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第六章 解呪編

55、ライム召喚

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俺の叫びとともに、指輪から光が溢れ出る。
その光の粒に俺もダランティリアも動くことは出来なかった。

そしてその光景を見ながら、俺はひたすら祈っていた。
頼む今ここでお前がこなかったら、俺はどうすればいいんだよ……。
そんな俺の願いが届いたのか、ゆっくりと光が収まり目を開いた俺は、何故か誰かに抱き上げられていた。

「主、お会いしとうございました……お久しぶりになってしまいましたね」
「ら、ライム!!!ライム、会いたかった!!」
「そうです、あなたの従魔でありあなたの執事でもある、ライムがこちらに参りましたからもう大丈夫ですよ」

余りの嬉しさに俺は抱きついていた。
でもよくわからないことがあった。

「う、うん。それはわかるしすごく嬉しいけど、なんで俺は抱き上げられてるんだっけ?」
「主が私を召喚するときに、そう望んだからです」

そうだっけ?
とにかくライムの事を思い浮かべてはいたけど、俺はライムに抱えられたいと思っていたのだろうか……?

「おー、イチャイチャしているところ悪いが俺もいるんだぜ?」

そんな俺たちの雰囲気をぶち壊す声に、ここがダランティリアの世界であることを思い出す。
でもダランティリアはライムが来たことに、あまり何も思っていないのか、手を広げて和かに言った。

「そして俺の息子よ、よくここまで来たな!」
「誰があなたの息子ですか!?私がきたからには主には指一本たりとも触れさせはしません。そしてあなたを封印してやりますよ」

ビシッと指をさして言うライムと、それを見て首を傾げるダランティリアの対比におれは不思議に思う。
この二人顔つきも背丈も似てるけど、なんだか雰囲気というか、オーラみたいなのが似てる気がする。

「威勢がいいのは良いな!でもなライム、残念だけどお前は俺を攻撃することはできねぇんだよ」
「何を寝ぼけたことを言っているのですか?」
「そう思うならかかってこいよ」
「そこまで言うのでしたら、遠慮なく行かせてもらいますよ!!」

その言葉を合図に、ライムは俺をおろすと仕込みナイフをダランティリアに向けて投げつける。

「!?」
「何処に向かって投げてるんだ?」

しかしそのナイフはダランティリアを避けるように曲がるとそのまま地面に落ちていく。

「一体どんな技を使ったというのですか?」
「なんにもしてないぜ?俺はここに突っ立ってただけだ」
「そんなわけないでしょう!!」

今度は、素早くダランティリアの背後に回ったライムが、避けられない位置でナイフを投げつけた。
しかしそのナイフはダランティリアに刺さる直前で軌道を変え、地面に落ちる。

「くっ、ならこれはどうですか!!!」

全く動くことのないダランティリアに素早く近づいたライムは、その首にナイフを突き立てようとした。
その瞬間ダランティリアが笑った気がした。

「捕まえたぜ」
「なっ!!!!」
「ライム!」

確かにライムのナイフはダランティリアの首元に刺さったように見えた。
それなのにナイフを持ったその腕は、ダランティリアに掴まれていた。

「いい事を教えてやろう。ずっと俺がライムを息子と呼んでいた理由。当時は何となくそう言っていただけだったが、本当は違う……」
「そ、それはどういう事ですか!?」

ライムは腕を掴まれているのに、いまだにダランティリアを攻撃するため、空いてる手同士が謎の攻防を繰り広げている。
正直何が起きているのか早すぎて俺には追いきれない。
それなのに、二人の会話は止まることはない。

「この世のすべてはスライムから出来ている。そんなの誰でも知っている事だろ?」
「そんなの当たり前……!ま、まさか……ではあなたも!?」
「そうだ。このブルーパールドラゴンだって遙か昔はスライムだった。そしてこいつは眷族をたくさん生み出し、ドラゴン種へと進化した個体だったんだ。そして何度も強いドラゴンへと進化を続けた結果、今のブルーパールドラゴンという超越した存在になったわけだ」

ブルーパールドラゴンが元はスライムだったなんて、思うわけがない。
強いドラゴンはもう既に個々の個体で繁殖し住処を持っているため、今ではあまりそんな進化がおきないからだ。
でもブルーパールドラゴンがいたのは千年以上も前の話だ……もしかすると当時はそれが普通の事だったのかもしれない。

「つまり私は、ブルーパールドラゴンの眷族だったと?まさかそんな……いえ、でもあれは私がそうだったから?だとしてとありえない!それに私はそんなに長く生きてはいません!?」
「それはライムの記憶がないだけさ。だってインテリスライムになったのは、そんなに昔じゃないだろう?お前は俺、いや俺の中に眠るブルーパールドラゴンの眷属だ」

それは俺にとっても、衝撃の事実だった。
今までライムを見ていたので俺は知っているが、分裂で生み出されたスライムは生みの親に攻撃をしない。それはしないのではなく、出来ないという事なのだろう。
そして次の瞬間、ライムが苦しみ出した。

「く、ぐぁ……」
「ら、ライムに一体なにをした!?」
「何を?眷族ならばきっと吸収してやることもできるかと思ってな。だって俺がイルを手に入れたら、ライムが残されて可哀想だろ?だから吸収してやるんだよ」
「いや、吸収だって!?ありえない!!」

確かにスライムは個体を吸収できるが、でもブルーパールドラゴンはもう完全なドラゴン個体だ。
そんなこと出来るわけがない。

「やってみないとわからない、というよりもう出来てしまっているからな……。さあ、選ぶんだイル。ライムを開放して俺のものになるか、ライムを吸収した俺のものになるか。まあ、どちらも俺のものになることは変わらないけどな!」
「ぐぅ!!う、うるさいですね……あなたに吸収される、ぐ、ぐらいなら……私にも考えが、あ、ありますよ……」

ダンの言葉を遮るように叫んだライムは、苦しみながらもダンを睨みつけると、俺に話しかけてきた。

「あ、あるじ……いい、ましたよね?あらたなる進化の、道を……探しに、行くと……」
「ら、ライム!なんで今その話を?」
「いや待て新たな進化って……お前、まさか!?」
「そ、そうです。私は、私でなくなるかもしれないですが、私はあなたより、上位種に……なれるのですよ!!!」

そしてライムは、突然激しく輝き出しだのだった。
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