やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第五章 兄弟編

48、ギル兄上倒れる(前編)

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ギル兄上が倒れてから、もう数日が経っていた。

あの日、ブルーパールドラゴンに会う事はできたが、俺の呪いはまだ解けてはいなかった。
そしてその後、ブルーパールドラゴンによって教えられたことを、すぐにシル兄上とルーディアに伝えていた。

その内容の半分は二人の仮定と一致していたが、それでも信じたく無い話に俺は顔を青くしていた。
話終えた後にシル兄上を見上げると、信じられないほど冷たい目をし、「あとは任せて下さい」と、その場を後にしたのだった。


その日から、俺はどうしたらいいかわからなくてただ漠然と同じように日々を過ごしていた。
そして今日、俺はギル兄上のお見舞いにコッソリと来ていたのだった。

「ギル兄上、起き上がって大丈夫ですか?」
「あ、ああ。こんな体調不良なんて、俺様にかかればあと数日で治るに決まってる」

そう言うギル兄上の顔色は青白く、少し痩せてきていた。
その姿に俺は胸が痛くなる。
ギル兄上はこのままいけば、数日しかもたないのだから……。

そしてギル兄上はそのことを知らない。
だからこそ、こんな強がりを見せるのだろう。
本当ならば動くのだってやっとな筈なのだ。

そんなギル兄上を蝕んでいる王族の呪いは、今まで守護によって回復していた生命エネルギー分が、守護竜からの逆襲によって逆に削り取られていくもののようだった。
きっと今のギル兄上はずっとダメージを追い続け、体の中はボロボロになっているのだろう。

だから、そんなギル兄上を俺は見続ける事が苦しかった。
もしかしたら俺がもっと早く決断できていれば、こんなことにはならなかったのかもしれないのに……。

そう思いながら、俺はギル兄上を元気づけようと無理に明るい声を出していた。

「ギル兄上ならすぐに良くなりますよ。それに義姉様や、ガイ君も兄上の側にいつもいてくれてますからね」

義姉はギル兄上の奥さんのことであり、ガイはガイルランテと言うギル兄上の息子の名前だ。
二人は一日中、ギル兄上から離れずに世話をしている。
もしかしたら二人は、ギル兄上がもう長くないことを察しているのかもしれない。

「いや、俺の一番側にいて欲しいのはイルお前だ。だから少し抱きしめて良いか?」
「そんなこと言ったら二人が可哀想です。でも今回は俺を強く抱きしめてもいいですよ」

そう言って俺はギル兄上に近づくと、ギュッと包み込んだ。
ギル兄上も俺を抱きしめているはずなのに、その力はとても弱い。
そのことが悲しくて、俺はさらにギュッと抱きしめていた。

「イル、ありがとな。これで元気いっぱいになってすぐに治る……はず……」
「ギル兄上!!?」

体から力の抜けたギル兄上に焦り、俺は叫んでしまった。
その声が大きかったせいか、隣の部屋から誰か出てきたのが見えた。

「ち、父上!?」

そこにいたのはギル兄上の息子であり、俺の甥にあたるガイルランテだった。
ガイは焦って出て来たのか、少し息を切らせていたため金髪の髪が乱れていた。その背丈は俺より1つ年下なのに大きかった。

「大声を出してしまってすまない。兄上はどうやら眠ってしまっただけのようだ」
「そ、そうでしたか……こちらこそ父上のお見舞いに来てくださった方を驚かせてしまい、すみませんでした。あの、あなたはイルレイン様ですよね?」
「そうだ。俺とガイは年齢が近いんだからイルって呼んでくれ」
「は、はい」

少し腰の低いその姿は、ギル兄上の息子には到底思えない。
きっと母親似なんだろう。
そう思いながら、眠ってしまったギル兄上をベットに横たえる。

「ギル兄上は眠ってしまったから、俺はお暇しようかな」
「あの、それでしたら少しお話しませんか?イル様とずっと話してみたいと思っていたのです」

どうも、様は取れなさそうなことに少しガッカリしたが、俺もガイと話してみたかった。
でも実際は、今少しでも呪いの事を俺は考えたくなかっただけなのかもしれない。


隣の部屋に移動した俺は、向かいの席が空いているのに何故かガイと隣同士で話しはじめた。
そんなガイの質問は直球だ。
そこはギル兄上に似ているな、と思っていたところだった。

「それで、イル様は父上のことは好きですか?」

やはり直球で来る質問に、え?どう言う意味で??なんて口が裂けても言えない。

「あ、ああ。兄としてもちろん好きではあるよ」
「本当ですか!?それは抱かれたい程に??」
「????」

この子はいきなり何を言い出したのだろうか……俺には理解ができない。
だから、とりあえずマイルドな回答をしてみる。

「抱かれると言うのは、抱きしめられたいと言うことか?」
「何言ってるんですか、エッチなことに決まってるじゃないですか」

そのまま過ぎる意味に、ガイについて抱いていた真面目な少年像が崩れていくのがわかる。
そして俺は一旦落ち着くために、上を見上げて思考を放棄したのだった。
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