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第六章 解呪編
51、封印の解除
しおりを挟む時間が止まり世界は真っ青に染まったが、そこにシル兄上の姿はない。
どうやら前と同じように、俺はブルーパールドラゴンのいる所へと移動しているようだった。
だからブルーパールドラゴンを探そうと辺りを見回す。
しかし、突然の咆哮にその手間は省けたのだった。
「うるおおおおおおぅおおおぉおおお!!!」
見上げた先にはブルーパールドラゴンが叫んでいる。
「ようやく、時は来た!!余は封印に縛られることなく自由の身となるのだ!!!!」
封印が解けたことに感激して叫ぶ姿を見て、俺は恐る恐る近づいていく。
そんな俺にブルーパールドラゴンはすぐ気がついたようだった。
「おぉ!!!儚き人よ、余の願いを叶えてくれたこと、感謝する!もうすぐ、もうすぐその時がくる。それまでの時間、少し余の話し相手として付き合うが良い」
そう言うブルーパールドラゴンからは敵意を感じない。
そのことにホッとした俺は、とりあえず今すぐに確認したい事があった。
「だったら教えてくれ。お前が自由になった今、俺の呪いや王家の呪いも既に解けたと思っていいのか?」
「……そうであるな、確かに余がかけた王家の呪いは間違いなく解けたであろう。しかし、お前の呪いの一部は余がかけたものとは関係ない。それは世界の理によるものである。そのため余の封印を解くことだけでは、完全にはよくならぬ」
それはつまり……?
俺の呪いはまだ完全に解けていないってこと!?
「そんな……!」
「しかし安心せい。余の力が戻ったからには、お前の体を安定させることなど造作ない。故に魔法が使えるようになるぞ?」
そう言うブルーパールドラゴンの話に俺は驚いてしまった。
詳しくはわからないが魔素循環をどうにかする事で、俺の体を安定させてくれるつもりなんだと思う。
でもそんな方法聞いたこともないから、きっとそれができるのはブルーパールドラゴンだからなのだろう。
それに、魔法が使えるようになることは非常にありがたい。確かにそう思うのだけど……でもそれは、俺にとって根本的な解決になっていなかった。
だって俺の魂は、まだこの世界から拒絶されたままなのだ。
そして俺はそのこと自体がおかしいと思っていた。
本当に前回の第5王子は、この方法では完全に解呪できないことを知らなかったのだろうか?
いや、そんな訳がない。
きっと何か理由がある気がするのだ……。
しかしそう思い考えてみても、俺には何もわからなかった。
だからもう一度ブルーパールドラゴンの提案を思い出してみる。
そして、俺はとあることに気がついてしまった。
「もう一度確認させてくれ、俺の体を安定させるためには、ずっとブルーパールドラゴンの近くにいないとダメなんだな?」
「うむ」
「それって、一生ブルーパールドラゴンから離れられないってことだよな?」
その問いに、ブルーパールドラゴンからの返答は無い。
それはどう考えても肯定を意味していた。
「……つまり、ここから出られないと?」
「ああ、その通りであるな」
「そんな……!なにか、何か他に方法はないのか?」
俺はすがるような気持ちでブルーパールドラゴンを見つめる。
「たった一つの方法は、お前が進化するしかないのである」
その言葉に、俺は絶望する。
この世界で人間が進化をする方法は、いまだ解明されていない。それはつまり、奇跡を起こせと言われたのに等しかったのだ。
「魂がこの世界に完全に溶け込むためには、進化が絶対に必要なのである。進化をすれば世界の理と繋がることができるからな」
「そんな……そんな簡単に言わないでくれ!俺なんかが進化できるわけないじゃないか……」
「そう思うのならば仕方ないのである。お前は……いや、イルはもう余のものになるしか生き残る道はないのだぞ」
そう言って、顔を少し前にだしたブルーパールドラゴンは、俺を優しい瞳で見つめていた。
「イルよ、どうか余のものになってくれ。余は今まで一人でひたすら戦い生きてきた。そして千年、ここでも一人ぼっちであった。だからこそ余のこれからには、イルが必要なのだ」
そんな寂しそうに言われても困る。
確かにこのままブルーパールドラゴンに流されてしまうのも、ありだとは思う。
でも、俺自身はどうなんだろうか?
俺が本当に一緒にいたいのは誰なんだろうか?
頭の中に、今まで出会い助けてくれた人達の姿が過ぎ去っていく。
ダン、ライム、ルーディアにウル。それにデオル兄上や兄弟達。俺はまだ彼らと沢山したい事がある。
それにもう二度と会えないなんて嫌だ……。
なによりも俺は、本当の気持ちをまだ誰にも伝えてない。
だけどこんな状態で誰が好きなんて考える余裕はないし、もっと落ち着いた後で考えたいと思っていたのだ。
だから今の俺が理解できるのは、ブルーパールドラゴンのものになるわけにはいかないという事だけだった。
そう決意した俺は、ブルーパールドラゴンを見つめ口を開いた。
しかし、俺の言葉はすぐに遮られてしまう。
「ブルーパールドラゴン。すまないが……」
「そう簡単に諦めると思っておるのか?」
「え?」
「余は千年このときを待ち続けたと言ったであろう?だからこそ、簡単に諦めるわけにはいかぬのだ。そして、どうやら準備も終わったようであるからな……」
何かを確認するように宙を見回したブルーパールドラゴンに、何か恐怖を感じた俺は数歩後ろに下がってしまう。
「準備って一体……?」
「イルよ、先程すぐに承諾しなかった事を存分に後悔するがよい!!」
そう言うと、ブルーパールドラゴンはまた咆哮を上げた。
「うるぅぁああああああ!!!!!さあ、同胞よ、封印は解けた!竜の守護はこの国には既にない。憎きこの国の者達を亡き者にするときが来たのだ!!準備が出来たもの達よ、この国の全てを一掃するが良い!」
その叫びとともに、突然この世界が白くなった。
俺は変化についていけず、キョロキョロと周りを見回してしまうが、白くなった以外は変わっていないように見える。
「な、何をしたんだ?」
「時が進み始めただけである。そして、この国の守護は無くなった。前にも言ったであろう?この王都が立つ場所はもとは我ら竜族の縄張りである。それが意味する事をわからないお前でもあるまい?」
「ま、まさか……」
「そのまさかであるぞ。イルに外の世界がどうなったのか見せてやろう」
そう言うと、ブルーパールドラゴンは空中に外の様子を映し出した。
その映像に俺は驚愕に目を見開いてしまった。
「こ、これは!?」
それは、数百匹ものドラゴンが王都の空を埋め尽くすという、壮絶な光景だった。
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