平成版!?秋葉原工作室物語

ぎすけ

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第一話「2023年の間違い探し」

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秋葉原に秋葉原工作室という場所がある。

場所なのだが、その店長(室長ではないのか?)は「スペース」と言っている。
彼曰く、秋葉原工作室は、工作スペースである。しかも日本一お客が来る「スペース」なのだそうだ。
諸説があるがプラモデルを作る場所だ。

そんな話を2020年から2021年のあたりにさんざん聞かされた。

2023年になり、とくに東京にいつもと変わらない夏がおとづれた頃、僕は店長と向かい合っていた。

「まちがいさがしの間違いの方に生まれてきたような気でいたけど、まちがいさがしの正解の方じゃきっと出会えなかったと思う」これ知ってますか?

突然「まちがいさがし」の歌詞だ、店長の目は少し潤んでいる。

「これすごく好きな歌なんですよ、決して大袈裟ではなく、この10年はこの曲しか聴いてないと言っても過言じゃないですからね」と鼻息荒く続けると、「いやいや、店長!2019年の曲だから!」と常連客のツッコミがあって、その場は超~和やかになった。

しかし、ほっとする間も無く店長の話は、かまわず続く「もし僕の人生の間違い探しをお願いします、と言ったらどう思います?」

なんだ、それは...

「僕の『秋葉原工作室物語』は2023年にアニメになる予定なんですよ、でも、なってない、意味わかりますか?」

「つまり"まちがい”の方だと?」

「そうです! 僕はこの日本一、いや世界一繁盛している工作スペースをやりながら、小説も大ヒットしているはずなんです」「で、一生懸命、考えたんですが25年くらい前に戻って、そのころの僕がこのことに気づく方法はないかと思ってたんですよ、ずっと」

「なるほど、1998年ですね。歌舞伎町時代?」

店長は若かりし頃、歌舞伎町のカラオケ店で働いていた。同じころ、偶然にもぼくは毎晩のように歌舞伎町に出かけ、リキッドルーム、CODEなどクラブ、あと金もないのにオネーちゃんのいる店も通っていた。

そんな共通点が二人にはある。

「そうですそうです。そこでお願いなんですけど、あの頃の自分に会ってきてくれないですか?ぎすけさんなら土地勘もあるし」

「ちょっと言っている意味が...っていうかタイムリープ??」

と言ったか言わないかの間に、僕は暗闇に包まれて、その奥にある闇から伸びてきたサイコガンダムの手につまみ上げられた。
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