やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第五章 兄弟編

45、兄上の部屋(後編)

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そして、俺はまた恐怖していた。

ギル兄上からなんとか逃げ出すことはできた。
しかしこの部屋を見て、俺は助けを求める相手を間違えたことを察していた。

「イル本人に、この部屋を見られるのは恥ずかしいですね」
「あの、本当にここはシル兄上の執務室なのですか?」

そう疑問に思ってしまうのは無理もなかった。
何故なら俺がいるこの部屋には、バレン兄上が描いたのであろう俺の肖像画が、壁という壁にこれでもかと言わんばかりに貼ってあったのだ。
もちろん俺はドン引きである。

「そうですよ。まあ執務室といいましても、ここは私の調べた研究成果を、まとめるのに使っているだけですけどね」
「あの、なら何故俺の肖像画がこんなに沢山?」
「それは勿論。イルの事を愛しているからですよ」

ですよねー!!!?
聞くんじゃなかったと、俺はシル兄上から目を逸らす。

「こんなにも愛しているのに、何故か周りはあなたのいる宮へ私を立ち入り禁止にしたのですよ!」
「えーっと、何かしたのですか?」

ここまできたら、聞きたくないけど聞くしかない。

「イルの着替えを手伝ってあげただけですけど?」
「それだけですか?」
「まあ、確かに着替えているイルの体を少し触りかけましたけど……でも断じて触ってませんからね!それなのに、それを見ていた侍従に何故か叱られたと思ったらこんなことに……」

何故だろう、凄くその光景が目に浮かぶ。
絶対に怪しい手つきで着替えの手伝いをしていたに違いない……。そう思うと、俺は寒気がしていた。

「ところで、まだ体調がよくないでしょう?イルはこちらに座って下さい」

そう言って指し示した先は、どう考えてもシル兄上の膝の上で……。

「昔はよく膝の上に座っていたでしょう?大きくなったとはいえ、イルはまだ小さいですから」
「い、いえ……俺はもう大人なので遠慮します」
「そう仰らず、さあ……さあ!」

そういいながら、鼻息が荒くなるシル兄上を見て、俺は後退りをしてしまう。
そのとき、後ろの扉がガチャリと開いた。

「イル!ようやく見つけだぞ!!って、シルの執務室かよ……」
「ギル兄上、扉を開けるときはいつもノックをして下さいと言っているでしょう!!」

なんてこった!
俺はヤバイ兄上二人に挟まれてしまった!!


そんなこんなで、二人に流された結果。
ガチガチに震える俺を間に挟み、何故か3人横並びで椅子に座っていた。

「とにかく、ギル兄上がまた馬鹿みたいなことを考えて、イルを困らせたことは理解しました」
「そういうお前はイルに気持ち悪いことしかけたんだろ?」
「気持ち悪くありません!!」

そう言い合う二人は、実はあまり仲良くないのかもしれない。
俺はそんな二人のやりとりを見る事で、少しだけ落ち着くことができていた。

「イル、どうやら少しは落ち着いたようですね。そんなイルには悪いですが、気になった事を少し私に教えて下さい」

俺をチラリと見たシル兄上は、話題を変えたかと思ったら直球な質問をしてきた。

「実はあの後、ルーディアから少し話を聞いたのですが、イルは冒険者をしているのですね?」

いつか聞かれると思って身構えてはいたが、実際にそう言われると動揺してしまい、俺は目を泳がせる。

「そして冒険者になったのはあなた自身の病気を治すためであり、すでに病気を治すまであと一歩のところまで来ていると、ルーディアから聞きました。それは本当の事なのですね?」

その話を聞いて、ルーディアが全てを話していたことに、俺は少し驚いてしまう。
そしてルーディアが全てを話してしまったなら、俺が今更言い訳しても仕方がない。
それにあの姿を見られた以上、嘘をつくこともできない……それなら、もう素直に話してしまおう。
そう意思を固めた俺は、シル兄上の顔を見た。

「……シル兄上、ごめんなさい。その通りなんです」

頭を下げて素直に答えた俺を見て、シル兄上はため息をついた。

「イル、私はあなたが勝手に冒険者になったことを怒っているわけではありません。だからそんなに落ち込まないでください。それにあなたが望むのならば、他の二人にそのことは内緒にしておきます」
「俺様も確かに驚いたけど、流石俺の弟だと感心したぐらいだしな」
「このアホな兄上のことは放っておいて、私が本当に言いたかったのは病気の事についてです。そうですね……」

どう言おうか迷っているシル兄上は、じっと俺を見つめていた。
でも顔を伏せている俺は、そんなシル兄上の顔を見ることができない。
だって何を言われるか分からなくて怖かったのだ。

そしてよくやく口を開いたシル兄上の言葉に、俺は血の気が引いてしまった。

「……イルは何故、私達兄弟を頼ろうとしてくれなかったのですか?」

それは俺が一番聞かれたくない事だった。

「………………」

その問いに答える事ができない俺は、冷や汗を流していた。
手をにぎりしめ、過去の自分に問いただす。
何故、兄達を頼らなかったのかと……。

だって仕方がないのだ。
兄上達が、こんなに俺の事を考えてくれていたなんて、俺は全く知らなかったから。

それなのに、今更どんな言い訳ができるというのだ……。
だから今の俺は、ただ謝るしかできなかった。

「…………ご、ごめんなさい」
「イル、私達はあなたに謝って欲しい訳では無いのですよ?頼ってもらえなくて少し寂しく思っただけです。だから、泣かないで下さい」
「う、うぅ……兄上、ご、ごめんなさい……」

俺はあまりの不甲斐なさに、気がついたら声を出して泣いていた。

誰かに迷惑をかけたくない、それにお金がかかるから……。
そんなの本当はただの言い訳で、当時の俺は誰のことも全く信用していなかったのだ。
だから兄達にも頼る事が出来なかった。

それなのにシル兄上はこんな俺に、優しい言葉をかけてくれる。

「いいですかイル、今からでも遅くありません。泣き止んだら今度こそ言ってください。私達に手伝って欲しいと……」

それから俺は盛大に泣いてしまい、二人の兄上はそんな俺の頭を撫で続け、なんだか大いに甘やかされてしまったのだった。


暫くして泣き止んだ俺は、二人と改めて向き合っていた。
呪いを解くまで、後一歩のところまでもうきてしまったけど、それでも俺は兄達と共に前に進みたいと思ったのだ。
確かに少し変わった兄上達だけど、俺のこと多分家族として愛してくれてるはずだから……。

「ギル兄上、シル兄上。俺のために力を貸して下さい」

頭を下げて言う俺に、二人は微笑んで頷いてくれた。

そしてその後、ルーディアとシル兄上が話し合った結果、魔法陣を試すための日取りが考案され、計画は進んでいた。

でも俺はその間、ルーディアに会うことはなかった。
だからルーディアが、俺の事をどう思っているのかわからないまま、鬱々とした日々を過ごすことになったのだった。
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