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一章 リコリス

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「別れる…?迷う…?」

突然のよっしーからの言葉に戸惑う私と夕凪。
ただ素直に捉えれば夕凪にとっては朗報だな。

「うん……実は彼女に浮気されてたみたいでさ」

ほーん。まぁ珍しいもんでもないよな。
迷ってるってことは問題はそこじゃ無いのか?

「それは…ひどいね。なんでわかったの?」

こんな時に自分の損得考えずに相手を思いやれる所が夕凪のいい所だよね。
それに何でわかったのかは私も気になる。

「彼女から言われたんだよね」

悲しそうに笑いながらよっしーは俯いた。

「それは彼女の方が別れたかったんじゃなくて?」

「ちょっと!咲!」

思ったことをそのまま口に出してみたら、夕凪に咎められた。

「でも、それ以外に何か考えられる?気の迷いとか魔がさしたとかなら彼氏にはバレないようにするでしょ?」

「いや…まぁ……」

夕凪が止めてきた理由もわからなくはない。追い討ちをかけるなって事なんだろう。聞いてみた方が早いか。

「ねぇ、よっしーは慰めて欲しいの?違うよね?」

なんとなくだけど、愚痴を聞いて欲しいとかそんなんじゃないと思うんだよね。

「そうなんだよね。俺自分の事になると冷静に判断できない事とかが多くて…客観的にどう思うか聞きたくてさ…ごめんね。めんどくさいでしょ」

「うん。めんどくさい。他所の恋愛事情ほど興味の無いものは無いね」

そう言うと、よっしーは落ち込む様子も見せずに少し嬉しそうに笑っている。Mか…?

「ご、ごめんね!咲って昔からこんな感じでさ!でも相談乗るって決めたからにはちゃんと話聞いてくれるし結構的確なんだよ!」

夕凪が焦ってフォローをしてくれてる。
私だって人を見て正直に言って大丈夫かどうかくらいは見抜いてるつもりだけどね。笑

「いや!大丈夫!むしろそんな感じな気がして今日も頼んだんだ…」

やっぱりMか…?

「昨日彼女からいきなりごめん浮気したって言われてさ、俺浮気とか本当無理で……頭真っ白になっちゃってさ…その時はとりあえず家に帰って冷静になって別れようって決めてたんだけど…」

「……けど?」

「帰ったら彼女からメッセージが来てて、俺が冷たかったとか自分のこと好きかどうかわからなかったとか、今日も浮気したって言っても怒ってさえくれなかったねって言われてさ…」

あーーー自分のせいだって思っちゃったのか。

「俺がそうさせたのかって思ったらさ…」

………やっぱり。

「よっしーってあまり言葉で好きだよとか言わないタイプ?」

「え、なんでわかるの?恥ずかしいってのもあるけどあまり言いたく無いかな…言葉っていくらでも嘘つけるじゃん?そんなんに何の意味があるんだろうって思っちゃうんだよね」

まぁ…わかる。

「いや、私もさあまり言わないタイプなんだけど「お前が俺のことどう思ってんのかわからない」って振られた事が3回程ある」

そんなのもわからないやつと付き合ってく気もないからさっさと別れたけどね。

「えーでもやっぱり言ってくれないとわからないこともあるし。言って欲しいって気持ちも女子ならあるよ!」

夕凪が言ってることが一般的なことはわかるけどね…まぁだからといって

「夕凪みたいな考えが普通ではあると思う。けどだから浮気するってのは頭悪いでしょ」

よっしーが目を見開いて驚いている。流石に彼女に対して頭悪いは言いすぎたか?
そう思っているとよっしーがいきなり手を叩きながら爆笑しだした。意味がわからなすぎて私と夕凪がポカーンとしているとよっしーは胸に手を当てて呼吸を整えながら

「いやぁー似てるなと思ってたけどここまで似てるとは思わなかったなぁ!」

と更に訳のわからない事を言い出した。

「俺さ遊んだりする友達はそれなりにいるんだけど、悩みとか相談できる友達は1人しかいなくて…その友達が今仕事が凄い忙しいみたいでさ、電話するのも気が引けて……それで咲ちゃんは思ってる事はっきり言ってくれそうだなって思って今日頼んだんだよね………そしたら、もう言う事がそのままあいつ!分身かと思った!!」

そう言ってまた笑い出した。
そして私は…それを言われて一体どうしろと…?

「咲ちゃんはどうするのがいいと思う?」

いきなり話しが戻ったな。

「えっ…と…」

なんか知り合いに似てるとか言われると話しづらいな…。

「私個人の意見ですけどまずどんな理由であれ浮気するようなやつはまたやるんでやめた方がいい。後自分の否をよっしーのせいにしてる時点で浮気以前の問題。さっさと捨てた方がいいね」


「うん……そうだよね。夕凪ちゃんの意見も聞かせて欲しいな?」

「夕凪もそんなよっしーのことわかろうともせずに他の人に走るような人やめた方がいいと思う………やめて!夕凪と付き合ったら良いんじゃないかな!!」



「「……………え?」」

え?びっくりした。ここで急に告る?びっくりしすぎてよっしーとハモっちゃったよ?よっしーなんてびっくりしすぎて瞬き忘れてるもん。

「よっしーのこと知れば知るほど良いなって思っようになってきて、彼女がいるから好きにならないようにしようって思ってたんだけど…今日の話しを聞いて………好きです!付き合ってください!」

追い討ちまでかけてきた…メンタル最強か…?



「まだ彼女と別れるって決まった訳じゃ無いから……ごめん。付き合えない。」

普通に振られた。いや、そりゃそうだろ。なんで仕切り直さなかった?え、ここにいるの気不味い無理……。

「そっか……そうだよね…」

「うん…ごめん。」

きーまーずーいー。え、帰りたい。

「えっと…それじゃお金置いてくからこれで会計して!フリーで入ってるから2人は時間まで楽しんでよ!今日はありがとね!」

よっしーは1万円をテーブルの上に置いてそそくさと部屋を出て行った。



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