「今日はしょっちゅう顔が赤くなるが大丈夫か?熱とかないよな?」
そう言ってダンは俺のオデコに手を当てた。
それにまた俺の顔は熱くなる。
本当に俺はどうしてしまったのだろうか……。
ダンには聞きたいことが沢山あるのに、上手く言葉が出てこない。
「熱はねぇみたいだが、調子が悪いなら少し休憩していくか?」
「そ、そんなこと言ったらダンだって、今日はよくため息をついてるぞ。疲れてるんじゃないのか?」
今日は無意識にずっとダンを見ていたが、いつもよりため息をついていた気がするのだ。
でも俺は、その姿さえもカッコよく思えてしまったので、そのことを余計に覚えていた。
「……確かにそうかもな。じゃあ、それならあそこのカフェに行くか」
そう言って手を離したダンは、神殿のすぐそばにあるカフェテラスを指差した。
そこで休憩をとることにした俺たちは、丘からの景色がよく見える席に座っていた。
そしてコーヒを飲んでいるだけなのに、ダンがいつもよりも2倍ぐらいカッコ良く見えてしまう。
このままではいけないと首を振り、俺はウルから聞いた話をとりあえず確認するため、口を開こうとした。
しかしそれよりも早くダンが話しはじめたのだった。
「セイ、お前に言いたいことがあるんだ……」
その言葉に俺はドキリと心臓を跳ねさせ、話したい内容を全て忘れてしまった。
なんなんだ俺の心臓!ドキドキしてなに少し期待してるんだ……まず、期待ってなんだよ……。
ダンは俺のことを子どもとしか思ってないんだぞ。だからどうせたいした内容じゃないに決まってる。
そんな事を考えている間も、ダンは続きを言う事なく景色を見ていた。
そしてなかなか話し始めないことに痺れを切らした俺は、先に口を開いてしまう。
「言いたいことってなんだ?途中でやめられると気になるんだが……」
「そうだな。お前も今まで頑張ってきたんだから……俺もちゃんと言わねぇとな」
そしてダンの黒い瞳が俺を見る。
光の加減のせいか、その瞳の色はどこか青くなっているように見えた。
「……最後に、セイとこうしてゆっくり話す事ができて良かった」
ようやく口を開いたダンの言葉に俺は目を見開く。
最後?その言葉を理解できなくて、俺は一瞬思考が止まりかけた。
でもすぐにダンを睨むと怒りの声を上げる。
「……は?最後って一体何を言ってるんだ!何が最後だって言うんだ?俺と会うのが最後ってわけじゃないんだろ……?」
「いや、その言葉の通りだな」
「そんなので納得いくわけがないだろ!!」
余りにも混乱している俺は、力任せに机を叩いてしまった。
それなのにダンはいつも通りの優しい顔を俺に向けてくる。
「おいおい、そんなに強く叩いたら手を痛めちまうぜ……」
「さ、さわんな!」
手を痛めたと思ったのか、俺に触れようとしたダンの手を、つい振り払ってしまう。
しまったと、思ったときにはダンは困った顔をして頭をかいていた。
だから俺は慌てて言い訳をしようとした。
「い、いや今のは動揺してて、悪かった……」
「セイは悪くねぇよ。俺だってどうにもできなくて……でも仕方がねぇんだ、お前が全てのアイテムを揃えた時点で、俺はここにいられねぇ存在だからな」
全てのアイテム……ってもしかして呪いを解くための素材のことじゃないよな?
まてまて、まずダンにそのことを詳しく話したことは無いはずだ。
でも俺には、それ以外のものが何も思いつかないのだ。
それはつまり、その考えが当たっていることを意味していた。
なら何故ダンはそれを知っているんだ?
まるで全てのアイテムを揃えたら何かがあるような口ぶりだった。
ということは、もしかするとダンは全てを知っている……!?
そう思った瞬間、俺から血の気が引くのがわかった。
色々おかしいことや、聞きたい事があったはずなのに上手く口から出てきてくれない。
それなのにダンは聞きたくない台詞を、俺の目を見て言うのだ。
「だから、お前と会うのはこれで最後だ」
「……そ、そんな」
「俺のわがままだけどよ、最後にずっと言いたかった事を言わせてくれ。これはな、今の俺だけが持っている心から出た、本当に大事な想いなんだ……」
そう言いながら、ダンは立ち上がり俺の前に跪いた。
何がおきているのか理解できない俺は、ただその様子を見てうろたえることしかできない。
そんな俺の手をそっと取ると、ダンは俺の瞳を見つめて微笑んだ。
「セイ。俺はずっと、ずっと昔からお前の事を愛していた。でもこれ以上は俺ではダメなんだ……だから、お別れだ」
手を離したダンは、名残惜しそうに右耳のピアスに軽く触れると、今度こそゆっくり離れていく。
俺は咄嗟に手を掴もうとしたのに、それはスルリと簡単に離れてしまう。
「ま、待て!!待ってくれよ!!!」
そう叫んだときには、ダンの姿はもう目の前から消え去っていた。
わからない事だらけで、俺の頭は混乱し続け……その瞳からは涙が溢れていた。
今の俺は今度こそ認めるしかなかった。
俺は本当にダンのことを───。
好きになっていたと言う事に。
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