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二章
逃げる大義
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「彼女の詠唱は聴いていて心地が良かった。伸びやかなそれでいて大胆な!」
「ええっと、詠唱ってまるで歌みたいなのよ。だから音痴の人は壊滅的に魔法が下手ね、魔力が高くても。イーテリオ様は難解な詠唱をすらすら唱えるタイプ。ミレイは全てフォルテッシモな感じ。ベースの詠唱は同じでも、人によってどこか違うのは歌と一緒ね。上手い人はアレンジを加えたりできるわ」
エリサが早口で補足してくれる。
なるほど。それは無詠唱とかされたら意味わからんよね。
「彼女は『弟さんも、イーテ様がそんなにツラそうに詠唱してたら辛くなるわ。1番になんてならなくたっていいじゃない。たとえ100番でも1000番でもイーテ様が辛くないのが大事よ』彼女の言葉と詠唱は私の心を軽くしてくれたんだ!」
私、オリジナルミレイの口調知らないから、イーテリオ様の真似が似てるのかどうか分からないんだよね。エリサ、途中で咳払いしたフリして笑いを誤魔化してたけど。
「ああ、だからここ最近、イーテリオ様の詠唱も魔法も精彩を欠いていたのね。滑舌良くすごい速さで詠唱するのが得意な方だったのに…。間延びした詠唱になったと思ったら、ミレイの影響か」
と小声で教えてくれた。
んー、ラッパーが童謡歌い出した感じかしら。それとも技巧派のピアニストが、ウクレレに目覚めた感じ??
オリジナルミレイの言ってることは間違いではないとは思う。イーテリオ様の心を救ったのも事実だろう。ただ、なんというか、
「断捨離ハイみたいに見える…」
「「?」」
2人がキョトンとする。
「ミレイが言うようにイーテリオ様が辛くないことも大事だと思いますけど…いま本当に辛くないですか?」
「ああ。辛くない」
「弟さんへの罪悪感も、家への責任感も、最も優秀な魔法師になるためのの努力も、すべて吹っ切ったつもりになって、ミレイみたいにのびのびと唱えてみせて、辛くないですか?
私の無詠唱をみて、弟さんが魔法を使えるかもしれないって思ったんですよね。まだ心に引っかかってるんですよね」
眼鏡の奥で髪とお揃いの色の瞳が揺れた。
「魔法を楽しむのはいいと思います。でも、今まで死ぬ程努力して積み重ねてきたイーテリオ様らしい魔法を手放してしまっても、辛くないんですか?大量の詠唱を素早く正確にするのって練習休んだら取り戻すの大変なんじゃないですか?
今、イーテリオ様はご家族の前で心から笑ってますか?
今、イーテリオ様は幼い頃のイーテリオ様に胸を張れますか?
逃げてはならないとは申しません。張り詰め過ぎては出来るはずのことも出来なくなりますから。
でも、逃げてばかりでは自分が嫌いになりませんか?」
イーテリオ様は何も言わなかった。
「失礼致します」
私は丁寧にカーテシーをすると、踵を返した。
エリサもあわててついてきた。
「ええっと、詠唱ってまるで歌みたいなのよ。だから音痴の人は壊滅的に魔法が下手ね、魔力が高くても。イーテリオ様は難解な詠唱をすらすら唱えるタイプ。ミレイは全てフォルテッシモな感じ。ベースの詠唱は同じでも、人によってどこか違うのは歌と一緒ね。上手い人はアレンジを加えたりできるわ」
エリサが早口で補足してくれる。
なるほど。それは無詠唱とかされたら意味わからんよね。
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私、オリジナルミレイの口調知らないから、イーテリオ様の真似が似てるのかどうか分からないんだよね。エリサ、途中で咳払いしたフリして笑いを誤魔化してたけど。
「ああ、だからここ最近、イーテリオ様の詠唱も魔法も精彩を欠いていたのね。滑舌良くすごい速さで詠唱するのが得意な方だったのに…。間延びした詠唱になったと思ったら、ミレイの影響か」
と小声で教えてくれた。
んー、ラッパーが童謡歌い出した感じかしら。それとも技巧派のピアニストが、ウクレレに目覚めた感じ??
オリジナルミレイの言ってることは間違いではないとは思う。イーテリオ様の心を救ったのも事実だろう。ただ、なんというか、
「断捨離ハイみたいに見える…」
「「?」」
2人がキョトンとする。
「ミレイが言うようにイーテリオ様が辛くないことも大事だと思いますけど…いま本当に辛くないですか?」
「ああ。辛くない」
「弟さんへの罪悪感も、家への責任感も、最も優秀な魔法師になるためのの努力も、すべて吹っ切ったつもりになって、ミレイみたいにのびのびと唱えてみせて、辛くないですか?
私の無詠唱をみて、弟さんが魔法を使えるかもしれないって思ったんですよね。まだ心に引っかかってるんですよね」
眼鏡の奥で髪とお揃いの色の瞳が揺れた。
「魔法を楽しむのはいいと思います。でも、今まで死ぬ程努力して積み重ねてきたイーテリオ様らしい魔法を手放してしまっても、辛くないんですか?大量の詠唱を素早く正確にするのって練習休んだら取り戻すの大変なんじゃないですか?
今、イーテリオ様はご家族の前で心から笑ってますか?
今、イーテリオ様は幼い頃のイーテリオ様に胸を張れますか?
逃げてはならないとは申しません。張り詰め過ぎては出来るはずのことも出来なくなりますから。
でも、逃げてばかりでは自分が嫌いになりませんか?」
イーテリオ様は何も言わなかった。
「失礼致します」
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エリサもあわててついてきた。
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