やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた

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第六章 解呪編

52、襲撃

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王都を埋め尽くすドラゴンの数に俺は絶望していた。
その姿を見たブルーパールドラゴンは、そんな俺を見て嬉しそうに言う。

「これが封印を解いた代償であるぞ。さあ、この状況をお前はどうする?民を見殺しにするか、それとも余と戦ってこの地に再び封印をするか?」

民を見殺しになんかできないし、ブルーパールドラゴンと戦って勝てるわけもない。
そんな不可能な選択を選べる訳がなかった。
だから他に方法はないのかと、俺は外の様子を確認していた。

いまだ、王都に降りたつ様子のないドラゴン達は、まるで俺とブルーパールドラゴンの会話を聞いて、待機しているように思えてしまう。
しかし何もいい策が思いつかない俺は、手を強く握りしめて呟く。

「俺には、どちらも選べない……」
「ならば、余と一緒に居てくれればよかろう。さすればこの地の守護を、封印されずともしてやらんこともないが?」
「それは、俺をこの空間に一生閉じ込めることだろ!?」
「その通りである。だが、それが一番丸く収まる。そのことをお前が一番よくわかっているのではないか?」

それがわかっているからこそ、頷く事なんてできない。
しかし、そんな悠長にブルーパールドラゴンが待っていてくれるはずはなかった。

「ならば仕方あるまい、イルも現実を見れば余に泣いて懇願するであろうからな……」
「や、やめろ!!!」

叫ぶ俺の目に映ったのは、ドラゴン達が力強く旋回し、市街地に降り立つところであった。
その姿に民は逃げ惑い、大狂乱が各場所でおきていた。

「イルはいつ余に懇願してくれるか楽しみであるな……」

竜達は次から次へと町を破壊し、人々を簡単に切り裂いていく。
俺はその光景をただ見つめることしかできず、気がつくと瞼からは涙がこぼれ落ちていた。

「あ、あぁ……やめろ、やめてくれ……もう誰かが犠牲になるのは、見たくない……」

俺は既に後悔していた。
封印を解けばこういう事も起こりうると、事前に分かっていたはずなのに……俺には覚悟が足りなかったんだ。

「これではすぐにでもダメそうはないか……ならばイルよ、誰も犠牲にしたくないのなら、どうすれば良いかわかるであろう?」

わかるからこそ、その思考は徐々に鈍っていく。

あぁ……これは全て俺のせいなんだ!
だから俺が責任を取らないと……それならブルーパールドラゴンのものになった方がましなんじゃないのか……?

そう思ってしまい、俺は口を開いてしまう。

「お、俺は……」

お前のものになる。

そう言いかけて、突然外で町を荒らしているドラゴン達がギィエー!!ギャイ!と騒ぎ叫び出したのに気がついた。

「な、なんだ?何がおきたのであるか?」

ブルーパールドラゴンも、その様子に焦りだす。
俺だってその映像が信じられず目を見開いてしまった。
先程までドラゴンに蹂躙されるだけだったはずの町は、たった一人の男がドラゴンを一掃する勢いで倒し始めたことにより、状況が変わっていた。

そして次の瞬間、映像にその姿がしっかりと映し出される。
そこには、ニッコリと笑うウルの姿があった。

『よっと、映像が繋がってるのはこれかな?やあ、イル。多分そこにいるんだろ?こっちのドラゴンは俺に全て任せておいて、イルはイルのしたいことを自分の思うようにやり遂げなよ。じゃあねっ』

颯爽とその場からいなくなると、再びウルはドラゴンに飛び乗り、いとも簡単に殺していく。
その姿は流石としか言いようがない。
そして、よく見ると遠くでもう一人戦っている人物がいた。

「デオル兄上……?」

先程別れたばかりのデオル兄上はまだ王都にいるのか、その強さを遺憾なく発揮しているようだった。
そんな二人の活躍に俺はつい嬉しくなる。

そしてそれにつられるように、他の冒険者達も次々とドラゴンを攻撃し始めたのだ。
その冒険者達の姿に、俺の絶望感は気が付けば消え失せていた。
だから俺は冒険者の一員として、ブルーパールドラゴンを睨みつける。

「ブルーパールドラゴン、この国の冒険者をあまり舐めないで欲しい」
「ふん、全く面白くなくなってしまったな。しかし余はまだお前を諦めてはおらぬ」
「もう俺を脅す材料はなくなったはずだ。さあ、早く俺をここから解放してくれ!外に出れさえすれば俺もドラゴンを倒せるからな」
「そうであるか、しかしイルはまだここからは出られぬよ」

状況的には良くないはずなのに、ブルーパールドラゴンはとても落ち着いていた。
もしかすると、何かまだ隠していることがあるのだろうか?

「さてイルよ、一つ尋ねよう。何故余は封印が解けたのに外の世界に出ないのか、その理由はわかるか?」

確かに封印が解けてあれだけ喜んでいたのに、全くこの空間から出ていく気配はなかった。
正直な話、それは俺をここに縛り付けるためだと思っていたが、違ったと言うのだろうか……?

「半分は正解だが、本当は違う。余はもう体が残っておらぬ」
「体が……?」
「この国の者達が余の体ごと分解する勢いで、力を吸い出したからである」

それはきっと1000年もの時をかけて、力を奪われ続けた結果なのだろう。
では目の前にいるブルーパールドラゴンは、精神体だとでもいうのだろうか?

「否。我は新しい体を貰ったのだ。それはこの体ではない。時がくるまで、我が入ることのできる器として育てるため外に出しておったが、ようやくその体に入る事ができる」
「じゃあ、一体誰の体を……?」
「それは前の第5王子から貰った体である」
「前の第5王子だって!?」

なんてことだ。
前の第5王子はブルーパールドラゴンに出会っただけでなく、その体が朽ちる前に器だけを譲ったというのか……?
ということは第5王子は早死にしたわけではなく、自らブルーパールドラゴンの為に死を選んだと言うことかもしれない。

「そして、その姿はお前も良く知っておるものだ。それを見たらきっとお前も意見を変えざるを得ない、余はそう思っておるぞ……」

その言葉に俺は嫌な予感と、思い浮かぶ人物いた。

「さあ、見るがよい!余が人として超越した存在になる瞬間を!!」

ブルーパールドラゴンは突如光り輝き、その姿が少しずつ小さくなってゆく。
そして光が収まった頃、俺は驚愕と思い描いた人物だった事への落胆で、心が激しく揺れ動いてしまったのだ。


そんな俺の前に現れたのは、ずっと会いたいと、ずっと何でと文句を言ってやりたかった人物───。

ダンがそこに立っていたのだ。
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